旋律はいつもドリン系

高校時代のマンドリンクラブの話です。
若干、ほんとのことをベースのフィクションです。

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(28)『唇から水気が抜ける。』by江本。なのじゃ。

2008年12月14日 00時05分05秒 | 3章-ワシと江本の八福(ハチフク)代理戦争
目次
〈1章-はじまりは、こんなもん〉の最初から
〈2章-D線の切れる音〉の最初から
〈3 章-ワシと江本の八福(ハチフク)代理戦争〉の最初から
〈4章-スターウォーズと夏の日の恋〉の最初から

「ローマトリノを何カ所か弾いてもらう」
宮島部長にそう言われて、これがテストだと思った。

チハルと一緒に弾かされるなら勝ち目がないと思ったが、
単独ならまだチャンスがある。

先生や宮島部長も聴いているので緊張した。
でも、通しで弾くのではなく短いフレーズを何カ所か弾いただけなので、
あまりミスタッチもなく弾けたと思う。

八守先輩が微妙な所でボロが出る前に止めてくれた気もする。

「これだけ弾ければ、問題ないと思いますよ」

八守先輩が後ろで聴いていた2人に言った。

「うん、いいと思う」宮島部長が古森先生に向かって言う。

「そうか、宮島もいいと言うなら、江本は大阪行きが決定だ」

「えっ。大阪大会に出れるんですか?」

あんなに悩んでいた大阪への切符が今、手に入った。
「福田と青山を呼んでくる」と言って宮島部長が部室から出て行く。

つまり、チハルはまだテストを受けてないということだ。
でも、どういうことだろう。大阪へは1人しか行けないのじゃないのか?

練習場に戻るように言われて、出ようとすると、
ちょうどドアの前でチハルと入れ代わりになった。

最近はお互い意識して話をしない。
チハルはいつも通りだ。俺と同様、テストと知らされていないのだろう。
かわりに俺が緊張してきた。

「ひょほー。ひゃんふぁれひょ」

『よー。頑張れよ』と言うつもりが、声が裏返ってしまった。唇がカサカサだ。

何を言ってるんだ、俺は。
チハルはテストと知らないのだ。よけいな事を言ってプレッシャーをかける必要もない。
俺はもう、大阪へ行けるのだから。
幸い、何を言ったのか分からなかったようだ。
チハルは、けげんな顔をして、そのまま部室の奥へ行く。

先生や先輩たちは、俺の時に緊張させたのが分ったのか、
部室から出る振りをして、そのまま部室に残る。

俺1人部室から出たが、中が気になる。
ドアの前で耳を扉に近付けて中の様子を伺った。

緊張しながら待つ。唇から水気が抜ける。

まだか?

『弾!弾!弾!弾!』

「ローマトリノ」の特長ある、イントロが扉越しに響いてきた。

腹に響く音だ。合奏の時、いつも聴こえてくるチハルのギターの音だった。

腹筋に力を入れてみた。
中学の時、腹の底からトランペットを吹けるようになったのは、
いつ頃からだったろうか?

もう、聴く必要もない。
乾いた唇をなめながらそっとドアから離れた。

ぺろぺろ…。

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