セレンディピティ ダイアリー

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フェルメール展

2018年10月15日 | アート

奈良旅行記はしばしお休みします。

上野の森美術館で開催中の「フェルメール展」を見に行きました。東京は2019年2月3日まで、その後2月16日から大阪に巡回します。

バロック期を代表するオランダの画家フェルメール。17世紀に活躍し、その後忘れ去られた不遇な画家ですが、19世紀になってから作品が再び脚光を浴びるようになりました。寡作で知られ、現存すると考えられているのは35作品です。その希少性もあって日本でもかなり人気の高い画家のひとりです。

今回は35作品中9作品が東京で公開(大阪公開も含めると10作品が来日)という、過去最大規模のフェルメール展です。(途中で作品の入れ替えがありますので、詳細はご確認ください) また本展では、フェルメールと同時代に活躍したオランダ人画家たちの作品約40点も合わせて展示されています。

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チケットは混雑緩和のため日時指定制となっていたので、前日にチケットぴあのサイトで購入しておきました。9時半からの回で10時頃に訪れ、待つことなく入場できましたが、会場内はそれなりに混んでいました。時間帯やタイミングでは日時指定でもかなり待つことがあるようです。各回の後半の時間が比較的すいているということです。

またチケットには音声ガイドと小冊子がついていました。音声ガイドはふだんはめったに利用しませんが、石原さとみさんの声は落ち着いていて聞きやすかったです。いつもは作品リストにメモをとりながら鑑賞していますが、小冊子がついているのでその必要もなく、作品を鑑賞することに集中できました。

 

ハブリエル・メツ―「手紙を読む女」 1664-1666年頃

まずは17世紀オランダ人画家の作品から。この作品はフェルメールから影響を受けたと考えられていて、構図や柔らかい色調、女性が着ている黄色い上着までそっくりです。同じメツ―の「手紙を書く男」と対になっていて、物語が感じられる作品でした。メイドが緑の布をめくって見ている航海の絵は、前途多難な愛を暗示しているそうです。

エマニュエル・デ・ウィッテ「ゴシック様式のプロテスタントの教会」 1790-1685年頃

実在する教会ではなく、異なる建造物の要素を組み合わせて描かれた、想像上の教会だそうです。音の反響が聞こえてくるような大きく荘厳な空間に引き込まれました。当時のオランダでは死者を教会に埋葬する風習があったそうで、手前にそれを示す墓穴が描かれています。

ヤン・ウェーニクス「野ウサギと狩りの獲物」 1697年

17世紀のオランダでは狩猟が貴族の特権で、獲物を描いた静物画は富を誇るものとして人気があったそうです。中央の野ウサギは頭から血を流していますが、毛並みがふわっふわでつややかで、まるで生きているようでした。

ヨハネス・フェルメール「マルタとマリアの家のキリスト」 1654-1655年

そしていよいよフェルメールの展示室へ...。本作はフェルメール唯一の聖書を題材にした作品で、かつ最も大きな作品だそうです。”ルカによる福音書”からの有名な一場面ですが、私は平野啓一郎さんの小説「マチネの終わりに」にあるやりとりを思い出しました。3人、特にキリストのお顔立ちが今どきの若者風?に見えて驚きました。

ヨハネス・フェルメール「手紙を書く婦人と召使い」 1670-1671年

この時代、恋人同士で手紙をやりとりするのが流行っていたそうで、手紙を読んだり書いたりしている作品が数多くありました。^^ 窓から入る柔らかい光、幸せな時間が満ちてくる美しい情景でした。

ヨハネス・フェルメール「ワイングラス」 1661-1662年

女性が口にあてているワイングラスはほとんど空で、男性が継ぎ足そうと待ち構えています。窓ガラスには馬の手綱を握る女性の姿が絵が描かれていて、女性に節制を促すメッセージがこめられているとか...。フェルメールといえばブルーの美しさで知られますが、私は今回、赤の美しさに魅せられました。

ヨハネス・フェルメール「手紙を書く女」 1665年頃

黄色い上着は本展で展示されている「真珠の首飾りの女」「リュートを調弦する女」にも描かれています。同じモデルさんでしょうか。前述のハブリエル・メツ―の「手書きを読む女」にも同じような黄色い上着が描かれています。

ヨハネス・フェルメール「牛乳を注ぐ女」 1658-1660年頃

フィナーレを飾るのは、ポスターにも描かれているこの作品です。ナビゲーターの石原さとみさんが、現代のSNSのような...とおっしゃていて、一瞬、え?と思いましたが、今まさに牛乳を注いでいる瞬間を切り取っているところや、小物の配置、光の捉え方など、なるほどインスタっぽい?うまいことを言うなーと、妙に納得しました。^^

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シェフェスタ 奈良フードフェスティバル2018 @奈良公園

2018年10月13日 | +奈良

ゆっくりペースで恐縮ですが、奈良旅行記の続きです。

滞在中、奈良公園で C'festa(シェフェスタ) 奈良フードフェスティバル2018 というイベントが開催されていたので、のぞいてみました。

奈良の食材とシェフの交流を目的として開催されるグルメイベントで、今年10回目となるそうです。人気シェフたちが日替わりで提供するお料理や、地域の人気店のお料理、地元のパンや食材、野菜が並ぶマルシェなどがあり、テーブルが用意されていてその場で楽しめます。私たちもここでお昼をいただくことにしました。

スパークリングワインとともに、ピッツァ・マルガリータをいただきました。テントにピッツァの窯が据え付けてあり、本格的なピッツァがいただけます。焼きたてもちもち香ばしくて、とてもおいしかったです。

この日の夜に合流した息子も行きたいというので、翌日もまたイベントに足を運びました。やはり平日より週末の方がお客さんが多く、盛り上がっていました。

私はモヒートと、牛肉のタコスをいただきました。赤味噌を使ったソースで、ナッツが散らしてあるのが新鮮。おいしかったです♪

手打ちパスタのボロネーゼ。

ラーメン焼きそば??

人気のお店のテントが並んでいます。地元の人から観光客まで大賑わいでした。

こちらはフードトラックのコーナー。メキシカンやエスニックフードなどがありました。

マルシェでは地元のグロッサリーショップや、ベーカリー、スイーツのお店などが出店していました。野菜のコーナーもありました。

鹿も遊びに来ていました。^^

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イコライザー2

2018年10月11日 | 映画

お昼を食べたあとに、映画を見に行きました。

イコライザー2 (The Equalizer 2)

メンバーになっているので、映画はなるべくTOHOシネマズで見るようにしていますが、なぜか今回、TOHOのシアターはどこも4DかIMAXでの上映でした。いや、2Dで十分でしょうと、渋谷のシネクイントで見ることにしました。

本作は、デンゼル・ワシントン主演のクライムアクション「イコライザー」の続編です。前作がおもしろかったので楽しみにしていましたが、家族で見るには少々ダークだったかも? でも安心して見れる勧善懲悪もので、デンゼルはありえないほど強いし^^ スリリングな場面もあって、結果的にはとっても楽しめました。

前作では、デンゼル演じるマッコールがホームセンターで働く寡黙な店員ながら、実は元CIAの凄腕の殺し屋という設定で、武器ではなく、とっさにその辺にあるものをうまく使って敵をやっつけるのが、見どころのひとつになっていました。^^

本作でもそれは継承していて、冒頭の大陸横断鉄道の場面から、自己紹介代わりにマッコール節がさく裂。子どもを取られたシングルマザーのために、マッコールが元夫とその一味をあっという間にやっつけて、見ていてすっきり。たちまち映画の世界に引き込まれました。ちなみにマッコール、本作での表の顔はタクシー運転手となっています。^^

ところが、マッコールのCIA時代の上官で、彼の事情を唯一知っている理解者であるスーザン(メリッサ・レオ)が、出張先のブリュッセルで何者かに殺害されてしまいます。強盗事件として処理されたものの、何かが引っかかったマッコールは独自に捜査を開始。やがて真相へとたどり着く...というストーリーです。

前作に出ていたクロエちゃんは今回は登場していませんが、代わりにマッコールと同じアパートに住み、悪の道に引きずり込まれそうになっている少年マイルズ(アシュトン・サンダーズ)が登場。マイルズは画家を目指していて、マッコールは厳しくも温かく、父親のように彼を励まします。

マイルズが本棚の中に隠れる場面は、本作の中で一番ドキドキしました。敵がいなくなったとたんに本棚から出ようとしたので、思わずダメだよ!と心の中で叫んだら、案の定つかまってしまいました。>< そういえばマッコールは読書家という設定で、本作でも彼が読んでいる本にさりげないメッセージが込められていたような気がします。

クライマックスの舞台は、マッコールがかつて住んでいたという海辺の町。ハリケーンが近づいて住民たちが避難し、誰ひとりいない町は、さながら荒野といったところでしょうか。マッコールがスーザンを殺された復讐を胸に抱いて、敵をひとりずつ追い詰めていく姿は、まるで西部劇のようでした。

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THE GREAT BURGER STAND @渋谷ストリーム

2018年10月09日 | グルメ

連休に息子が帰省していたので、先月オープンした複合施設「渋谷ストリーム」にお昼を食べに行きました。

再開発中の渋谷駅には、今まで1~15の出口がありましたが、新しく渋谷ストリームに直結する16という出口ができていました。地下道を通ってエスカレーターを上がると、目の前に新しいビルが現れます。ユニークな壁面デザインは、工事中からなんとなく目立っていましたね。

ビルの前を流れる渋谷川。渋谷ストリームは写真の向かって右側です。高層ビルに挟まれて、空も川も窮屈そうに見えます。渋谷ストリームという名まえは、渋谷川の流れと、新しい次代の流れを生み出したいというコンセプトから名づけられたそうです。

1~3階がレストラン街で、上階はホテルとオフィスが入っています。1階の入口にハンバーガー屋さんがあって、ほぼ決まりましたが^^ 一応1~3階をひと通り回ってみて、やっぱり最初に見た THE GREAT BURGER STAND (ザ グレートバーガー スタンド)に入ることにしました。

私は左の自家製レモンソーダをいただきました。粗搾りのレモンがすっきりとしておいしい。右はアーノルドパーマーといって、レモネードとアイスティを半々に混ぜたドリンクです。プロゴルファーのアーノルド・パーマ―が好きだったドリンクだそうです。ストローは時流がら紙製でした。^^

とろりとクリーミィな、ニューイングランドクラムチャウダー。こちらのお店のは殻付きでした。アメリカ製のナビスコのクラッカーがいい感じ。

ボリュームたっぷり。アボカドモッツァレラバーガーに、さらにベーコンをトッピングして。

ヒッコリーバーガー。ヒッコリーチップを使った燻製バーガーらしい。

私はミニサイズのスライダーにしましたが、こちらもヒッコリーチップの香りがしました。スライダーのパティは和牛を使っていて、ミディアムレアな焼き加減がパーフェクトでした。かりっとしたフレンチフライもおいしかったです。

インテリアはサウスウェスタン風。テラスへとつながっていて、開放的な空間でした。

3階に広場のような空間がありました。なんだか見覚えがある...と思ったら、なんと東急東横線の旧渋谷駅のホームではないですか。床には線路が埋め込まれ、かまぼこ型の屋根の骨組みが懐かしい。

(ネット上からお借りしました)

ちなみに旧駅舎はこんな感じでした。新しいビルですが、ちょっぴりノスタルジーも感じてぐっときました。

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ブレス しあわせの呼吸

2018年10月08日 | 映画

奈良旅行記はしばしお休みします。

ポリオに感染して首から下が麻痺して余命宣告を受けながら、家族や友人に囲まれて幸せな人生を送った男性の、実話に基づくヒューマンドラマ。「猿の惑星」シリーズの名優アンディ・サーキスの監督デビュー作で、アンドリュー・ガーフィールドが主演しています。

ブレス しあわせの呼吸 (Breathe)

1950年代、結婚してケニアのナイロビで新生活をはじめたロビン(アンドリュー・ガーフィールド)とダイアナ(クレア・フォイ)。新しい命も授かり、幸せのただ中にいた2人でしたが、やがてロビンはポリオに感染し、首から下が麻痺し、人工呼吸器がなければ呼吸ができない体になってしまいます。

2人はイギリスに帰国し、ロビンは病院で絶望の日々を送っていましたが、ダイアナはロビンのために自宅で看病することを決意。やがてロビンは友人テディの助けを借りて、どこへでも移動できる呼吸器つきの車椅子を開発します...。

モーションキャプチャーの第一人者であるアンディ・サーキスの監督デビュー作。私にとってはサーキス=猿のシーザーで、彼の感情豊かな演技を思い出すだけで涙ぐんでしまうほどなので、初監督作が重病患者の人権をテーマにしたヒューマンドラマというのに、深く納得してしまいました。

本作は、製作を務めたジョナサン・カベンディッシュの両親の実話がもとになっていて、サーキスが監督することを申し出たのだそうです。サーキス自身、母が障害児を教える教師、父が医師、そして姉が多発性硬化症という環境で育ち、病気や障害をいつも身近に感じていたそうで、この作品を手掛けることに運命を感じたのかもしれませんね。

本作のテーマは、ひとことでいえばクオリティ・オブ・ライフ。病院の中でただ死を待つだけの毎日がどれほど辛いものか、想像に難くありませんが、ロビンは重度の障害を抱えて余命宣告を受けながら、子供の成長を見守り、家族や友人に囲まれ、旅行に出かけ、人生を謳歌するのです。

もちろん、介護する家族の精神的・肉体的・経済的負担など、たいへんなこともたくさんあったでしょうが、この映画ではそうした苦労は比較的マイルドに描かれています。そして実際、苦労を上回る大きな喜びがあったから、彼らは乗り越えることができたのだと理解しました。

病気だからしかたがないとあきらめることは、今の時代でもたくさんあると思いますが、あの時代、いい意味でわがままに、貪欲に人生を切り開いていったのはすごいことだと感動しました。彼のような先駆者がいれば、同じような病気の人たちに希望を与えることができるでしょうし、まわりの意識も変えていくことができるでしょう。

ロビンがスポンサーを見つけて、同じ病気の人たちにロビンと同じ呼吸器付きの車椅子を何台も用意したことは、彼らに病院の外に飛び出す喜びを与えました。

一方、ロビンが招待を受けてドイツの ”最新鋭の” 病院を視察に訪れた時は衝撃でした。そこにいたのは清潔な環境の中、身動きができず、ただ生かされているだけの人たち。でも当時はこれが ”すごい医療” だったのでしょうね...。

映画は明るく前向きでユーモアがあって、比較的ライトなタッチで描かれていますが、生きることの喜び、生きることの意味について考えさせられる作品でした。

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元興寺と、柿のタルト

2018年10月05日 | +奈良

館内ツアーのあと、ならまちにある元興寺まで散策に行きました。

こちらは、奈良ホテルに隣接する名勝 旧大乗院庭園です。1087年に創建した大乗院(興福寺の門跡寺院)の庭園で、荒れ果てていたのを復原し、昨年一般公開されたそうです。通りがかりに外から見学しました。一時は奈良ホテルのパターゴルフ場だったこともあるそうですが^^; 緩やかな起伏のある地形を見ると、なるほど...とうなずけました。

そしてこちらは元興寺。写真は本堂(国宝)です。がんごうじ??読み方さえ知らなかったお寺ですが、奈良公園にある東大寺・興福寺・春日大社と同じく、こちらも世界遺産に登録されています。593年、蘇我馬子によって飛鳥に創建され、平城京遷都に伴い、この地に移転してきたという由緒ある寺院です。

奈良時代には、今のならまちに広がる大寺院でしたが、その後衰退し、今は本堂、禅室(国宝)、東門(重要文化財)だけが残っています。この日はちょうど「大元興寺展」が開催されていて、貴重な所蔵品も見ることができました。

2500もの石塔、石仏類を田んぼのように並べた浮図田(ふとでん)。今の季節は、萩や彼岸花、リンドウが趣を添えていて、ひなびた佇まいに心安らぎました。

右手手前が本堂。その奥の禅室は、僧が生活していた場所だそうです。禅室はふだんは公開されていませんが、10月13日~11月11日に屋根裏に上って建築構造を見学する「屋根裏探検」(要予約)が開催されるそうです。おもしろそうですね。^^

浮図田の奥が少し小高いビュースポットとなっていて、本堂と禅室の屋根がよく見えました。赤い瓦と黒い瓦が入り交っているのが見えるでしょうか。これは日本最古の飛鳥時代の瓦だそうです。

境内には、萩の寺とよびたくなるほど、紅白の萩が咲き乱れ、雨粒にぬれてきれいでした。

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このあとホテルにもどって、ティーラウンジでお茶にしました。

私は季節限定の奈良県産あんぽ柿のタルトと、奈良県産ほうじ茶ラテのセットをいただきました。濃厚な焼菓子好きの私にはとても魅力的なお味でした。

アップルパイとコーヒーのセット。りんごがぎっしり入っていて、こちらも魅力的。

窓から見る緑と荒池の風景がとても美しかったです。

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奈良ホテル 茶がゆの朝食と、館内ツアー

2018年10月03日 | +奈良

奈良ホテルの続きです。翌朝、朝食に向かう途中、窓からお庭に鹿のファミリーがやってくるのが見えて、思わず顔がほころびました。

朝食の場所は、夕食と同じ”三笠”でした。洋食・和食・茶がゆの3種類があり、私はせっかくなのでここでしか食べられない茶がゆをいただくことにしました。茶がゆは奈良に伝わる伝統的な家庭料理で、各家庭でそれぞれ作り方があるようですが、こちらでは緑茶で炊き上げているということです。

ほどよく柔らかく、おなかに優しく収まる茶がゆは、しみじみとおいしかったです。焼魚、玉子焼き、胡麻豆腐、炊合せ、おひたし、お味噌汁、そして香の物には奈良名物の奈良漬けがついていました。

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食事のあとは、朝9時からの館内ツアーに参加しました。

ツアーは、ロビー”桜の間”からスタートです。ホテルの辻さんという方が案内してくださいましたが、実際に体験されたエピソードを交えたお話は、リアリティと臨場感があってとてもおもしろかったです。鮮やかな話術の中にもホテルに対する誇りと愛情が伝わってきて、心に響きました。

写真右の大時計は、1990年に今上天皇の即位をお祝いして記念に設置したものだそうです。15分ごとに美しい音を奏でますが、両陛下も左に見える2つの椅子に座られて、お聞きになられたそうです。

桜の間にはこのほか、アインシュタイン博士が1922年に演奏したピアノがありました。戦後GHQに接収される前に運び出したまま行方不明になっていましたが、1992年に発見。その後2008年に博士がピアノを弾く写真の原版が見つかって同一のものと確認が取れ、この場所に戻ることができたという、数奇な運命をたどったピアノです。

このほか館内では、昭和初期に所有していたオールドノリタケの貴賓用食器、大倉陶園の特別食器、カガミクリスタルの特別グラスを見ることができました。(写真は大倉陶園の食器)

2013年に館内の倉庫で見つかったという銀食器。鉄道院・鉄道省がホテルを直営していた時代の貴重なカトラリーです。

同じく2013年に倉庫から見つかった謎の食器類。調べていくうちに、ナガサキホテル(1898-1908)で使われた食器と判明したそうです。ナガサキホテルはジョサイア・コンドルによる建築で、当時東洋一と謳われました。おそらくコンドル氏と辰野金吾氏の師弟関係、両ホテルの頭文字(NH)が同じことから、ナガサキホテルの廃業時に継承したと考えられているそうです。

本館入口正面にある赤絨毯の大階段です。絶好の撮影スポットで雑誌の撮影にもよく使われるそうです。撮影のコツも教えていただきました。^^ 館内には歴史を感じる調度品や、上村松園の「花嫁」をはじめ日本画の巨匠による美術品も多く、まさに”宿泊する博物館”とよぶのにふさわしい場所でした。

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奈良ホテルのメインダイニング 三笠

2018年10月01日 | +奈良

奈良旅行記の続きです。最初の日は奈良ホテルに宿泊しました。

半日歩いてホテルにもどると、暮れなずむ青色の空気の中、ぽっと灯りがともっていました。奈良ホテルは1909(明治42)年に開業した老舗ホテル。近畿において国賓・皇族が宿泊する”西の迎賓館”の役割を担ってきました。過去にはヘレン・ケラーやオードリー・ヘプバーンなど多くの著名人が宿泊しています。

設計は辰野金吾氏。ジョサイア・コンドルに師事し、東京駅や日本銀行本店など数々の西洋建築を手掛けてきた辰野氏ですが、奈良ホテルについては、地元の人たちに愛されるホテルでありたいと、周りの景観に配慮した寺院風の造りにしたそうです。内装は洋室が中心で、桃山風とドイツ風を取り入れた和洋折衷のスタイルとなっています。

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夕食は、部屋でくつろいでから街に出るのがめんどうだったので、ホテルのメインダイニングルーム「三笠」を予約しておき、フランス料理のコースをいただきました。

スパークリングワインで軽くのどを潤してから、まずはサーモンのオードブルをいただきました。豆苗がいいアクセントになっています。

本日のスープは2種類から。こちらはコンソメスープ。おなかに優しくしみわたる滋味深いお味でした。

私はコーンポタージュをいただきました。まろやかでほのかに甘く、ほっとするお味でした。

メインディッシュは3種類から選びます。こちらは、鴨フォワグラを包んだオマール海老のポワレ 甲殻類入りムースを巻いた太刀魚 ブールブランソースとアメリケーヌソース。それぞれ2つの素材を組み合わせた複雑な味わい、濃厚で赤ワインにもよく合いました。

私はお肉をいただきました。仔牛フィレ肉のソテー タルトに詰めた鴨フォワグラとリ・ド・ポー添え 鴨フォアグラムース入りマデールソース。リ・ド・ボーは胸腺とおっしゃっていましたが、仔牛の時にある内臓のひとつだそうです。いろいろなお味が楽しめて、全体のバランスがよかったです。

デザートのケーキは、チョコ・マロン・バニラを重ねたもの。チョコレートのまったりとした風味が楽しめました。きれいにカットされたフルーツもおいしかったです。コーヒーをいただいたら、すっかりリラックスしました。最近のヘルシーなフレンチも好きですが、久しぶりに濃厚な王道のフランス料理を堪能しました。

若干遅めのスタートだったので、私たちが食事が終わる頃にはほとんど皆さんお部屋にもどられたようです。窓からはほのかにライトアップした五重塔が見え、奈良にいることを実感しました。

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バッド・ジーニアス 危険な天才たち

2018年09月30日 | 映画

奈良旅行記は一回お休みします。

中国で実際に起こった集団不正入試事件をモチーフに、高校生たちによる大胆かつ大掛かりなカンニング犯罪を描いたタイ映画。世界16の国と地域で大ヒットを記録したクライムエンターテイメントです。

バッド・ジーニアス 危険な天才たち (Chalard Games Goeng / Bad Genius)

天才女子高生のリンは、ずば抜けた頭脳を見込まれて特待奨学生として進学校に編入。やがて仲良くなったグレースをテストで助けたことが、グレースの恋人のパットに知れ、パットはリンに、試験中にクラスメートたちに正答を教えて報酬を得る、カンニングビジネスを持ちかけます。

はたしてそれは大当たりし、リンはたくさんの収入を得ます。そうした中、パットはさらに、アメリカの大学に留学するために必要な世界統一試験で高得点を取るために、大掛かりな不正を行うことをリンに持ちかけます...。

Twitterでおもしろいとじわじわ話題になっていた本作、気になって見に行ってきました。初めて見るタイ映画、まずは冒頭からスタイリッシュなカメラワークに引き込まれました。物語はぽんぽんとテンポよく進み、スリリングで飽きさせない。タイの学歴社会や格差問題を織り込みつつ、青春映画の要素もあって、すごくおもしろかったです。

感心したのは、リンが考えるさまざまなカンニングの手口。ピアノの指使いやバーコードを暗号に使い、世界統一試験では、タイとの時差を利用してシドニーで受験し、答えをスマホでタイに送ります。

答えを教えてもらう生徒たちは、そのエネルギーを勉強に使った方がいいのでは?と思いますが...。^^; ズルして受かったところで、あとで自分が困るだけだと思いますが、とにかく合格さえしちゃえば勝ちということなのでしょうね。

それにしてもリンほど優秀な生徒が、どうしてパットたちのために人生を棒に振る危険を冒して犯罪に手を染めたのか?それが不思議でしかたがなかったです。最初にうっかり話に乗ったがために、引き際を見誤ってしまったのでしょうか。

リンは自分を追い込み、ミッションを完遂することにカタルシスを感じるようになってしまったのかな? シドニーでの彼女を見ていると、どうしてそこまでするの?と見ていて痛々しく切なくなりました。

それから何と言っても気の毒なのは、自分の意志に背いてこの不正に巻き込まれてしまった、苦学生でリンと同じく優秀なバンクです。自分の力で未来を切り開いていけるはずのリンとバンクが、お金持ちのボンクラたちのために犯罪に手を染め、可能性を閉ざされてしまうのはなんとも残念です。

...なんてまじめに書きましたが、映画は終始スリリングでコミカルで、気楽に楽しめる作品になっていました。^^ それにしても今どきのタイのエリートたちが目指すのは、アメリカやシンガポールの大学なんだな...。日本の内向きがちょっぴり気になった作品でもありました。

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奈良女子大学記念館と、ならまち散策

2018年09月28日 | +奈良

9月2日の日経日曜版に奈良女子大学記念館のことが紹介されていて、洋館好きの私は気になっていました。大学HPを見ると、旅行初日がちょうど公開日にあたっていたので、午後2時半からのガイドツアーを予約しました。

正門から続くアプローチの向うに、淡いグリーンが印象的な美しい洋館が見えます。奈良女子高等師範学校(現奈良女子大学)が明治41(1908)年に創立した時から本館として使用していた建物で、現在は重要文化財に指定され、記念館として保存されています。建築は木の柱を装飾的に見せるハーフティンバー様式が取り入れられています。

1階は展示室となっていて、初期の頃の貴重な資料を見ることができました。写真は化学実験の様子。女学校としてはめずらしく理系の学部がありました。生徒たちは白衣ではなく割烹着を着ています。着物は質素に、髪型は”女高師まげ”と決められていました。男性教官はフロックコートや裁判官の法衣のような服を着ていたそうです。

別の展示室には、生物学の授業で使った貴重な動物標本がありました。学校は全寮制で、生徒たちは団体生活を通して切磋琢磨して助け合い、自学自修の精神から清掃や炊事も自分たちでこなしたそうです。

2階は講堂となっていて、今も大学院の入学・卒業式やコンサートなどに使われているそうです。長椅子も師範学校時代から使っているものです。檀上中央にあるのは奉安所。戦前の学校では、国家祝祭日に御真影を掲げ、校長が教育勅語を奉読しました。御真影と教育勅語は、ふだんは(後述する)奉安殿に保管されていたそうです。

天井中央にある花形装飾はスリットとなっていて、熱気を屋根に逃がす工夫がされています。シャンデリアも壁際の灯りも今では手に入らない貴重な材料と技術で作られているそうです。

前方にはピアノが2台。ひとつはスタインウェイで、もうひとつは”百年ピアノ”。創立当初に購入された山葉(ヤマハ)のピアノです。脚や楽譜台に華やかな装飾が施されていました。鍵盤のキーの数は今の88鍵より若干少ないです。講堂を改修する時に倉庫に保管されたまま忘れ去られていたのを近年になって発見。修復されてこの場所にもどりました。

こちらは正門の横にある守衛室です。正門と守衛室も創立時に建てられた明治の建築で、重要文化財となっています。今も現役で使われているのがすてきですね。

守衛室の近くにある奉安殿。戦前、御真影と教育勅語を納めていた建物です。戦後ほとんどの学校で奉安殿が解体される中、研究用のショウジョウバエの飼育に使うとGHQと交渉して奇跡的に残った貴重な歴史遺産です。

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大学近くのすてきな珈琲店 Cafe CROCO さんでゆっくり休憩した後、江戸時代の町家が並ぶ景観地区”ならまち”を散策しました。

こんな感じの趣のある建物が点在し、最近は町家の建物をそのまま生かしたカフェやレストラン、雑貨屋さんなどが増えています。味わいがあってすてきだなーと近づくと、登録有形文化財となっているお家もそこここにありました。

こちらは豆腐料理のこんどうさん。築180年の建物は登録有形文化財となっています。ならまちのお家の軒先には、どこもお人形の飾りがぶら下がっています。これは「身代わり申」(みがわりさる)といって、江戸時代に広まった庚申信仰に基づく魔除けのお守りだそうです。

レストランやクラフトショップが集まった一画。入り組んだ小路の風景が絵になります。

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