電力のグリーン化による脱原子力社会のシナリオ 第11回
1) 誰も止められないのか、日本の原発政策 (8)
はたして日本で永久埋設施設が可能であるかどうかに関しては、3つの難問が横たわっている。ひとつは2000年に「原子力発電環境整備機構NUMO」が出来たが、候補地問題は一向に進展していない。そうなると六ヵ所村か各原発敷地内かということが話題となり、立地各県では最終処分地になる事を懸念し始めている。第2の難問は日本特有の余剰プルトニウム問題である。日本は国際公約として原発の原料となるプルトニウムを持たない事を1991年に宣言している。ところが日本は2009年までに34トンのプルトニウムを保有し、そのうち24トンは六ヵ所村再処理工場内にある。プルサーマル(軽水炉でMOX燃料を使うこと)の実施が大幅に遅れ、その実施原子炉であった福島第1原発第3号炉が廃炉になる運命となったので、さらにプルサーマリ計画は頓挫した。第3の難問は、欧米では再処理を禁止しているが、経産省内の電力自由化論者は再処理凍結派だったが省内路線で敗れ再処理派が勝利したため政策転換が難しい。もし再処理工場がフル回転しなければサイクル施設は実質的に「原子炉発電のごみ捨て場」となるので、青森県は使用済み核燃料の搬入を拒否するかもしれない。将来軍事転用可能な権益を守りたいとする政府筋の思惑がありなお政策転換を難しくしている。非核保有国で、ウラン濃縮、再処理、高速増殖炉などの技術保有を認められているのは日本のみである。1969年の外交機密文書「わが国の外交政策大綱」(現在機密解除)には「当面核兵器は保有しない方針を採るが、核兵器製造の経済的・技術的ポテンシャルは常に保持するとともに、これに対する掣肘を受けないように配慮する」という。これが「核兵器を持ちたい」権力の真意であり、「六ヵ所村再処理工場は形だけでもいいから運転していることにしておけ」ということにある。北朝鮮やイランの思惑に近いものがある。これでは原子力行政は国家権力そのものであり、首相の首を何回飛ばしても、容易に政策転換はできない事を覚悟しなければならない。
(つづく)
1) 誰も止められないのか、日本の原発政策 (8)
はたして日本で永久埋設施設が可能であるかどうかに関しては、3つの難問が横たわっている。ひとつは2000年に「原子力発電環境整備機構NUMO」が出来たが、候補地問題は一向に進展していない。そうなると六ヵ所村か各原発敷地内かということが話題となり、立地各県では最終処分地になる事を懸念し始めている。第2の難問は日本特有の余剰プルトニウム問題である。日本は国際公約として原発の原料となるプルトニウムを持たない事を1991年に宣言している。ところが日本は2009年までに34トンのプルトニウムを保有し、そのうち24トンは六ヵ所村再処理工場内にある。プルサーマル(軽水炉でMOX燃料を使うこと)の実施が大幅に遅れ、その実施原子炉であった福島第1原発第3号炉が廃炉になる運命となったので、さらにプルサーマリ計画は頓挫した。第3の難問は、欧米では再処理を禁止しているが、経産省内の電力自由化論者は再処理凍結派だったが省内路線で敗れ再処理派が勝利したため政策転換が難しい。もし再処理工場がフル回転しなければサイクル施設は実質的に「原子炉発電のごみ捨て場」となるので、青森県は使用済み核燃料の搬入を拒否するかもしれない。将来軍事転用可能な権益を守りたいとする政府筋の思惑がありなお政策転換を難しくしている。非核保有国で、ウラン濃縮、再処理、高速増殖炉などの技術保有を認められているのは日本のみである。1969年の外交機密文書「わが国の外交政策大綱」(現在機密解除)には「当面核兵器は保有しない方針を採るが、核兵器製造の経済的・技術的ポテンシャルは常に保持するとともに、これに対する掣肘を受けないように配慮する」という。これが「核兵器を持ちたい」権力の真意であり、「六ヵ所村再処理工場は形だけでもいいから運転していることにしておけ」ということにある。北朝鮮やイランの思惑に近いものがある。これでは原子力行政は国家権力そのものであり、首相の首を何回飛ばしても、容易に政策転換はできない事を覚悟しなければならない。
(つづく)