旋律はいつもドリン系

高校時代のマンドリンクラブの話です。
若干、ほんとのことをベースのフィクションです。

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(07)一触即発。なのじゃ。

2008年09月17日 00時31分49秒 | 3章-ワシと江本の八福(ハチフク)代理戦争
目次
〈1章-はじまりは、こんなもん〉の最初から
〈2章-D線の切れる音〉の最初から
〈3 章-ワシと江本の八福(ハチフク)代理戦争〉の最初から
〈4章-スターウォーズと夏の日の恋〉の最初から

『えっ。それでいいのか?福田。』

福田先輩の動きが一瞬、停止した。

1弦と2弦の糸巻きの距離、わずか数センチ。
その短い空間を先輩の左手がさまよう。
行くもならず、引くもならず。

やっと、状況を理解した先輩の発した言葉。

「ちょっと、違ってましたか?」

「うーん。ちょっと違ってたかなあ。」
メガネの奥の冷たい目付きとは逆に、口調はのんびりだ。

それではもう一度。とばかりに1弦のチューニングをやり直す。
今までとは違って、念入りだ。

よし、音が合った。と福田先輩が確信の眼差しを棗田先輩に送った。
棗田先輩が小さく頷いた。

そして、見なきゃいいのに、この先輩は八守先輩をチラッと見た。

八守先輩は何も言わない。
言わないが代わりに、首をかすかに傾けた。分度器をあてても、1度未満。
しかし、福田先輩にはそれで充分だ。

「ちっ、違いますか?」

「うーん。」にっこり笑って、首をもう一度傾けた。

初めて見る、福田先輩の焦った様子。
自信満々にチューニングする、先程までの姿はどこにもない。
1音鳴らすたびに、八守先輩の顔をうかがうしまつだ。

やっと1弦が終わっても、2弦でも同じことが繰り返された。
福田先輩の額から冷たい汗が落ちる。

八守先輩は決して『違う』とは言わない。
様々な方法で『それでいいの?』『本当に合ってると思う?』という合図を送る。

ここにきて、鈍い福田先輩も八守先輩の意図に気づいたようだ。

遅いわ!
ワシは内心、八守先輩の福田先輩に対する仕打ちに腹が立っていた。
一緒にチューニングしている、棗田先輩のおっとりとした顔も、
だんだん険しくなってきている。

最初は福田先輩の無神経な言葉使いが、あまりにひどいので、
少しくらいは、しょうがないと思っていたのだ。
それこそ、顔には出せないが『いい気味』と思っていたのだ。
本当に顔に出そうで焦ったくらいじゃ。

しかし一見、優しげな八守先輩の底意地が、ここまで悪いとは思わなかった。

今まで、冷や汗をかいて青白かった福田先輩の顔が、だんだん赤くなってきた。
音を出す度、伺うように八守先輩の顔を見ていた福田先輩の目に、違う意志を感じる。

八守先輩はずっと涼しい顔をしている。

一触即発。

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