この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

想像を絶する結末が待ち受ける、映画『灼熱の魂』。

2012-02-28 23:38:33 | 新作映画
 ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督・脚本、ルブナ・アザバル主演、『灼熱の魂』、2/26、中洲大洋劇場にて鑑賞。2012年7本目。


 一人の中東系カナダ人女性がこの世を去った。
 彼女の名前はナワル・マルワン。
 彼女は双子の子供ジャンヌとシモンに謎めいた遺言と二人がその存在すら知らなかった父と兄への手紙を残していた。
 ナワルはなぜ子どもたちに父と兄の存在を秘密にしていたのか?
 果たして二人はその手紙を送り届けることが出来るのか?
 ナワルの隠された過去とは?
 そして最後に想像を絶する結末が明かされる…。
 
 まず最初に断っておくと本作は傑作でした。
 想像を絶する結末が待ち受ける、というのはどんでん返し系映画の宣伝における常套句のようなものですが、本作に限っていえばガチもガチ、本当に想像を絶する結末でしたよ。
 気軽に観るような作品ではありませんが(公式サイトには「魂が震える究極のエンターテイメント」とあるけれど、決してエンターテイメント=娯楽とは言えないと思います)、それでも近くに上映している映画館があれば是非観に行って欲しいです。
 それも出来れば女性に。
 この映画はある意味究極的な母性を問われる作品なので…。

 などとお勧めしといてなんですが、本作は上映館数が恐ろしく少ないんですよねぇ。
 福岡ではわずかに一館だけですよ(中洲大洋劇場のみ)。
 東京や大阪でも一館だけだし、地元の映画館で本作が上映されてるって方はその僥倖に感謝しなくちゃいけないかもしれませんね(ちなみに長崎ではあるが、埼玉ではない。笑。)。

 ただ、傑作だ、とは思いましたが、完璧だ、とは思いませんでした。
 作劇上、いくつか疑問点は残りました。
 ネタバレではないですが、ネタバレ気味にその疑問点を書いていきたいと思います。
 近々本作を観に行くつもりの方はこの先読まない方がいいかもしれません。

 ナワルは実はイスラム系の女性闘士であり、十五年もの間、刑務所に収容され、その間、ありとあらゆる拷問を受けた、という過去を持ちます。
 そういった過去を出来れば子供たちに隠したい、というナワルの気持ちはわからないでもないです。
 しかし、、、ありとあらゆる拷問を受けていた、っていうんですよ?
 であれば、何らかの後遺症が残っていて然るべきじゃないですか。
 長く一緒に暮らしている子供たちがそのことに気づかないということはないんじゃないか、って思いましたね(それとも不屈の意思でナワルは隠し通していた?)。

 それから、ナワルに究極の辱めを与える拷問人が、どう見ても実年齢より老けている、、、ような気がしました。二十歳前後に見えない。

 あとは、ナワルの死、そのものが不自然に思えました。
 すべての真相を知ったナワルが、プールサイドでそのまま息を引き取った、というならわかるんですけどね。
 そうじゃなく、すべての真相を知ったナワルが、遺言と手紙を書き、公証人に話をつけ、そのあと亡くなったとなると、何だか話が合わないような、若干の違和感を覚えてしまいます。

 今挙げたのは、自分がちょっと疑問に思った箇所であり、作品上の致命的な欠陥というわけではありません。
 ただ、そういった疑問点がなければ、ただの傑作どころか、それこそ神作品になったかもしれないな、と残念に思います。


 お気に入り度は★★★★、お薦め度は★★★★(★は五つで満点、☆は★の半分)です。
コメント (2)
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