ブログ 「ごまめの歯軋り」

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環境書評 井田徹治著 「生物多様性とは何か」 岩波新書

2010年07月30日 | 書評
地球上の生物の多様性を失うことは人類の生存の危機 第10回 最終回

4)生物多様性条約とグリーン開発メカニズム  (2)

 国連環境計画(UNEP)金融イニシャティブは「社会的に責任ある投資PRI」の原則を採用する金融機関が増えてきているという。2010年世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)は生物多様性のリスク管理に関する法国書を提出した。生物資源に関する直接的なリスク以外にも、アクセス条件としての規制や法的リスク、消費者動向など市場のリスク、評判や資金調達のリスクが産業やビジネスで理解されて来ているという。2008年国際自然保護連盟(IUCN)とシェル石油は共同で「生物多様性ビジネスの構築」という報告書を出した。もはや地球温暖化防止も生物多様性もビジネスの対象となりつつあるのだ。ひとつは製品の「認証ビジネス」である。「森林管理組合(FSC)」や「海洋管理協会(MSC)」認定の適合認証ラベルを製品に貼って販売促進を図るというものだ。「温室効果ガス排出オフセット」や「エコツーリズム」、「レクレーションビジネス」などの市場規模は2010年には952億ドルといわれている。また地球温暖化防止ビジネスの「カーボンオフセット」の生物多様性版が「生物多様性オフセット」と「クレジットバンク」である。これらを総称して「グリーン開発メカニズム(GDM)」という仕組みである。ODAで生物資源獲得の利益誘導を図るのが日本のやり方であったが、日本の生物多様性ビジネス参加は遅れてしまった。誠に抜け目のないビジネスで、多少疑問を感じる。
(完)





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