ブログ 「ごまめの歯軋り」

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美術散歩 朽木ゆり子著 「フェルメール全点踏破の旅」 集英社新書ビジュアル版

2008年09月03日 | 書評
17世紀オランダの風俗画家フェルメールの全作品 第35回

フェルメール絵画32: 「少女」(推定1665-67)  米国 ニューヨーク メトロポリタン美術館


 この少女の顔は実に面白い。少女でなく少年でもよい。いずれにせよ肖像画ではなく「トローニー」のモデルなのだ。構図の単純なところは有名な「真珠の耳飾りの女」に似ている。背景、ポーズ、こちらを見る視線、スカーフによる髪のまとめかた、イヤリングなどそっくりである。色の配色で私は「真珠の耳飾りの女」に軍配を上げる。「少女」の絵は褐色一色のモノトーンの絵で色の調和は取れているが、変化に乏しい。どちらが好きかはその人の好みである。フェルメールの持つ古典的な傾向を理想化したのが「真珠の耳飾りの女」であるのに対して、「少女」の絵は額が広く、鼻が低く、唇も薄いという現実的な顔(何処にでもいる顔)ということだ。「少女」のほうがキャラクター性があるという点で、トローニーとしては優れたモデルだと云う人も居る。フェルメールの絵の何枚かは、女性の顔の性別があいまいになる時がある。「真珠の耳飾りの女」と「少女」の絵は対として描かれたという説がある。構図や技術的完成度も似ているし、違うのは顔立ちと色彩だけである。私達にどちらが好きと問いかけているようだ。



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