旋律はいつもドリン系

高校時代のマンドリンクラブの話です。
若干、ほんとのことをベースのフィクションです。

(31)『棗田先輩も心配そう』byワシ。なのじゃ。

2008年12月25日 00時11分57秒 | 3章-ワシと江本の八福(ハチフク)代理戦争
目次
〈1章-はじまりは、こんなもん〉の最初から
〈2章-D線の切れる音〉の最初から
〈3 章-ワシと江本の八福(ハチフク)代理戦争〉の最初から
〈4章-スターウォーズと夏の日の恋〉の最初から

江本は福田先輩のところに行く前に、ワシの側によって来た。

「どうしようチハル。
八守先輩が福田先輩にチューニングのアシスタントを頼んでるんだ」

「そんな事ワシに言われても、どうしようもないど」

「以前、チューニングで先輩たち、揉めたんだろ。
俺。その時いなかったから知らないけど、かなりヤバかったそうじゃないか。
チハル、頼むよ。福田先輩に八守先輩の言葉を伝えてくれ」

そらきた。そんな伝言、ワシだって嫌じゃ。
先輩たち2人、表面では平静を装っているが、あれから一言の会話もない。
それどころか、練習嫌いの八守先輩が急にこの江本に対して特訓までしだしたのだ。
それが福田先輩への対抗心からだというのは、みんなが気付いていた。

君子危うきに近付かず。なのじゃ。
先程、江本に祝福された時は少なからず感動したが、それはそれ。
これはこれなのじゃ。
ワシは心を込めて誠実にことわる事にした。

「なあ、チハル。頼むよ」江本が拝むように言う。

「いやじゃ」

八守先輩が他のパートのトップに基本のA線(ラ)の音を配っている。
それが終われば大所帯、ギターパートのチューニングだ。

「ほれ、もうじき八守先輩がギターのチューニングを始めるぞ」
ワシは心を込めて、冷たく言い放った。
自分のことは自分でやれ。千尋の谷から子供を突き落とす獅子の気持ちである。

江本はワシを恨めし気な目つきで見ながら、福田先輩の方に行った。

「八守先輩が…?」

「はい、音出しを頼むと」

「わかった。江本はチハルと一緒に皆のギターを集めてくれ」
そう言いながら立ち上がると、棗田先輩に報告した。

本来、チューニングの音出しは棗田先輩の役目だったからだ。

「どういうつもりかしら、八守くん」

「さあ、よく分りませんが、トップの命令ですから」

「気をつけてね。何を言われても怒ったらダメよ」

「大丈夫ですよ。安心してください棗田先輩」

ワシも、大丈夫だと思った。
これ、これ。これなのじゃ。
事前に、いつもならその役目である棗田先輩に相談する。

あの時この気配りがあれば、今みたいに気まずい思いをしなくてすんだのじゃ。

しかし、油断はならん。
福田先輩が気を使っていても、八守先輩の出方が分らない。

棗田先輩も心配そうだ。
そういえば、棗田先輩と八守先輩は以前付合っていたらしいが、
チューニングの時は、ずっと向い合せだ。

合奏の時だって、いつも隣同士なのだ。
八守先輩なんかどうでもいいが、棗田先輩はどういう気持ちなんだろう。
まだ、少しは八守先輩の事が好きだったりするのだろうか?

ワシが勝手にそう思っているだけで、
ほんとにワシの兄貴のことが好きなんだろうか?

そんな事を考えながら、ワシは江本と皆のギターを集めて机の上に並べた。

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