ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 森岡孝二著 「雇用身分社会」 (岩波新書 2015年10月)

2016年11月28日 | 書評
労働条件の底が抜け、企業の最も都合のいい奴隷的労働市場となり、格差が身分に固定される時代にしていいのか 第11回 最終回

5) 政府の雇用政策とまともな働き方とは (その2)

現代日本の相対的貧困率(可処分所得が中央値の半分に満たない人口の占める割合)は1991年で13.5%であったが10年後の2012ねんには16%に拡大している。相対的貧困率をOECD諸国と比較すると、日本とアメリカが肩を並べて13%代と高いし、税や公的給付による貧困の改善率が先進国の中でも際立って低い。日本は先進国の中では一番貧困で、政府の救助の手もないと言える。これは日本の所得再配分政策が貧しいからに他ならない。失業者は2009年に210万人に達したが、失業給付金を受けたのは23%に過ぎず、77%は給付が受けられなかった。失業保険未加入率は57%で、かつ6か月以上保険を払うという給付要件を満たさなかったからである。公務員はいい生活をしているという「公務員パッシング」が2000年以来の新自由主義の旋風の中で巻き起こった。しかし公務員の実態をよく見るとそんなことはなく「国家公務員の2割削減」は実行され、国家公務員数は2000年度末で約84万人であったが、2010年度には約30万人に減少している。これは独立行政法人、国立大学法人、道路公団や郵政などの特殊法人、林野事業職員など外部に付け替えたにすぎないという批判があるが、2010年国家公務員の給与実態調査では大卒男性で、国公の月給は38万円、民間企業は39万円で大差はない。人事院勧告モデル給では40歳男子4人家族の年俸は2001年で617万円、2010年で513万円と104万円も減給されてきた。失われた20年のデフレの原因は労働者の賃金の引き下げであることは明白である。デフレ脱却のために労働者の賃上げを政府が言い出さざるを得なかった。経済再生の犠牲となった労働者の購買力が減退し、企業は投資と生産を縮小せざるを得なかったからである。国でも地方でも公務員が大量に非正規労働者に置き換えられている。一般国家公務員職員総数は約41万人であるが、非常勤職員は14万人で34%を占める。自治体の非正規職員は全国で60万人になり、全体の三割になると推定されている。公務員の定数削減は労働者の雇用問題だけではなく、公的サービスの低下など住民生活の基盤も危うくなっている。生活保護世帯基準の切り下げと逆累進課税である消費税率アップは全国生活保護利用者217万人の生活を苦しめている。最後にまともな働き方の提案については、森岡孝二著 「就職とは何か」 (岩波新書 2011年)に詳しいので省略する。

(完)
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