旋律はいつもドリン系

高校時代のマンドリンクラブの話です。
若干、ほんとのことをベースのフィクションです。

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(33)胸をはって、兄貴に会いに行くのじゃ。

2008年06月29日 00時49分59秒 | 1章-はじまりは、こんなもん

目次 〈1章-はじまりは、こんなもん〉の最初から
   〈2章-D線の切れる音〉の最初から
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もちろん、ゴールデンウイーク中も練習した。福田先輩と2人でたっぷりとだ。
1日だけ、GW中の日曜日だけ休みになった。ゴロゴロした。

GWが明けると、1年生男子も合奏に入り始めた。当然、弾けない。
しかし、ワシは弾いた。あくまで他の1年生に比べればだが。
藤本はもっと弾けた。

福田先輩がワシを教えだしてもう2週間以上、過ぎた。
ワシは密かに、自分の先生はまだ棗田先輩だと思っていたのだが、
棗田先輩が指導していた期間を福田先輩が抜いてしまった。

ただ、それだけなんだが、なんだか寂しい。
他の部員からは、ワシの師匠はもう福田先輩だと思われている。
いつか、棗田先輩に戻れるのかと思ったが。福田先輩本人からは聞けない。
「大阪大会へはもう行かなくていい」と、自分で言ったらどうなるんだろう。
5月末になっても、大会に行けるかどうか、決まってなかったのだ。

その日は部室で練習すると福田先輩に指示された。
福田先輩がメトロノームに合わせて何箇所か弾けと言った。

その場所は苦手な所と、得意な所が2箇所づつあった。

時々、つまづいたが何とか止まらずに弾く、
メトロノームに合わせるとリズムが取りづらい。
途中から先輩が机をペンで叩いて、リズムをとった。

最後のギターの見せ場の単音からエンディングにかけては得意な所だ。
福田先輩もここはカッコイイから好きだと言っていた所だった。ワシもここ好き。

弾き終わっても、先輩は何も言わない。
「あそこがだめ」。「ここはこう」と、いつもなら文句を言う。
そのかわり、ワシの左上の方を向いて「どうですか?」と聞いた。

後ろを振り向いたら、いつの間にか顧問の古森先生、宮島部長、
ギタートップの八守先輩が立っていた。

「いいんじゃないか」八守先輩がまず口を開いた。

「うん。短期間でよく、ここまで出来たな」古森先生が誉めてくれた。

「これで、大阪に連れて行ける」宮島部長がそう宣言してくれた。

胸の奥から何かが湧いてきた。

喉のあたりで行き場を失った何かが、いきなり目の奥に移る。

涙が、こぼれ落ちた。ボタボタボタ…。止まらない。

合格。

ワシが泣いてしまったので先輩達はビックリしていた。

なにより、驚いたのはワシ自身だった。
何故、泣いているのか自分でもよくわからない。

嫌で、嫌で、たまらなかった。
いやいやでも、こんなに頑張ったのも初めてだった。

いつも、左手の指先がジンジンして痛いのが嫌だった。

いくら練習してもうまく弾けないのが嫌だった。

すぐに物差で手をたたく、福田先輩が嫌だった。

どんなに頑張っても藤本に追いつけないのが一番嫌だった。

「よく、頑張ったな。これで胸をはって青山先輩に会いに行けるぞ」
最後に福田先輩が言った。福田の野郎が初めてワシを褒めてくれた。

「福田先輩、ありがとうございます」

ちゃんと、そう言えたか、自分ではよくわからない。
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