ブログ 「ごまめの歯軋り」

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文芸散歩 大畑末吉訳 「アンデルセン童話集」 岩波文庫

2013年06月22日 | 書評
デンマークの童話の父が語る創作童話集 156話 第43回

83) たいしたもの
5人兄弟の夢は世界に出てたいしたものになることです。1番上の兄は煉瓦つくりの職人になること、2番目の兄は煉瓦壁つくり工から親方になること、3番目の兄は建築技師になること、4番目の兄は建築設計(都市設計)のデザイナーになること、末弟はすべてを評価する評論家になることでした。煉瓦を作るだけの仕事はたいしたものとは思っていませんでした。5人兄弟はそれぞれ努力して望み通りのひとかどのものになりました。そして5番目の末弟は天国へ召されて天国へ入る門の前でみすぼらしいおばあさんと一緒になりました。このおばあさんは堤防小屋に住んでいましたが、1番上の兄の作った煉瓦のくずを分けてもらって雨風を凌いでいましたが、ある日空のかなたに黒い雲を見て、津波が来ると直感し浜辺で働く人の教えるためにわらに火をつけて自分に家を焼きました。その炎を見た浜辺の人が高台にあるおばあさんの家に駆けつけたため、津波からまぬがれました。天国の門の天使はおばあさんの行為をほめて天国へいれましたが、末弟の評論家は天国に入れませんでした。この話は末子成功譚の逆の末子失敗譚かもしれませんが、評論という仕事が理解されていなかった頃の話ですので、必ずしも失敗譚とは言い切れません。

84) 年とったカシワの木の最後の夢
人生を楽しんだかどうかは、寿命の長さでは推し量れないということを、365年間生きてきた柏の木と1日で死ぬカゲロウの命を比較して語っています。この柏の木が一番楽しい夢を見たのはちょうどクリスマスイブの夜のことです。この柏の木は楽しい夢を見ながら、周りの小さな命と喜びを分かち合えない孤独な心の、満たされない思いでいっぱいでした。ある夜猛烈な嵐で柏の老木はなぎ倒され一生を終えました。この木の365年の一生はカゲロウの一日の命と同じでした。
(つづく)


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