目次 〈1章-はじまりは、こんなもん〉の最初から
〈2章-D線の切れる音〉の最初から
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「えっ!2年。あれが2年?」
脳内悪口が素直に表に出て、思わずあれ(福田先輩)を『あれ』と言ってしまった。
だれが見たってあの物腰、でかい態度は生意気な顔は3年生だ。
今やワシにとって、福田(の野郎)先輩は、
宮島部長やここにいる藤本より、ずっと恐ろしい。
入部して2週間、なぜ福田先輩に気がつかなかったのやっと判った。
1年生は3年生が指導するため、
最初のうちは自分の指導する先輩ぐらいとしか接触がないのだ。
3年生にしても顔と名前くらいで話をすることもなかった。
ましてや2年の先輩とは…。
「だから、ギタートップじゃなかったのか。
すごいのう、2年なのに一番上手いなんて。
中学ぐらいからギター弾いとるのかなあ。
羨ましいのう、チハルは。福田先輩に教えてもらって!」
藤本はちっとも羨ましそうな顔をしていない。
「チハルくんが言うほど、福田先輩。嫌な感じの人じゃないと思うけどなあ。
川田先輩と話しをする時は、よく笑ってるし。
僕には、そんなに偉そうには、見えないけどなあ」
ベースの川田先輩も2年なので、福田先輩とはよく一緒にいるらしかった。
それで、ネンは福田先輩のことを知っていたのだ。
そんなネンの説明なんか、何の慰めにもならない。
実際ワシが福田(の野郎)先輩に虐められて(教わって)いるのであって、
ネンが習って(虐められて)いるわけじゃない。
家に帰ると、母ちゃんがすでにパートから戻っていた。
「母ちゃん、ワシ明日から6時までに学校に行くことになった。朝練なのじゃ」
ワシは母親にそれとなく、助け舟を求めた。
希望の回答「まあ、なんてことざんしょ。そんな時間に登校させるなんて!」
答 案「あらまあ!じゃ、5時には起こさんといけんね」
明日から弁当を早めに用意しないと、とか言いながら台所へ消えた。
「…。」
この夜、ワシは小学校の時以来9時前に寝た。
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さあ、朝練です。
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