ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 吉澤誠一郎著 「清朝と近代世界 19世紀」シリーズ中国近現代史 ① 岩波新書

2011年11月05日 | 書評
存亡の危機に直面した清朝の近代化への挑戦 第8回

2) 動乱の時代(1)

 マカオはポルトガルが根拠地としていたのでカトリック色が強かったが、アヘン戦争後イギリスに割譲された香港は、プロテスタントの布教の拠点となった。広州に生まれた洪秀全は科挙を目指して勉強していたが、1834年キリストの教えを信奉して江西省に入り、教団を結成した。1851年予言を信じて挙兵をはかり南京を都とする太平天国を建国した。1850年道光帝のあとを継いだ咸豊帝は、曾国藩に討伐を命じた。アメリカ人ウォードからイギリス人ゴードンを指揮官とする常勝軍の助けを借りて1864年南京を落とした。第2次アヘン戦争後の北京条約(1860年)で清朝に権益を認めさせた英仏は清朝と友好関係を維持し太平天国の乱の鎮圧に協力した。同時に安徽省には自衛武装勢力が結社し、なかでも捻軍は張楽行を盟主として太平天国と連携する気配もあったので、曾国藩は欽差大臣に任命され捻軍鎮圧に従事し、ついで李鴻章は淮軍を率いて捻軍鎮圧に成功し1860年代末には鎮定された。動乱は内陸各地でも起こっていた。雲南はもともとムスリム(回教)「回民」の多いところで、漢と回の対立は激しくなった。林則徐は雲南総督となって、漢回のトラブルの平定にあたったが、回民の杜文秀なる指導者が出て騒乱となった。1857年馬徳新らは昆明を攻めた。1867年杜文秀は昆明を攻めたが果たせず自殺した。清朝が何とかこれらの動乱を平定できたのは、1860年以降英仏と友好関係が維持できていたからである。清朝の軍費は海外貿易による財政的余裕があったからである。
(つづく)


読書ノート 岩波新書編集部編 「日本の近現代史をどうみるか」 岩波新書

2011年11月05日 | 書評
現代歴史学が問う、明治以来の日本の通史 第14回 最終回

第9 歴史はどこへ行くのか (吉見俊哉)

 1990年以降は55体制の崩壊である。バブル経済の崩壊と自民党単独政権の終りは阪神淡路大震災が象徴した。そして現れたのが金融工学に典型的に現れるグロバリゼーションである。製造業の経済から、情報サービス業に資本は移行した。製造業の海外流出と非正規雇用は急激な社会の不安定化を引き起こした。巨万の富を世界から略奪したアメリカの金融資本は、ブッシュの戦争政策で一時生き延びたが、2008年金融不安から世界不況を引き起こした。経済は金融の「虚構の全面化」となり、社会のリアリティが失われた。「歴史はどこへ行くのか」という問いの答えは無い。経済の一歩先が全く分らないのに世界がどこへ行くかという問いは不遜である。
(完)

文芸散歩  池田亀鑑校訂 「枕草子」 岩波文庫

2011年11月05日 | 書評
藤原道隆と中宮定子の全盛時代を回想する清少納言 第41回

[119] 「あはれなるもの・・・」 第1類
 胸にジーンとくるものとして、親孝行な子供、吉野の御嶽精進しているひと、想う人が心配しているが立派にお勤めを果たされたこと。これはあわれということではないが、御嶽精進のついでに話をする。右衛門の佐宣孝(藤原宣孝、筑前守、紫式部の夫)という男は、「かならずしも浄めの衣を着ろと御嶽さんが言っているわけでもない」と自分も息子もド派手な服装をして御嶽詣でをした。往路のひとはこんな姿は見たことがないといって驚いたそうだ。宣孝は4月に帰って6月に亡くなったので、さもありなんと人の噂が出た。(ここで清小納言は紫式部をばかにしている) 男も女も黒い喪服姿があわれ、9月末または10月1日に聞きつけたキリギリスの声、庭の浅茅に置いた露、朝夕川風に吹かれる竹の音、山里の雪、相思う若者が思いを遂げられないこと。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「秋夜聞雁」

2011年11月05日 | 漢詩・自由詩
空山獨夜響丁丁     空山獨夜 響丁丁
 
腸断高高過雁聲     腸断ち高高と 過雁の聲

銀漢遥応秋万里     銀漢遥に応ず 秋万里 

疏燈自照月三更     疏燈自と照す 月三更


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(韻:八庚 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)


CD 今日の一枚 ルイス・シュポール 「ヴァイオリン協奏曲集 3」

2011年11月05日 | 音楽
ルイス・シュポール 「ヴァイオリン協奏曲集 3」
①ヴァイオリン協奏曲 作品12 ②ヴァイオリン協奏曲第3番 作品7 ③ヴァイオリン協奏曲第6番 作品28
ヴァイオリン:ウルフ・ホーレッシャー
クリスチャン・フローリッヒ指揮 ベルリン放送管弦楽団
DDD 1992 cpo