ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

文芸散歩  金田鬼一訳 「グリム童話集」 岩波文庫(1-5冊)

2013年01月24日 | 書評
ドイツ民俗研究の宝庫「児童と家庭向けのおとぎばなし」 第22回

* KHM 30  しらみとのみ
なんかわけのわからない連鎖反応の歌の話である。日本でいえば「風が吹いて・・・・・桶屋が儲かる」式である。馬鹿馬鹿しいけどその歌を書いておこう。「しらみの小僧がやけどして、のみはなくなく、開きはきしむ、ほうきはお掃除、くるまはかけだす、こやしはもえる、立ち木はふるえる」というナンセンス歌謡である。
(つづく)

読書ノート アダム・スミス著/大河内一男監訳 「国富論」 中公文庫(1-3冊)

2013年01月24日 | 書評
アダム・スミスが説く社会的生産力の構造と近代自由主義 第6回

今なすべき事
「今なすべき事」とは、18世紀のイギリスがアメリカ植民地の独立問題においてなすべき、スミスの政策提案である。欧州ではさまざまな優遇政策によって特定の貿易と輸出向け製造業に資本が集中し、その他の部門が本来の水準から見て立ち遅れていた。優先や抑制自体を廃止して、本来の発展経路に自然に復帰する政策をスミスは「自然的自由の体系」と呼んだ。それは保護された産業部門を徐々に縮小させ、他の産業部門を徐々に拡張させることにより、すべての産業部門を完全に自由で適正な均衡に向って、しだいに復帰させる事が出来る唯一の方策だと考えた。ところが「体系の人」といわれる統治者は、しばしば拙速に計画図にそって実行しようとする。社会改革で肝要な事はゆっくり行う事である。改革に対応する人々の摩擦と混乱を時間をかけて解消する事である。そして最期にスミスはアメリカ植民地の独立問題で、税負担と代表選出をセットで認めてアメリカをイギリスに州として統合するか、アメリカの独立を認め分離するかを提案した。経済的には前者の統合案で十分イギリスの目的は達せられるが、政治的には結局後者の分離案となった。スミスは「国富論」をアメリカ独立の前1776年に書き上げ、イギリスは1783年パリ条約でアメリカ独立を承認した。これによってイギリスがアメリカ植民地維持のための軍事的負担から自らを解放し、将来の計画を身の丈にあったものにする事ができたという。
(つづく)

読書ノート アダム・スミス著/水田洋訳 「道徳感情論」 岩波文庫(2冊)

2013年01月24日 | 書評
自由平等な利己的個人の平和的共存の哲学 第9回

第2部 報償と処罰の対象 (1)
第2部は以下の篇から成り立っている。
第1篇:良いことと悪いことの感覚について
第2篇:正義と慈恵について
第3篇:良いことと悪いことに与える偶然性の影響
(第1篇)
 人間の行為と行動に帰せられる資質には、行為の適合性と程度とは別に、報償に価する資質と処罰に価する資質がある。報償を与える感情は感謝であり、処罰を与える感情は憤慨である。憤慨は憎悪と嫌悪とはまったく別の感情である。感謝と憤慨の正当な対象とは、すべての利害関係のない傍観者がついてゆけるとき正当と思われ是認されるのである。ある人が他の人によって抑圧され侵害されるのを我々が見るとき、受難者の困苦に対して感じる同感とは加害者への憤慨となる。我々が行為者の意向に同感できなければ、つねに行為者の動機に適当性がないと感じ、恩恵を受けても感謝の念には入り込めない。逆に行為者の動機が是認されるものであるなら、受難者の憤慨には同感がもてないものである。行為が価値あるもの(良いこと)と思う感覚には、行為者の感情への同感か恩恵を受ける人の感謝への間接的同感がなければならない。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「大 寒」

2013年01月24日 | 漢詩・自由詩
東風料峭動寒香     東風料峭 寒香動き

白雪堆堆帯夕陽     白雪堆堆 夕陽を帯ぶ

駭目枝垂梅影痩     目を駭し枝垂れ 梅影痩せ
 
驚心断腸雁聲長     心を驚し断腸 雁聲長し


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(韻:七陽 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)