ブログ 「ごまめの歯軋り」

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文芸散歩 柳田国男 「毎日の言葉」 角川ソフィア文庫

2018年05月07日 | 書評
方言の比較から日常の語り言葉の語源を説く、柳田民俗学の知の所産 第14回 最終回

10) ボクとワタシ

本章は昭和21年5月「赤とんぼ」に掲載された文章です。「ボク」という代名詞は、人が自分の事をへりくだっていう言葉です。バ行の濁音はあまり好まれないし、「ボク」は本当は良い言葉ではなかった。九州と四国では「ボク」とは一般によくない事をさします。馬鹿とほとんど同じ意味でした。これに当てた漢字は「僕」はしもべ(下男、召使い)という奴隷言葉です。香川県では「ボッコ」といい、ボッコに付ける薬はないという言い方があります。中世の「オコ」が語源ではないかと思われる。京阪地方では馬鹿に大きいという意味で「ボコイ」、「ボッコウ」などという。「ボク」は男性に対して用い、女には「ショウ(妾)」を用いた時期もあった。「ボク」を用いない言い方では、「ワ」→「ワレ」→「オレ」、「オラ」→「ワタクシ」、「ワタシ」、「自分」の順に上品になってゆきました。砕けた言い方には「ワテ」、「アタイ」、「ウチ」、「ワシ」という方言があります。いまでは「ボク」という代名詞は児童語(幼児語)になっています。言葉の変遷による分化には二通りの方向があります。①は今までのものをなるべく保存しておいて、別に普段着のようなものをこしらえる。②言葉の形はそのままにして、意味合いが下に降りて来る方法である。敬語から普段語に格下げするのである。

(完)
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