ブログ 「ごまめの歯軋り」

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文芸散歩 柳田国男著 「昔話と文学」(角川ソフィア文庫 2013年8月)

2018年01月10日 | 書評
昔話と説話文学の接点から、物語の変遷を読む 第4回

2) 竹伐爺

著者はこの「竹伐爺」を竹取物語の系統を引く話と位置付けた。この話は北は青森県から南は熊本県に至るまで間断なく採集されており、関西以西では一般に「屁こき爺」という名で通っている。この民話の筋は、貧乏な爺が竹を伐っている。そこへ殿さまが現れ、そこにいるのは何者だと問うと、爺は日本一の屁こき爺だと答える。そして殿さまの前で珍しい音を出して屁をひると、殿さまは面白がってご褒美を出す。隣の爺がこれ真似して殿さまの前で屁をひるが、失敗して尻を切られという話である。これは日本の昔話に多い隣の悪爺型と言われるもので、花咲爺、舌切雀などに多く見られ話である。竹伐爺がどうして妙な屁の音を出すようになったかを説いているものがある。鳥呑爺と言われる話で、爺が誤って小鳥を飲み込んでしまったので不思議な音が出るようになった。この屁こき爺の記録文芸に取り込まれた話に、お伽草紙の「福富草紙」がある。ただこの話には竹伐爺が出てこないので、竹取物語との連絡は切れている。竹取物語との連絡をたどるには民間説話によらなければならない。著者はこの話の中心題目である屁の音の比較を試みている。「福富草紙」では「あやつつ、にしきつつ、こがねさらさら」という文句は中国地方に伝わっている。因伯童話では「ジージーボンボン、こがねさらさら、チチラポン」、備後では「こがねさらさら、にしきさらさら、スッポコポンノポン」、陸中紫波郡では「にしきさらさら、ごようのまつ、チリンホンガラヤ」、遠野郷では「アヤチュウチュウ、にしきのおんたからで」、秋田仙北郡では「あやチュウチュウ、にしきサラサラ、ごようのまつ、とおってまいれや、トッピンパラリのプー」、信州伊那郡では「ちちんプヨプヨ、ごようのおんたから」、信州小県郡では「ピピンピヨ鳥、ごようのさかずき」、甲斐昔話では鵯から「ピピンぴよどり」、駿河安倍郡では「にしきからまつ、したからヒヒン」などである。爺の腹の中に入って片羽、または片足を出した鳥の名前は、雉、鳩、鵯、山雀の他に、加賀では雀、しじゅうがら、中国では鵐(あおじ)などがある。ただ雀は小型の鳥の総称でもある。記録に残る限りでは、竹取説話異伝では、翁を富ませた小鳥は鶯である。竹伐爺の話には鶯との縁が少ない。そして竹取爺の話は、竹の中の鶯の卵が美女となって、後に帝妃となって翁一門を高貴な種族に至らしめた。だから鳥呑爺の話とは越えがたい空白がある。同一系統の変形というには遠すぎる。しかし著者は未発見説話によってこの溝はきっと埋められると信じている。

(つづく)
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