ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

丸山真男著 古矢旬編 「超国家主義の論理と心理」 岩波文庫

2019年06月08日 | 書評
キンセンカ

明治以降の超国家主義がナショナリズム・軍国主義・ファッシズムに突入した論理 第5回

序章 (第5講)
丸山真男著 「日本の思想」岩波新書(1961年11月)

第2部 「戦後世界の革命と反動」(その1)

 第1章 「ファッシズムの現代的状況」: (1953年4月)日本基督教会信濃町教会で行った講演記録を補訂し、「福音と世界」に掲載された。アメリカの日本占領政策が逆コースへ旋回した契機は1950年6月の朝鮮戦争にあったと丸山氏は1989年に振り返った。それは東アジアの冷戦の激化により、占領軍のレッドパージというアメリカの反共ファッショに丸山氏の眼が向けられる。丸山氏は、マッカーシズムによる少数意見の抑圧と表現の自由への制約という事態のなかに、戦後アメリカもまた国内の「強制的セメント化」というファッシズムへの典型的な傾斜を免れなかったとみた。
 第2章 「E・ハーバート・ノーマンを悼む」: (1957年4月)毎日新聞4月18日と19日に投稿された。丸山氏の戦前からの親友であったE・ハーバート・ノーマンがカナダ外交官としてカイロで自殺されたのは4月4日のことであった。訃報に接した丸山氏の衝撃と悲嘆のなかで書かれた追悼文である。彼を死に追いやった政治動向は、「ファッシズムの現代的状況」の核心にもなっていたのである。
 第3章 「スターリン批判における政治の論理」: (1956年11月)1956年2月ソ連共産党第20回大会でのフルシチョフの秘密報告によるスターリン批判は、世界的に見て3つの期待に火をつけた一大転機となった。一つはスターリン時代に個人崇拝と粛清によって極度に硬化した共産主義体制の自由化への期待、二つは国際共産主義運動における社会主義への異なった道の選択の承認、三つに東西冷戦の緩和であった。ところが同年10月に起きたハンガリー動乱によってフルシチョフ報告に対する期待や希望は吹き飛んだ。丸山は「スターリン批判」がスターリン体制の組織的病理を究明する努力を怠り、スターリン個人の欠陥に矮小化しているとフルシチョフ報告を批判した。
 第4章 「反動の概念」: (1957年7月)岩波講座現代思想第5巻に掲載された。丸山氏は今日の政治社会文化の中で「反動的なるもの」を識別して、より広い反動一般の論理と構造について明らかにすることを意図したという。フランス革命から今日までの古典的な「反動の概念」の生成の思想史を描いた。変革と反動は、あざなえる縄のごとしということである。

(つづく)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿