旋律はいつもドリン系

高校時代のマンドリンクラブの話です。
若干、ほんとのことをベースのフィクションです。

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(33)『棗田先輩は椅子に座って』byワシ。なのじゃ。

2008年12月27日 00時33分11秒 | 3章-ワシと江本の八福(ハチフク)代理戦争
目次
〈1章-はじまりは、こんなもん〉の最初から
〈2章-D線の切れる音〉の最初から
〈3 章-ワシと江本の八福(ハチフク)代理戦争〉の最初から
〈4章-スターウォーズと夏の日の恋〉の最初から

福田先輩は驚いたように八守先輩を見つめたが、
すぐに目をそらして、「はい」とだけ言った。

福田先輩の後ろに立っていた棗田先輩が何か言おうかと、
タイミングを計っている様子だ。

福田先輩は不満そうな顔つきだが、それでも素直に『ポーン』と1弦を鳴らした。
しかし、目をそらしたまま八守先輩を見ようとしない。
見たくもないと、顔に描いてある。

逆に八守先輩は福田先輩の眼を見つめて、もったいつけるように1弦を鳴らした。
二人の音が重なる。

弦を弾(はじ)いた時は確かに音だが、いつのまにか振動に変わる。
音はいつまで音のままなのだろう。

八守先輩は眼を閉じて、2つの振動に寄り添うように耳を傾ける。
糸巻きをわずかに回したように見えた。

ワシには八守先輩が左手に力が入っているのは確認できたが、
本当に糸巻きを回したかは分らない。微妙な動きだった。

ただ、八守先輩が目を開けて福田先輩をもう一度見た瞬間。

福田先輩が、「あっ」と呟き、しばらく八守先輩の事を見つめた。

今度は八守先輩の方が目をそらして、
「じゃ、次ぎ2弦」と言って何ごともなかったかのように、
チューニングの続きを促した。

つぎの2弦からは早かった。

『ポーン』『ポーン』
『ボーン』『ボーン』と小気味の良いやり取りが続いた。

お互い顔も見ない。ただ音だけが響く。
2弦から3弦、4弦にチューニングが移る時も顔を見ないし、これといった合図もない。
ただ音だけが響き、1本のギターのチューニングが瞬く間に終わった。

八守先輩がワシにチューニングを終えたギターを渡した。

江本が次の楽器を渡そうとした時、
八守先輩はそれを受取るのを止め、福田先輩から自分のギターを取り戻した。

「福田、次の楽器から頼むよ」

「はい、八守先輩」

たった今、チューニングをしていた時の小気味良いリズムで福田先輩が応えた。
この2週間のギクシャクした雰囲気が音が消えるように無くなり、
ほんの少し糸巻を絞めて二人の気持ちがシンクロした。

江本が福田先輩にギターを渡して、2本目のチューニングが始まった。
やはり、先輩達はお互い顔を見ない。見る必要もないのだろう。

ワシと江本は黙々とギターの受け渡しをする。

最初は立っていた棗田先輩も、今は椅子に座ってワシらを優しく見守っている。

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コメント (2)   この記事についてブログを書く
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2 コメント

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こんにちは (tanpen001)
2008-12-27 16:48:22
二人とも幸運ですね。
同時期に同じ部存在できた。
いくら技量があっても受け継ぐ者がいなければ、もしくは見せてくれるもの(気づかせてくれる者)がいなければ、、、

初作と新作がえらく違いますね。
最初のも楽しめますが、新作はまたちがうというかなんといえばいいのでしょうか、「贈り先」が違うとでもいうのでしょうか。

このような作品を見させていただいたのは産まれて初めてです。
どうもありがとうございます!

チハルさんが納得いく作品に成長していきますよう心からお祈り申し上げます。
コメント有難うございます (ちはる)
2008-12-28 01:56:22
いつも、いつもこちらをやる気にさせるコメントを有難うございます。
私も、割とコメントを書く方かなと思うのですが、あなたのように人のやる気を起させるようなコメントは書けません。本当に励みになります。有難うございます。
海外に居られるのですね。体にお気をつけて頑張ってください。

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