ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 濱口桂一郎著 「新しい労働社会ー雇用システムの再構築へ」  岩波新書

2010年03月08日 | 書評
多様化した労働社会に対応する新しい日本の雇用システムとは 第1回

 ここ数年、新聞・テレビ上で「偽装請負」、「フリーター」、「派遣切り」、「ハローワーク」、「正規労働者と非正規労働者」、「製造業派遣」、「名ばかり管理職」、「残業代ゼロ」、「過労死問題」が話題にならない日は無いぐらいだ。またそういった労働問題と格差社会を取り上げた書は多い。下にこれまで取り上げた関連書を示す。
① 朝日新聞特別報道チーム著 「偽装請負ー格差社会の労働現場」 朝日新書
② 門倉貴史著 「派遣の実態」 宝島社新書
③ 中野麻美著 「労働ダンピングー雇用の多様化の果てに」 岩波新書
④ 橘木俊詔 「格差社会」  岩波新書

 これらの問題の本質を新自由主義による企業側の労働規制緩和要求ととらえ、それに反対して労働規制強化の昔に戻そうという図式はそれで理論的には完結する闘争である。自民党から民主党に政権が交代すればある程度はゆり戻しでバランスが傾くことはあるだろう。しかしアメリカで共和党から民主党に政権が移ったからといって、全部「ご破算で願いましては」という風にリセットされることはないだろう。オバマ大統領はまだイラクやアフガニスタンから撤退するということにはならない。また上記の労働問題は一人日本だけの現象ではなく、EUでも「派遣」問題は存在するのである。むしろ欧州の方が派遣問題の歴史は長い。小泉元首相の規制緩和路線によって、富の分配は大きく企業側に傾いていることは確かである。労働側の格差や中流社会の崩壊、若年労働者の貧困化は目に見えて顕著である。また労働問題は企業と労働の賃金問題だけではなく、政府の福祉政策とペアーで考えなければならない。さらに職業教育(キャリアー)という点では厚生労働省だけの問題ではなく、これまで職業教育に全く無関心であった文部省の政策も長期的に関係している。これまで政府は健康保険・失業保険・年金などの福祉政策や職業教育、扶養家族手当てや子育て・教育費などの生活賃金、さらに源泉徴収など税制面などを企業側に押し付けてきた。企業と政府の負担のバランスは日本的に歪んでいたといえる。そこでグローバル競争の激化から企業側からの負担返上の要求が、「経済財政諮問会議」において労働側の代表がいないまま企業側が一方的に内閣に提出された。
(つづく)
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