ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 濱口桂一郎著 「新しい労働社会ー雇用システムの再構築へ」  岩波新書

2010年03月12日 | 書評
多様化した労働社会に対応する新しい日本の雇用システムとは 第5回

 ここでもうすこし詳細に日本型雇用システムの特徴を見てゆこう。日本型雇用システムにおいてはメンバーシップの維持に最重要点がおかれているため、雇用管理(労務管理)の特徴は入り口と出口が制度化されている。つまり新規学卒者採用制と定年制である。欧米では採用は必要が生じた場合に随時に行うが、日本では毎年計画的に採用を行っている。その権限は人事部にあり、現場にはない。労務管理では普通解雇よりも整理解雇のほうを厳しく制限し、いわゆる整理解雇4条件という基準が求まれる。入り口と出口の間には「定期人事異動」というローテーションがあってさまざまな職務を経験することになる。欧米の労働者は熟練を疎外する定期移動というものはありえないが、日本では移動によって出世(昇進・昇給)してゆくのである。官僚において最も甚だしい。日本の賃金制度の最大の特徴は、工場の生産労働者(ブルーカラー)にも月給制が適用されていることだ。欧米ではホワイトカラーには月給制や年俸制が適用されているが、ブルーカラー労働者の賃金は時給制が基本である。日本の月給制には残業割増手当ても付くという特殊な制度である。月給制に時給制を加味したような制度である。年功賃金制度を生み出している仕組みは定期昇給制度である。ブルーカラー労働者に対しても人事査定を行い、職務に関係なく年度ごとに賃金が上昇する制度である。人事査定とは極めて主観的なもので、結果だけでなく人材育成の期待もこめて原資を配分するのである。役職の地位の昇進と同時に昇格という待遇の位がある。取締役、事業所長、部長、課長、主任という職務上の地位とは別に副参事、参事,参与などのまるで宮廷の身分的な地位も設定される。こんな人事異動は海外の企業では信じられないであろう。そして年2回支給される業績連動型のボーナス(約5か月分の月給相当)も日本の賃金制度の特徴である。ブルーカラーにもボーナスが支給される。そして極めつけの日本型賃金制度は多額の退職金である。また住宅・寮、食堂、娯楽、職場懇親会など極め細やかな従業員対策が総務部の仕事である。
(続く)

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