センスプロデュース研究所!

ヒトの五感と脳の関係、ヒトの五感の重要性の提唱、研究を行っている者です。

世界がキューバ医療を手本にするわけ

2008-04-29 00:01:50 | 感覚
マイケル・ムーア監督の最新作「シッコ」のキャッチコピーは「テロより怖い、医療問題」が8月25日から公開されました。前回紹介した「良医を育てる」という米国の医療現場も、市場原理の大波にもまれて、多くの問題を抱えていることは皆さんもご存知の通りです。そのような中、吉田太郎著の「世界がキューバ医療を手本にするわけ」(築地書館)という衝撃的な本と出会いました。
日本と政治・社会体制すべてが異なるキューバの医療制度が参考になるのか、今度は米国に続いてキューバの話か、というご批判は覚悟の上で、紹介したいと思います。
同書の帯には;
マイケル・ムーアも注目!
乳幼児死亡率は米国以下、平均寿命は先進国並み。
がん治療から心臓移植まで医療費はタダ。
大都市の下町から過疎地まで、全国土を網羅する予防医療。
世界のどこにもないワクチンを作りだす高度先端技術。
世界保健機構WHOも太鼓判をおす医療大国キューバが浮き彫りにする、
曲がり角に立つ日本の医療制度の方向性。と書かれています。
さらに、あとがきには「イギリスの放送メディアであるBBCは無論のこと、当の米国ですら、キューバ情報を発信している。にもかかわらず、日本では米国に遠慮してなのかマスメディアでもほとんど取り上げられることがない。朝日新聞のハバナ支局ができたのも、2007年の5月16日とつい先日のことだ。国際化が叫ばれながら、これほど日本は情報が遮断されている。キューバの医療革命は、風化した過去の遺物どころか、今まさに進行中なのだ。(中略)先進諸国が医療崩壊に悶々とする中、なぜこんなことが貧しいカリブの小国で可能なのか。思わず口に出したくなる素朴な疑問を自分なりに納得させるには、まずこの国の福祉医療制度を大づかみに俯瞰してみる必要があった」とありました。
以下に、特に印象に残った部分を紹介します。
1)世界保健機構の事務局長が太鼓判を押した医療大国,同書の初めに「唐突だが、まずは下の図をご覧いただきたい。全世界174カ国の福祉医療の現状を一枚のチャートで指し示すとこうなる。一人あたりの所得と乳児死亡率が、みごとに相関している。金がなければ、子どもたちの命は救えないというわけだ。だが、ただ一国、金銭的な豊かさで医療水準が決まるという悲しい宿命から逸脱している国がある。人の命は金銭よりも価値があり優しさと思いやりさえあれば命は救える。キューバの掲げる医療哲学はまことに過激だ。だが、どうして、金がなくても人々の健康を守れるのだろうか。世界が関心を寄せるその秘密を探る旅へ出かけるとしよう」とありました。
 確かにキューバ医療が、経費がかなり低いレベルなのに効率性は1人当たり経費が世界最高の米国に肩を並べる効果を上げていることは、非常に興味深いことです。(表1)表1 世界保健機構の事務局長が太鼓判を押した医療大国 出典:WHO,The world health report-health systems:inproving performanse, 2000
国名 平等性 効率性 1人当たり経費
医療水準 総合評価 医療水準 総合評価
日本 1 1 9 10 13
米国 24 15 72 37 1
英国 14 9 24 18 26
キューバ 33 40 40 40 118

2)なぜキューバでは医療費が安いのか
「キューバでは病気を治すことがビジネスにはなっていない。医師はビジネスではなく職業です」
3)なぜソ連崩壊後に福祉医療制度を維持できたのか
カストロは2000年4月14日に開催された部ループ77のサミットで「40年もの経済封鎖にもかかわらず、キューバが、教育、医療、文化、科学、スポーツ、その他の成功をおさめていることには、誰しも懸念を抱かないであろう。それは国際通貨基金(IMF)のメンバーではないという特権のおかげなのだ」と発言し、IMFが各国の公共政策にいかに介入しているかを痛烈に皮肉っています。南米各国では、1980~90年代にかけて、様々な公共事業サービスや福祉医療費を削減することが、IMFや世界銀行から経済融資を受ける条件でした。この自由主義政策によって、各国の公共福祉医療制度は大きく後退したのです。
4)キューバでも発生した市場原理導入後の国民の倫理の腐敗に対して
「教育こそがすべてだ。教育は価値観という種を蒔き、それが倫理観を育み、人の生きざまを成長させる。教育は魂の良きものを求め、その陶治こそが、利己主義に向かう本能や、なくさなければならない態度と戦う力となる」―カストロの過去数年の演説のほぼ半分が、教育と関連した話題であるほど、カストロ革命政権首脳部は教育に力を入れたのです。
5)失業中の若者たちの再チャレンジプログラム
ソーシャル・ワーカーは、学校を出ても、働きも勉強もせず、社会に不満を抱いて軽犯罪に走る「失われた若者たち」と呼ばれる青少年も支援しています。刑務所の服役者、とりわけ若い受刑者とも関わり、受刑者10人当たり1人のソーシャル・ワーカーが張り付き、服役後には大学や専門学校に通う機会を確保し、学業を終えた後はスムーズにコミュニティに溶け込めるよう手助けをしている。その背景には、犯罪者個人を責めるのではなく、罪を犯すに至った社会からの疎外への対応が必要だとの考え方があるのです。
6)目指すは芸術や文化、科学が進展した知識社会
教育費は年々増額され、2007年には無料の教育と医療を維持するために、国内総生産(GDP)の22.6%に相当する予算が割り当てられました。この予算額は中南米諸国平均の4倍。加えて、格差を是正するために最低賃金が倍増される一方で、「ニューリッチ階層」である観光レストラン経営者などの大口ユーザーの電気代は、一般庶民の10倍以上も値上げされました。
7)現場の診療所で実践する医学教育改革
ハバナ医科大学の学長は、「2003年にさらに飛躍があります。地区診療所そのものを医科大学にする改革に取り組んでいるのです。以前の医学教育では、1910年のフレクスナー・レポート(前回のブログで紹介)による理論に基づき、2年生までは勉強だけで、臨床でも死体を使っていました。ですから医学生たちが、患者と接するのは3年生からでした。これではまるで、機械を学ぶのに、動いているエンジンを見たことがないようなものです」と語っています。現場の診療所で医学教育を実践しようとしています。
8)ゲバラは革命家だったが、まず何よりも医師だった。
「ただ1人の人間の命は、この地球上で一番豊な人間の全財産よりも100万倍も価値がある。隣人のために尽くす誇りは、高い所得を得るよりもはるかに大切だ。蓄財できるすべての黄金よりも、はるかに決定的でいつまでも続くのは、人民たちの感謝の念なのである」
先進諸国が医療崩壊に悶々とする中、なぜこんなことが貧しいカリブの小国で可能なのか。私たち日本の医療者にとって、この本は一読の価値があることは間違いありません。ぜひ皆様もご覧いただきたいと思います。
先週の私のブログでも紹介したが,マイケル・ムーア監督の最新作「シッコ」の映画の中で,キューバの医療の現状を紹介しているが,世界保健機構の事務局長が太鼓判を押した医療大国にキューバを上げている。
世界保健機構での日本は先進国の中でも,医療水準や総合評価など全てにおいて低い水準なのである。
私達は,日本の医療は水準が高く,優れていると思っていたのではありませんか?
確かに,医師個人の技術や手技能力の高い医師も多くおられますが,アメリカなどの海外で修行や勤務する日本人医師は多いのである。
但し,日本の医療水準となると世界レベルからすると決して高いと言えないのである。
これらが日本の医療の現状であることを皆様にご理解頂けたら幸いです。
五感教育研究所,主席研究員,荒木行彦,


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