ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 唐 亮 著 「現代中国の政治ー開発独裁のゆくえ」 岩波新書

2013年05月30日 | 書評
経済成長を追求する開発独裁と民主化のゆくえ 第3回

1) 一党支配と開発独裁路線 (1)
 まずは、1949年の建国以来の毛沢東指導下の共産党の組織体制と中央集権体制の確立過程をおさらいしておこう。中国共産党の組織はめったに勉強することは無いだろうが、この程度は知っておかないと、ニュースで現れる要人の序列さえ分からないだろう。共産党は行政区画のクラスにしたがって網の目のように党の執行部を作った。村ー郷・鎮ー県・市ー地区級ー省級-中央という順に党委員会がピラミッド状に構成された。最低単位は党員3名以上で基層委員会を作らなければならない。それは国家の組織中にも隈なく張り巡らされ、党が全国規模で根をおろすと同時に、国家をも厳しく統制してゆくのであった。党内運営は事実上トップダウン型である。党中央は重要政策の決定権を持つ。組織は方針を討論はできるが、決定には組織的に従う。党に反する意見を述べてはいけないという「鉄の規律」がある。共産党の指揮命令系統は全国代表大会が党の最高指導機関とされるが、5年に1度しか開催されない。全国代表大会は中央委員会、中央規律検査委員会を選出して終わりである。いわば用意された人事案を承認する「しゃんしゃん大会」である。地方の人々のご褒美として北京観光であろうか。中央委員会総会は1年に1度開催され、政治局常務委員会、総書記を選出する。中央委員会は政治局常務委員会の強いイニシャティヴで政治報告、決議案、重大人事をおこなう。政治局常務委員会の提案は殆ど修正もなく中央委員会総会、全国代表大会は採択する。現在の中央政治局常務委員会は9人から構成され、総書紀、全人代委員長、国務院総理、政治協商会議主席、中央書記処常務書記、国務院副総理、中央規律委員会書紀、中央政法委員会書記が兼任する。中央政治局常務委員会のもとに中央政治局委員が25名である。総書記は中央政治局、中央政局常務委員会、中央書記処の会議を主宰する。

 中国共産党の権力の実質的な中核は中央政治局とその常務委員会にある。会社の組織で言えば、総書紀が社長、中央政治局常務委員会が常務会、中央政治局委員会が取締役会、中央委員会は株主総会のようなところだろうか。中国を裏(共産党)で動かしている人々は誰かといえば、時によって重点は移動するが概ね中央政治局常務委員会の9人と言ってよいだろう。これが中国のトップである。共産党中央の事務機構では、組織部・宣伝部・統一戦線部が伝統的に3大党務機関(日本では例えば自民党の3役は幹事長、総務会長、政調会長である)といわれ、それとは別に国の行政機関とほぼ同一の区分で政法委員会が設けられ、党の行政担当機構をなしている。二重権力のように入り組んだ党と国家組織に対応関係が存在する。本書は政治機構を論じるので、また中国は北朝鮮ほど軍事政権でないので軍隊の事は省略しておこう。共産党は建国以来国家幹部の任免権を持つ。党中央は総理と各省部の幹部を任免し、党省委員会は地司庁局長級を任免し、党市委員会は県処級を任免し、党県委員会は科級を任免する。こうして数千万人とも言われる中央と地方の幹部のノーメンクラツーラ表を作成する。こうして共産党は基層社会への権力支配を浸透させ、諸団体への監視と規制の網をかぶせ、職場・機関単位による社会統制を貫徹させる。中国ではマスメディアは建国以来政府の事業部門に属して報道統政を続けている。
(つづく)



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