倫理の破壊をもたらした大惨事の後に、原発への根源的な問い 第2回
序(2)
本書の題名(なにやらゆかし文学的表現)「夢よりも深い覚醒へ」はどうみても、フロイトからユングそしてラカンの心理学・精神分析の系列に関係ありそうだ。この名文句は実は大澤氏の東大時代の師である見田宗介氏の言葉だそうだ。フロイトの夢分析に死んだわが息子の遺体の側で眠る父の見た夢の話がある。夢の中で息子が枕元に立ち「僕がやけどをしているのにどうして分からないの」と父を激しく責める。夢から醒めた父は息子の遺体の側のロウソクが倒れ、息子の衣服を焼いているのを見た。この夢に対する標準的な解釈は、夢には睡眠を引き延ばす機能があると云う説である。これに対してジャック・ラカンは激しい夢がその内在的な力で人を覚醒に追いやるとして、息子を病魔から救えなかった父の深い罪悪感が夢の中で父を責めるだとした。父が目を覚ましたのはこの罪悪感から逃れるため、意識していなかった真実に出会って、今度はそこから現実のほうへ逃避したのだという解釈を示した。夢のほうに激しい真実があって、そこから逃げるように眼を覚ますのではなく、夢よりもっと深いレベルで夢の本質を意識し、覚醒してから行動を起こさなくてはならないという教訓を大澤氏は言いたかったのである。3.11の出来事が悪夢とすれば、その本質を深いレベルで認識し、我々は何をすべきなのかを問うのが本書の目的である。地震と津波による3.11福島第1原発事故は原子力安全神話がウソである事を白日の下にさらした。原発はすなわち原爆であることを知らしめた。
序(2)
本書の題名(なにやらゆかし文学的表現)「夢よりも深い覚醒へ」はどうみても、フロイトからユングそしてラカンの心理学・精神分析の系列に関係ありそうだ。この名文句は実は大澤氏の東大時代の師である見田宗介氏の言葉だそうだ。フロイトの夢分析に死んだわが息子の遺体の側で眠る父の見た夢の話がある。夢の中で息子が枕元に立ち「僕がやけどをしているのにどうして分からないの」と父を激しく責める。夢から醒めた父は息子の遺体の側のロウソクが倒れ、息子の衣服を焼いているのを見た。この夢に対する標準的な解釈は、夢には睡眠を引き延ばす機能があると云う説である。これに対してジャック・ラカンは激しい夢がその内在的な力で人を覚醒に追いやるとして、息子を病魔から救えなかった父の深い罪悪感が夢の中で父を責めるだとした。父が目を覚ましたのはこの罪悪感から逃れるため、意識していなかった真実に出会って、今度はそこから現実のほうへ逃避したのだという解釈を示した。夢のほうに激しい真実があって、そこから逃げるように眼を覚ますのではなく、夢よりもっと深いレベルで夢の本質を意識し、覚醒してから行動を起こさなくてはならないという教訓を大澤氏は言いたかったのである。3.11の出来事が悪夢とすれば、その本質を深いレベルで認識し、我々は何をすべきなのかを問うのが本書の目的である。地震と津波による3.11福島第1原発事故は原子力安全神話がウソである事を白日の下にさらした。原発はすなわち原爆であることを知らしめた。
(つづく)