ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 濱口桂一郎著 「新しい労働社会ー雇用システムの再構築へ」  岩波新書

2010年03月19日 | 書評
多様化した労働社会に対応する新しい日本の雇用システムとは 第11回

3)賃金と社会保障の連環 (1)

 2006年7月NHKが放映した「ワーキングプアー働いても働いても豊かになれない」は世間へのインパクトが大きかった。小泉政権時の「構造改革・規制緩和路線」の是正がにわかに社会的要求となった。非正規労働者は1990年代後半の就職氷河期によって大量に生み出されたのである。この世代の若者はもう中年期を迎えており、この世代が生活できないことが未婚となり少子化が加速した由縁である。少子化問題は「生めよ増やせよ」ということではなく、生活できる世の中の実現がなければどうにもならないのだ。日本の地域別最低賃金、産業別最低賃金は生活保護の給付水準を下回っていた。つまり健康で文化的な生活を営めない水準であった。2007年11月安倍内閣は改正最低賃金方を成立させたが、このねじれ現象を解消するには至っていない。戦後労働運動は生活できる賃金を目指しての闘争であった。1960年以降職能給と呼ばれる「人基準の賃金制度」(労働基準ではなく)が確立した。所得倍増の高度経済成長に支えられて、生活できる「生活給」を企業が支払えたので、政府はその費用を福祉対策に支出しなくて済んできた。企業が労働者の子育て、教育、住宅など福利厚生に及ぶ賃金をまかなった。これらが労働者の忠誠心の源泉となって企業のメリットに繋がった時代があった。その超過勤務の残業代を生活費の折込済みの長時間労働を常態化したデメリットも発生した。労働組合も残業時間規制に動き出したのはバブルがはじけた1990年代以降のことである。このころ使用者側は「成果主義」を打ち出し、あまり成果を伴わない長時間残業に対しては報酬を支払わないという「フレックス」(裁量制)を打ち出した。「同じ成果を出すなら労働時間は自由ですよ」という甘い言葉の裏には、ホワイトカラーの残業代を支払わないという趣旨が含まれていた。それは「ホワイトカラーエグゼンプション」にも繋がってゆく。労働量と成果に正比例関係があるのは単純労働のブルーカラーのみで、ホワイトカラーにはその関係は殆ど見られない。残業手当が基本給に比例するので、これらの制度は中高年の報酬低下に直接響いた。
(つづく)

コメント   この記事についてブログを書く
« 環境書評  天野明弘著 「... | トップ | 黒マグロ国際取引禁止案 否決 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

書評」カテゴリの最新記事