ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 小野善康著 「成熟社会の経済学」 岩波新書

2012年11月02日 | 書評
生産力過剰の成熟社会の長期不況は、内需拡大による雇用創生が鍵 第7回

1)発展途上国社会と成熟社会の経済政策(3)
 成熟社会では企業の構造改革ではなく、需要サイドの変革が必要なのである。だから政府が主導してあらたな需要・あらたな雇用を創出しなければならない。不況時代を”民”に任せていたら「デフレスパイラル」とかジリ貧になってきたのである。経営者は社会全体よりも自社の建て直しが使命であるから、効率化によるコスト削減を目指さざるを得ない。それが経済全体に悪影響を及ぼしているのである。経済においては省力化や無駄の排除、不良採算部門(公共事業)の切り捨てで余った労働力を解雇するだけでは、経済の萎縮につながるだけで、むしろ人々の役に立つ他の物やサービスの生産に回されることが必要である。従業員の解雇は一企業には必要かもしれないが社会の非効率である。遊休人的資源を抱え込むことで社会福祉への予算が増加するのだ。消費を控え貯蓄に向かう消費者と従業員解雇・海外移転に向かう企業の行動は景気悪化を助長するだけでなく、政府にも同様な行動をとる事を要求する。経費節減・公共事業の削減、そして減税などは成熟社会ではさらに景気の足を引っ張ることになる。不況期の構造改革や緊縮財政はその典型である。「小さな政府」の構造改革は財政赤字を拡大した。欧米では2009年ロンドン金融サミットより「拡張財政路線」に向かったという。不況になると政府は財政出動と緊縮財政の間を右往左往するが、短期の不況なら財政出動のケインズ経済で、好況期なら古典経済学の構造改革でもいいが、長期不況下の成熟社会ではそれなりの対応が求められる。
(つづく)


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