ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 安西祐一郎著 「心と脳-認知科学入門」 岩波新書

2012年07月28日 | 書評
心のはたらきを情報科学の目から見ると 第9回

2)認知科学の歩みー学説年代史(4)
③1970年代ー発展 (2)
知識をどのように表現するかという問題については、ミンスキーの概念処理構造「フレーム」や手続きの総合という「エージェント」の超並立処理を考えた。しかしグーグルの知識検索システムはこれらの知識構造論とは無縁の世界である。記憶を分類したさきがけは、心理学者のタルヴィングらが「エピソード記憶」と「意味記憶」の区分を提唱したことに始まる。さらに「宣言的記憶」、「手続き記憶」が別々の記憶である事を主張した。どれだけ強く長期記憶に保持されるかは、記憶するときにどの程度意味を取ったかによるとする、クレイクとロックハートは「処理水準理論」を提唱した。そして想起するときには意識下の処理が深く関与している。1970年代になって心の中に生成されるイメージの情報表現がアナログ的なものか、それとも記号的なものかという「イメージ論争」が起きた。シェパードらは「メンタルローテーション」(図形を心の中で回転させる)が働くことを主張した。ギプソンらは、心や脳のはたらきが個人と環境地の関係のなかにあるという「アフォーダンス理論」を提唱した。意志決定の研究者サイモンとニューウエルは「限定された合理性」を基に考え、発見的探索、手段-目標分析モデル、記憶の判別木モデルを提唱した。かれらはコンピュータシュミレーションによって、情報モデルを考えた思考研究の新しい方法論を提示した。思考の罠(バイアス)と呼ばれる失敗がある。「一事が万事」、「ステレオタイプ」といった短絡的思考の事である。なぜ思考が非論理的な失敗をするかをゲントナーやホルヨークらが研究した。子供の心の発達と情報処理の研究では、ピアジェの「発達段階説」の教育論が主流であったが、新ピアジェ学派はさまざまな心のはたらきの相互作用によって個々の人間で発達が異なるという修正をおこなった。こうして認知科学という言葉が英国のロンゲット=ヒギンズ卿によって提唱されたのは1973年のことであった。数理科学、言語学、心理学、生理学の諸学問分野が総合的にかかわる領域をいう。
(つづく)

環境書評 守田優 著「地下水は語るー見えない資源の危機」 岩波新書

2012年07月28日 | 書評
地下水の枯渇、地盤沈下の実態、湧水の運命 第11回

3)地下構造物と地下水環境 (2)
 地下水位は著しく低下した1970年代多くの地下建造物が建設された。例えば上野地下の新幹線駅は1975年に着工され、当時の地下水は-38メートルで、地下駅底面よりなお8メートル下であった。ところが地下水揚水規制で地下水面が上昇し2005年には駅底面より15メートルも上になった。そのため上向きの揚力を受け躯体の浮き上がりや漏水などの危険性が生じた。重し(カウンターウエイト)を底面に載せ圧力に対抗させ、JR東京駅では下方の地層に構造物を固定する「永久グラウンド・アンカー方式」が採用された。上野駅では地下鉄湧き水を環境用水として渋谷川に流している。同じことは武蔵野線新小平駅で起きて、降雨時レール面が隆起したり湧水が噴出した。戦後地下構造物工法が「ジオフロント」を生み出し地下街・地下鉄道・地下道路の建設が進められた。この地下構造物が地下水の流れに影響を与える「地下水流動阻害」が1990年代に発生した。JR武蔵野西線の地下トンネル工事(地下15メートルで南北に5Km)により、線の西側で地下水位上昇が起り住宅の浸水、東側で地下水位の低下が起り井戸枯れが生じた。この地域のこの深さでは地下水は西から東に向かって流れる不圧地下水(自由流動水)である。地下水を意図的に堰き止める工法は「地下ダム」といわれるが、図らずしてこの地下鉄道工事が地下水の流れを堰き止めたのである。更に大都市では地下40メートル以下で利用する「大深度地下開発」が計画されている。2000年には「大深度地下公共使用のための特別措置法」ができた。環七地下調整池は地下40メ―トルにシールド工法を採用しているので不圧地下水の流れには影響しないと思われるが、被圧帯水層への影響は未知である。東京外郭環状道路は約85Kmの地下道路で,躯体底部深度は最大で70メートルになるといわれる。当然トンネルは不圧地下水の下を通るので問題なしとはいえない。環境評価やモニタリングが必要である。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「夏日読書」

2012年07月28日 | 漢詩・自由詩
抛書癒渇氷無功     書を抛ち渇を癒す 氷功無く

赤日消金如火攻     赤日金を消し 火攻めの如し

流汗病翁頻祈雨     汗を流す病翁 頻に雨を祈り

曲肱痩骨待清風     肱を曲げ痩骨 清風を待つ


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(韻:一東 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

CD 今日の一枚 「スタディ イン ブラウン」

2012年07月28日 | 音楽
ジャズ 「スタディ イン ブラウン」
クリフォード・ブラウン(トランペット)とマックス・ローチ(ドラム)
ADD 1955 Poligram

①チェロッキー ②ジャキー ③スインギン ④ランズエンド ⑤ジョーズド・ジレンマ ⑥サンデュ ⑦ガーギン・フォー・パーキン ⑧イフアイラヴアゲイン ⑨A列車で行こう