ブログ 「ごまめの歯軋り」

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和田純夫著  「プリンピキアを読むーニュートンはいかにして万有引力を証明したか」 (講談社ブルーバックス2009年)

2016年10月13日 | 書評
近代科学の出発点となった運動の法則や万有引力を確立したニュートンの金字塔 第8回

3)プリンキピアの命題(定理) 第Ⅰ編、第Ⅱ編、第Ⅲ編 (その1)

本論(第Ⅰ編、第Ⅱ編、第Ⅲ編)に入る前に、「定義」(力学用語集と絶対時空間)と「公理すなわち運動の法則」(ニュートンの運動の3法則)が導入されている。定義と公理はその人の考えであるから疑うべからざるの前提として論理展開を見てゆこう。
「定義集」
定義1: 物質の量すなわち「質量」とは、物質の密度と体積の積である。この量は、ニュートンが行った精密な「振子の実験」により、質量は重さに比例することがわかった。
(質量=密度×体積 ニュートンは物質の量とは基本的に原子の数であると考えていたようだ)
定義2: 運動の量すなわち「運動量」とは、速度と質量の積である。
定義3: 物質固有の力、すなわち「慣性」とは、静止しているか等速運動をしているかどうかにかかわらず、物体がその状態を保持しようとする一種の抵抗力である。物体は他の力が働いてその状態を変えようとする場合のみ、それに対抗してその力を発揮する。
定義4: 「物体に加えられた力」とは、それが静止しているか等速直線運動しているかどうかにかかわらず、その状態を変えようとするために働く作用である。その起源は衝突、圧力、向心力など多種多様である。
定義5: 「向心力」とは、物体を中心となる一点に向かって引くあるいは押すちからである。
(向心力の例として重力、磁力、惑星を公転させる力をあげ、月が地球の周りを回るには、月の速度とこの力の大きさが適切なものであるからだという)
定義6: 「向心力の絶対値」とは、力の原因の能力の大きさである。(F=GMm/r^2))
定義7: 「向心力の加速的量」とは、単位時間内の速度の変化に比例する量である。
(加速度=F/m=GM/r^2  地表上ではすべての物質は同じように加速される、いわゆる重力加速度gのこと)
定義8: 「向心力の動的量」とは、単位時間内の運動量の変化に比例する量である。

時間、空間、および運動という用語: 
絶対的なそして数学的な時間は、何物にも関わりなく一様に流れるものである。機械時計や日時計のような運動によって計られる時間は相対的な見かけの時間である。絶対空間は、いかなう事物にも無関係に、常に不動で、同じ形のものとして存在する。相対空間は絶対空間の中にあるが、可動であって、諸物体に対するその位置により決定される。例えば地球上の諸物の関係である。絶対運動は、絶対空間のなかの絶対的な場所から他の絶対的な場所への物体の移動である。相対運動とは、相対的な場所から他の相対的な場所への移動である。相対的な場所とは航行する船体内部において、船と共に動く。相対的静止とは船の中での物体の静止状態を言い、絶対的停止とは絶対空間での物体の停止である。同じことは地球に対する船の相対運動と、船の対する物体の相対運動の差し引きによって得られる。空間自体は我々の感覚では直接見ることはできない。したがって真に静止しているかどうかは、我々がその位置を観察できる領域の諸物体の関係からは決定できない。真の運動もそれを見かけのものから区別することは難しい。(ニュートンは原子論者であり、まず空間があり、そこに様々な原始や物体が配置されているという見方をした。地球上の運動は地球基準という。基準が動いているかどうかは物体と無関係に決められ、絶対的に静止している基準g存在するとニュートンは考えた。実際問題として本書の議論は絶対空間の存在は必要ない。それは運動の第1法則「慣性の法則」のためである。ニュートンは運動は相対的なものであるという注釈をつけている。現代物理では空間と時間の問題は、アインシュタインの相対性理論に基づいて理解されている。空間と時間を一体化したものを時空というが、相対性理論では絶対空間や絶対時間は否定するが、絶対時空と呼ばれる物は存在する)

(つづく)