ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 服部茂幸著 「偽りの経済学ー格差と停滞のアベノミクス」 岩波新書

2019年03月22日 | 書評
日銀黒田の異次元金融緩和策による物価上昇2%目標はうそ、格差と停滞のアベノミクスは破たんした 第2回

序(その2)

服部茂幸著 「アベノミクスの終焉」(岩波新書2014年8月)は本書のアベノミクス総括の中間報告をなすものであるので、本書を理解するうえでぜひ目を通しておきたい。
2014年夏、アベノミクスの早々とした萎縮に疑問を呈し、検証作業をおこなったのが服部茂幸氏の本書である。客観的に評価するのはまだ早いというのではなく、こんなまずい政策は早急にやめるべきというのだ。これは経済学上の立場の違いからくる。本書のあとがきに書いているよう、「筆者はアベノミクスが始まる前からリフレ政策の批判者であった」という。

1)アベノミクス1年半の成果の検証では、2014年第1四半期の経済成長率は極めて高いが、これは消費税増税前の駆け込み需要による。14年第2四半期の経済成長率の落ち込みはひどいものであった。要するに日本経済の中身は金融大緩和に関係のない部分(駆け込み需要)を除けば、経済はゼロ成長かマイナス成長である。異次元緩和派の絶頂期は実は緩和開始前の幻想の時期のもので、異次元緩和が開始されると不幸にも日本経済は失速した。日銀は2013年4月4日質的・量的金融緩和の導入を決定した。その柱は①2年をめどに消費者物価上昇率を2%程度までに引き上げること、②マネタリーベースを年間60-70兆円まで増加させること、③長期金利の低下を促すために長期国債を年間50兆円のベースで購入することであった。マネタリーベースとは日銀の現金と日銀当座預金の合計のことで、12年末に138兆円であった者を14年末にはそれを270兆円まで拡大するという方針である(2013年末の実績はマネタリーベースは202兆円、日銀当座預金は107兆円である)。長期国債の保有も89兆円から190兆円は拡大することになる。2013年5月23日の株価大暴落は日銀の長期国債の大量買い付けが国債価格を不安定にしたためである。これを期に株価も円ドルレートも全く動かなくなった。これがアベノミクスの第1の失敗である。初期の段階で円安と株価上昇はなぜ起こったかというと、政策の効果では全くあり得ない。人々の期待に乗った投資家たちの「偽薬効果」である。円安の狙いは輸出を拡大させることであった。日銀の金融大緩和が始まると皮肉にも経常収支が悪化した。これは金融政策ではどうしようもない産業構造の沈下こそが大問題なのである。アベノミクスの第2の失敗は輸出拡大による経済復活に失敗したことである。 2014年4月の所定内給与は0.2%低下したという。実質賃金は3%も低下した。勤労者家計の消費の減少は名目で3%、実質で7%だという。内閣府の消費者動向調査では13年度末より各指標は急速に悪化している。アベノミクスの第3の失敗は、賃金が低下し、消費が落ち込んだことである。異次元緩和が始まってから経済成長率は低迷した。低迷する経済はアベノミクスの異次元緩和の第4のそして最大の失敗である。雇用者報酬、民間住宅、消費、耐久財、サービスのチャートを見ると、13年後半以降雇用者報酬は減少し続けている。

(つづく)


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