ブログ 「ごまめの歯軋り」

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文藝散歩 坪内稔典著 「柿への旅」 岩波書店「図書」

2011年03月28日 | 書評
「図書」2010年1月号 「柿への旅」⑨ 「漱石は柿だった」

 夏目漱石のあだ名は柿であった。あだ名をつけたのは正岡子規であった。その理由は「旨みは沢山、まだ渋みの抜けぬ」と評した。漱石には西園寺首相の文士招待の会「雨声会」辞退のことや博士号授与辞退のことがあり、「夏目何がしに過ぎないとのこだわり」の面目約如をいっている。その漱石には柿を話題にした小説「永日小品」がある。銀行の役員の娘と、下町の大工の息子の幼年期の意地っ張りの話である。崖上にいる銀行員の娘「喜ちゃん」が、崖下に住む「与吉」と、上下で柿をやる、いらないのやりとりである。「喜ちゃん」が上から投げた柿を与吉がかぶりついて渋いといって吐き出すしぐさが、いかにも漱石のような意地っ張りだったと稔典氏はいう。
(つづく)


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