ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

文芸散歩  金田鬼一訳 「グリム童話集」 岩波文庫(1-5冊)

2013年01月28日 | 書評
ドイツ民俗研究の宝庫「児童と家庭向けのおとぎばなし」 第26回

* KHM 36  「おぜんやご飯のしたく」と「金貨を生む騾馬」と「棍棒袋から出ろ」
 仕立て屋には三人の息子がいました。自宅用の乳を搾るため山羊を飼っていました。この山羊を草原へ連れ出して放牧することが息子達の仕事でした。山羊は息子らには腹いっぱい食べたと返事をしますが、家へ帰って仕立て屋が山羊に聞くと何も食べてないと返事をします。実に腹黒い山羊ですが、息子らは仕事をサボったということで勘当されましたが、仕立て屋が自分で山羊を放牧して山羊に聞くと家に帰ってからはいつも何も食っていないとうそをいうことに気がつきました。息子を追放した事を後悔して、こんどは山羊の頭を剃って山羊を追い出しました。長男は指物師のところで修行をし、年期奉公が終ったときお膳を貰いました。「お膳や、ご飯のしたく」ととなえると食事が出る重宝なものでした。この魔法のお膳を持って父の元へ帰る途中宿の主人に普通のお膳とすり替えられました。家に帰った長男は父に報告をして仕立て屋は親戚一同を集めて宴を催しましたが、そのお膳は何一つ出しませんでした。これでは面目丸つぶれです。長男は又働きに出ました。こういう話が次男、三男と続きますので省略しますが、次男は粉引き屋に行き、金貨をうむロバを得ますが、これも宿屋の主人にすりかえられます。三男は轆轤細工師のところに働きに出て嚢に入った棍棒を得ます。宿屋の主人はまたすりかえようと忍び込みますが気がつかれて「棍棒嚢から出ろ」と命令されると、宿屋の主人をこっぴどく打ちのめしました。こうして兄たちのお膳と金貨をうむロバを取り返し家に帰りました。こうして父と親戚の人々を喜ばしたという話です。あの腹黒い山羊はどうしたかというと、仕立て屋に追い出されて山には入り、そこを狐、熊、蜂の攻撃を受けて逃げ出したという落ちをつけています。悪い奴ら(魑魅魍魎のやから)がうじゃうじゃいる世の中で暮らすには、よほどの知恵が必要です。
(つづく)

読書ノート アダム・スミス著/大河内一男監訳 「国富論」 中公文庫(1-3冊)

2013年01月28日 | 書評
アダム・スミスが説く社会的生産力の構造と近代自由主義 第10回

第1篇 労働の生産力における改善、生産物の様々な階級の間に自然と分配される秩序
第3章 分業は市場の大きさによって制限される
分業を引き起こすのは交換する市場の力であり規模である。交換の規模や種類を拡大するのは世界の広さと交通の便のよさで決まる。水上交通は大量の物が運べるのであらゆる種類の労働生産物にとっての市場が全世界に開かれ、技術と産業の改善が始まる。従って文明がエジプト、インド、シナ、バビロニアの大河の諸都市で興ったのは故なしとはしない。
(つづく)


読書ノート アダム・スミス著/水田洋訳 「道徳感情論」 岩波文庫(2冊)

2013年01月28日 | 書評
自由平等な利己的個人の平和的共存の哲学 第13回

第3部 判断の基礎と義務の感覚(1)
第3部は以下の篇から成り立っている。
第1篇:賞賛または非難される意識について
第2編:我々の判断が他人の判断に影響される一般的諸規則について
第3編:良俗の一般的諸規則について
第4篇:義務の感覚が我々の行動の唯一の原理であることについて

(第1篇)
 自分自身の道徳感情の起源は、我々がともに暮らしている人々の明確な是認と尊敬を得たいという欲望が働くことによる。虚栄と嘘によって称賛をえたいだけでなく、称賛に値する事をしたという幸福感を喜ぶのである。中立的な観察者を心に描いて、彼に影響を与えるだろうすべての動機に思いを及ぼし、自分の行動や判断の基礎とするのである。
(つづく)


筑波子 月次絶句集 「暁 天」

2013年01月28日 | 漢詩・自由詩
残燈燭盡夢魂驚     残燈燭盡き 夢魂驚き

雲淡煙流月五更     雲淡く煙流れ 五更の月

天色戴紅蟠木影     天色紅を戴き 木影蟠り
 
裏庭侵暁起鶏聲     裏庭暁を侵して 鶏聲起る


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(韻:八庚 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)