ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 巽 好幸著 「なぜ地球だけに陸と海があるのかー地球進化の謎に迫る」 岩波科学ライブラリー

2018年09月29日 | 書評
 地球内部温度

太陽起源から地球進化の謎に迫る、陸と海の関係から読み解く 第12回

4) サブダクションファクトリーーその地球進化における役割 (その3)

プレートが低温であるため、この不連続面で下部マントルは冷却されスピネル相に転移する。冷たいプレートはやがてペロブスカイト相に転移し下部マントルより高密度となり少しづつ漏れ出して落下する。ペロブスカイト相に転移したプレートは更に下部マントルへ落下するというしくみである。プレートが発生する脱水残渣と多量の融解残渣、特に融解残渣の相変化について高温高圧実験を行った結果、364万気圧、6000度(内核の条件)で、周囲のマントル物質よりも高密度になった。島弧地殻の直下から剥落した融解残渣は、その後も落下を続けマントルの底に落ちるのであろう。これを「スーパーコールドプルーム」と呼ぶ。従って脱落する融解残渣の量は大陸地殻の3-4倍の量になり、マントルの底に200Kmの厚さで堆積していると考えられる。下部マントルの底部のD"層を構成するポストペロブスカイト相が出現するのである。この層が、マントルの対流であり、「スーパーホットプルーム」によって一気に地上に噴き上げるホットスポット火山を見てゆこう。地球上の火山活動は海嶺などのプレート発散境界、沈み込み帯などのプレート収束境界、それとプレート内部のホットスポット火山で起こる。ホットスポット火山はハワイ島のようにその起源が地球内部の熱い点にあると考えられている。プレート運動に沿った海山列をなす事、プレート運動と無関係なことが特徴である。海域のホットスポット火山で産する玄武岩の化学組成分析によると、ストロンチウムと鉛の「同位体比」をパラメーターにして分類すると、始原的マントルのほかに、4種類の成分がマントルに存在し、これらをブレンドしたものがホットスポットマグマの起源物質となっていた。Pbの同位体比206/204を横軸に、Srの同位体比87/86を縦軸にとって、火山マグマをプロットすると、始原的マグマPMを中心として、山地によって分類される火山マグマの4種類としてDM(始原的マントル)のほか,EM1,EM2,HIMUがちょうど星形に点在する図が描ける。同位体の年代測定から46億年前にマントルが形成され、25億年前にマントルが分化したことが分かった。マントルが深いところのマグマほど親成分が多く、最上部マントルマグマには娘成分(同位体分解成分)が多いことが分かる。

(つづく)


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