ブログ 「ごまめの歯軋り」

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文芸散歩 柳田国男著 「日本の昔話」(改訂版) (角川ソフィア文庫1960年5月)

2017年12月31日 | 書評
「日本の伝説」姉妹編、「むかしむかし、あるところに・・」で始まる全国で語り継がれた昔話106篇 第6回

41) 夢を見た息子
親も匙を投げるほどののら息子が夢を見ました。とてもいい夢だったので誰にも話しません。野原の一軒家に鬼婆がいました。鬼婆は息子の夢が聞きたくて空を飛べる団扇を交換しようとしましたが、息子はまず試してみると言って団扇を取って空を飛んで逃げました。海の上で疲れて小さな島に着陸しましたら、それはクジラの背中だったのです。鯨は夢を聞きたくて、刺すと死ぬ針と、生き返る針と交換しようと言いました。息子は死ぬ針で鯨を殺し、ある城下町に降りました。城下町ではお姫様が亡くなって悲しみに沈んでいます。息子はお姫様を生き返らせることができると言って城に行き、生き返る針で刺すとお姫様が生き返り御殿様から大変なお金を戴き、両親と平和に暮らしました。

42) 寝太郎三助
朝から晩まで寝ている寝太郎三助が何を考えたのか、山に行き雉を捕まえてきました。その雉を抱えて、庄屋の家にゆき木の上に隠れて主人の帰るのを待ちました。そして主人に「寝太郎三助を婿に取らないと、三日以内に家が焼ける」といって、雉の尾に提灯を下げて飛ばしました。主人はきっと神様のお告げに違いないと思い込み、翌日寝太郎三助を婿にしてくれるよう頼みに行きました。こうして寝太郎は一生安楽に寝て暮らしました。

43) だんぶり長者
奥州では蜻蛉のことをだんぶりと言います。よく働く百姓でしたが、畑で一休みして寝ている時、女房が見ていますと蜻蛉がたくさんやってきて男の顔の周りを飛び回りました。男は起き上がっていい夢を見たといって岩の陰に行くと泉酒が流れ出していました。また山に行くと黄金が出てきたのでお金持ちになりました。それでだんぶり長者と呼ばれるようになりました。長者には美しい娘がいてさる高貴な方の妃になりました。

44) 藁しび長者
金持ちの家の隣に貧乏な男が住んでいました。貧乏な男は隣の家に行き金持ちの娘さんを嫁に欲しいと頼みましたが、金持ちは一本の藁しびを与えて、この藁しびを元手に千万長者に成ったら娘をやると言いました。後は連鎖反応のように藁しび→芭蕉の葉→味噌→剃刀→脇差→殿さまから大金を得ることができ、金持ちの娘を嫁にすることが出来ました。

45) 炭焼小五郎
豊後の真野長者は昔三重の内山に住む小五郎という貧しい炭焼きでした。そこに京都の清水の観音様のお告げであなたの嫁になるためといって美しい娘がやってきました。食べるものもないのでお断りをしたら、男に小判2枚を渡して町で食料を買ってくるようにといいます。途中の池のおしどりが二羽いたので、小判2枚を投げても当たりませんでした。男がしおしお家に帰ってくると娘はびっくりしてあれは小判というもので石ではない、あれで食料ならかなりのものが買えたのにと残念がりました。小五郎はあんなものなら裏山にころがっているといいます。つまり小五郎は小判や金の価値を全く知らなかったのです。そして二人は裏山に行き金塊を拾って小屋に入れ、おお金持ちになったそうです。観音信仰と金の価値のお話です。

46) 金の椿
気の短い殿さまがいました。宴会が夜遅くまで続いたので奥方は思わずあくびをしました。すると殿さまは怒って奥方を島流しにしました。その時お腹にいた子供が島で生まれ12歳になった時、島流しの話を聞いて、殿さまに談判をするため城に往きました。山に咲く椿を手にもって、もし絶対にあくびをしな人がいたらこの木は金の椿になると言ったところ、殿様は笑ってあくびをしない人がいるものかといいました。そこで1回あくびをしたばかりに島流しにあった奥方の話をすると、殿さまは自分の非を悟りました。

47) 鶯姫
かぐや姫のお話です。駿河の竹取の翁が竹林に入って、鶯の巣に光り輝く卵を見つけました。卵を持ち帰って卵からお姫様が生まれました。光輝くゆえに「かぐや姫」と名付けました。後はかぐや姫の話と全く同じです。

48) 瓜子姫
むかしむかし爺と婆がありました。爺は山へ芝刈りに、婆は川に洗濯をしました。(出だしは桃太郎の話と同じです) 川上から瓜が一つ流れてきました。瓜を拾って帰って割りますと中から瓜子姫が出て来ました。大事に育てて大きくなったので、鎮守様のお祭りに出かける籠を求めに町へゆきました。瓜子姫は機を織っていますと、天邪鬼が入ってきて瓜子姫を裏の柿の木に縛り着物を奪って瓜子姫に成りすまして機を織っていました。そこへ爺と婆が籠を買って帰ってくると、天邪鬼はさっそく籠に乗り込もうとしました。すると裏で「瓜子を載せないで、天邪鬼ばかり載せる」と言って泣く瓜子の声が聞こえました。気が付いた爺は鎌をもっ天邪鬼の首を切り落とし、黍畑に捨てました。吉備の茎が赤いのはその血のせいです。

49) 竹の子童子
桶屋の三吉という小僧がいました。樋に使う竹を切り出しに裏の竹山に入りました。するとさんちゃん、さんちゃんと呼ぶ声が竹の中からしました。竹を切ると中から5寸ばかりの男の子が出て来ました。悪い竹につかまって天に帰れなくなった竹の子童子といい、年は1234歳だといます。お礼に三ちゃんの願い事を聞いてくれるというので、三吉は侍にしてもらい武者修行に出かけました。

50) 米袋粟袋
シンデレラの継母物語です。姉は米袋と言い母親はなくなりました。妹は粟袋といい継母の子です。継母は姉を憎みました。山に栗を拾いにゆくとき、姉には腐った古叺を持たせ、妹には新しいこだすを持たせました。妹の方はすぐ一杯になりましたが、姉の方は袋から落ちていつまでも一杯になりません。一人山に取り残された姉は川に降りて水を飲もうとすると、一羽の小鳥が現れ、私はお前のお母さんだったといい、晴れ着の小袖と葵の笛と新しいこだすを娘に与えました。あたらしいこだすを使って栗を一杯集めて持って帰りました。隣の村のお祭りには貰った小袖を出して着て笛を吹て出かけました。村の人たちの評判の娘となりました。姉妹の器量の違いは一目瞭然で、姉は嫁に貰われて幸せになりました。妹は荷車に載せて「嫁はいらんかね」と売り歩くうちに転げて妹は田螺になり、継母は堰貝になったそうです

(つづく)


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