ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート ニュートン著 鳥尾永康訳 「光学」 (岩波文庫)

2016年11月06日 | 書評
太陽の白色光が屈折率を異にする色光の複合であることを発見した「ニュートンの光学」の集大成 第4回

2) 光の粒子(光子)

前章で光のガラス面での部分反射を一例に取り、確率振幅という手法を説明した。第2章では同じ原則で鏡面反射、回折、屈折、レンズ集光、透過、直進といった光子の振る舞いを説明する。これらの結果は驚くべきもので、今までのニュートン光学の見方をすっかり変えることは間違いない。しかしニュートン光学の教えるところは別に間違っているわけではなく、今もそのまま使って計算できるのであるが(近似的には正しい結果を与えてくれる)、部分的には説明不可能という点があるだけのことである。鏡面反射、回折格子、屈折、不確定性原理、レンズ集光、透過(多段連続事象)、独立事象といった事象説明する。

鏡面反射: ニュートン光学は鏡面での反射は、入射角と反射角が等しい時が一番短距離であるといいます。いわゆる鏡面に対する観測点の虚点を考えれば光源と虚点を結び、幾何学的に鏡面にぶつかるところが最短距離の入射点をなし、入射角と反射角が等しいことが証明できます。ところが光源から光は四方八方に拡散しますので、狙いを定めて光束が入射点をめがけて進むと考える方が滑稽です。しかも最短距離を計算しながら進むとは不可能です。そこで光源Sより発した光が鏡面のすべての点の到達し反射して光電子倍増管Pに至る道を考慮する。鏡面を等間隔のに分割し、各点のS→Pの長さ(光の時間)は真ん中でフラットになる凹曲線を描く。→を頭と尻で結んでゆくと大体C点からK点までが最終矢印に寄与している。それ以外の離れた点からの光は打ち消し合っているとみられる。最短時間の経路とは入射角と反射角が等しい点であることは幾何学からわかる。矢印が同じ方向を向いているのは、矢印の表す各径路を光子が通過する時間がほぼ同じだからです。此の光路周辺の光は重なって強めあいます。こうしてQEDは鏡の中央が光の反射に関して大切な部分であり、周辺の部分の反射は結局打ち消し合い事になる多数の矢印を足しているだけになります。
回折格子: 反射鏡面を等間隔に分割し、分画面を一つ置きに削除した鏡面を考えましょう。反射面のある分画での矢印は大体同じ方向で、削除した部分では反対方向の寄与がありません。その繰り返しですので、入射角を変えるとある方向への反射光が非常に強くなります。この原理を回折格子といいますが、光ではなくX線を使い、入射角をスキャンしながら反射光をフィルム上に焼き付けます。その干渉縞を解析して結晶の格子の幅や傾きを計算する。虹もこの原理です。これは分光という原理ですが、見る角度によって空気中の水分によって屈折した色(分光)が強められることです。こうして鏡の中央部だけでなく全面からの反射があることを考慮することに意義があります。それはある事象の起り方一つ一つに振幅(矢印)があるということで、矢印を全部加えなければならないということです。
屈折: 光の水面での屈折を示します。光電子倍増管は水中Dにあり、光源Sからのすべての光線を考えます。水中では光の進む速さが遅くなりますので、Dに達する時間凹曲線が一番低いところ所要時間が一番短いという光線です。その水面への突入点は光源Sから検知器Dを結ぶ直線(最短距離)が水面にぶつかるところより少し右にあります。空気と水と言った媒質の光学特性によって決定されます。蜃気楼(逃げ水)という現象は、地表と空気の温度差があるとき、空の景色が入射して地表空気で屈折した光を見ていることです。地表を見ているのではなく上空の揺れ動く光を見ているのです。
直進性(不確定性原理): 均質な媒質の中を光が通るとき、必ずしも光は直進するわけではありません。幅のない1直線の光だけでは振幅が足りません。光源から検出器に達する確率が足りません。その近くのほとんどまっすぐな経路の光を寄せ集めて一定の確率が必要なのです。これを光束といいます。光源に絞りをつけて開閉度を変えてみましょう。開度が十分にあるときは直進線の周りの光束を集めて中心部は強い光を検出し、周辺部の光は打ち消し合って検出されません。つぎに絞りを十分絞りわずかな経路の光しか通れないようにすると、弱いですが周辺部の光が中心部の光と同じ位に光ります。これは光量(経路の数)が少なすぎて、打ち消し合うほどの矢印がないからです。時間的な差もなくなるので最終矢印(確率振幅)が出てくるのです。光が遮蔽物のどこを通るかということと、通った後どこへゆくかということは予測できないという意味で「不確定性原理」という恐ろしい名前が与えられました。確率の概念を使えば「不確定性原理」などは考えなくてもいいのです。光の直進性に対して、光の周辺部の「回り込み現象」ともいいます。昔は波動論で説明されていました。光が直進するという言い方は、身近な世界で起こる現象の近似に過ぎません。
凸レンズの集光: 光は媒質の中を通るとき空中(真空という方が正確です)よりも速度が落ちます。巧みに研磨された曲面を持つガラスを考えましょう。光源Sから検知器Pまでにかかる時間がすべての光線に対して同じように設計された曲率を有するレンズを考えているのです。そこでは所要時間は同じですので、矢印は単純の加算され最終矢印の一直線となり振幅は途轍もなく大きくなります。これを凸レンズの集光作用と言います。ところが光は波数によって波長が異なりますので、所要時間に差が出てきます。これを色収差と言います。
透過(連続事象の確率の足し算): ガラス板を通過する光の事象を考えよう。連続事象の確率の足し算となります。第1:空気中(回転のみ短縮なし) 第2:ガラス第1面での反射と透過(短縮0.98) 第3:ガラス中の通過(回転のみ短縮なし)、第4:ガラス第2面での反射と透過(短縮0.98)、第5:空気中(回転のみ短縮なし)の通過という5段階のステップを考えます。(ガラス第1面での反射、ガラス第2面での反射をも考えると10ステップになるが、ステップごとの矢印の回転と短縮を考える。繁雑になるのでここでは省略する) つまり透過の確率はは0.98×0.98=0.96となるがそれは平均であって、反射光は0-16%であるので透過率は100%-84%である。ここで回転は加えるもの、確率は乗じるものである。
独立事象(ハンブリ―・ブラウン・トウィス効果):  2つの光源と検出器があるケースを考える。独立した事象がいくつか付随的に含まれる場合にも矢印は乗じる必要があります。光は全方位に拡散するので光強度は球の表面積4πr2で割ることになります。すなわちある距離を透過する光の量はその距離の2乗に反比例することです。XからA(YからB)へゆく光の振幅を0.5とすると、XからB(YからA)の振幅は0.5である二つの事象は独立して起る。この2つの事象の光路差によっては事象の確率は打ち消し合ったり強めあったりする。この現象は「ハンブリ―・ブラウン・トウィス効果」と言われ、宇宙の遠くにある電波源が一つか二つかを判別するために使われる。

(つづく)
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