ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

文芸散歩  金田鬼一訳 「グリム童話集」 岩波文庫(1-5冊)

2013年03月06日 | 書評
ドイツ民俗研究の宝庫「児童と家庭向けのおとぎばなし」 第67回

* KHM 107  旅あるきの二人の職人
 かなり長い話の展開となっています。筋の破綻もなくうまくできた話です。人間社会には善玉と悪玉が一緒にぶつかり合うことが多い。仕立て屋さんは陽気で気前がよく仕事にむらがありません。また神様への信心も深いひとです。一方靴屋さんは斑気で仏頂面で人を哀れむ心というものをもっていません。また神様を自分の心から追い出してしまった男です。この二人がひょんなことから一緒に旅をすることになり都を目指して仕事探しに出かけました。森を抜けて都へ行く路が二つに分岐しており、仕立て屋さんは持ち前の陽気さと楽観さから2日分のパンしか持ってゆきません。靴屋は悲観さから7日分のパンを持ちました。選んだ道は7日かかる道です。3日目には仕立て屋さんのパンはなくなり、5日目の朝あまりにひもじさから、靴屋にパンを分けて欲しいと頼みました。靴屋は意地悪心でパンと右の目を交換しました。それで7日目の朝もやはり靴屋にパンを分けてくれというと、靴屋はパンと左目と交換しました。こうして仕立て屋はめくらとなり、置いてけぼりにされ絞首台の下でくたばっていました。すると絞首台の二人の死体が話しているのが聞こえます。死体の露を目に付けると目が甦るというので、そうすると仕立て屋さんの目が回復し、歩いて都へ向かいました。途中栗毛の子馬やコウノトリや小鴨、女王蜂らに哀れみをかけ命は奪いませんでした。都に入った仕立て屋さんは仕事口が見つかり、1日1日評判が上がりました。仕事振りがいいので王様の耳に入り、王室に出入りする仕立て屋さんになりました。靴屋も王室のお抱え靴屋でいましたので、仕立て屋を妬んで王様に讒言をし、その度に命を助けた動物の力で切り抜け、王様の長女と結婚しました。靴屋は都から追放され、絞首台の下でカラスによって両目をくりぬかれたというお話。
(つづく)


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