ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

相撲協会は反社会勢力である。存在を許すべきでない。

2011年02月03日 | 時事問題
asahi.com 2011年2月3日7時0分
相撲でも賭けの疑い 野球賭博容疑の元力士
野球賭博の胴元をしたとして警視庁に賭博開帳図利幇助(とりほうじょ)容疑で逮捕された元幕下力士・山本俊作容疑者(35)が、大相撲の取組も賭けの対象にしていたことが関係者への取材でわかった。ただし、発覚した八百長疑惑に含まれる取組は賭けの対象にしていなかったという。
警視庁はメールの内容を精査するなどした上で、相撲賭博の立件の可否を検討する。

asahi.com 2011年2月2日15時0分
「すぐにはたかず途中で投げます」力士八百長メール発見 
大相撲の野球賭博事件の捜査で警視庁が力士らの携帯電話のメールを調べる中で、相撲の取組で八百長が行われていたことをうかがわせる内容のメールが見つかっていたことがわかった。昨年の3月場所と5月場所の取組で八百長が行われたとみられる内容で、勝ち星を数十万円で売買していたととれるメールも含まれているという。
 警察当局は、日本相撲協会の監督官庁の文部科学省に連絡。文科省は2日、協会に対し外部の有識者でつくる協会内の委員会で調査し、結果を報告するよう求めた。

asahi.com 2011年2月3日15時29分
NHK、福祉大相撲の開催中止 春場所中継「今後検討」
 大相撲の八百長問題で、NHKの松本正之会長は3日の記者会見で、11日に開催を予定していたNHK福祉大相撲を中止すると発表、「楽しみにしていたみなさまにおわびしたい」と述べた。
 春場所の中継については、「重大かつ遺憾な事態。放映するかしないかの問題以前に、相撲協会がどうされるかがまず問題」と話し、放映を中止するかどうかは「これから検討する」とした。

しごきによる力士死亡事件、暴力団「谷町」事件、野球賭博事件、八百長事件、相撲賭博事件
と次から次へと不祥事が続く。相撲協会の自浄能力はもう信じられない。相撲界の不正事件を暴き、八百長がはっきりメールで証拠付けられたのは警察のお手柄。これまで週刊誌で出ていた黒い噂が真実であった。これに相撲賭博が加わったら、まさにインサイダー取引である。八百長関係者が賭博で儲けることは腐敗の極みである。相撲協会がここまで反社会的勢力に侵されていることがわかった。

公益法人取り消しではすまない。相撲協会をオームと同じく反社会勢力と見なして「観察の対象」とすべきではないか。

読書ノート モンテスキュー著 「ローマ人盛衰原因論」 岩波文庫

2011年02月03日 | 書評
共和制から帝政への移行が滅亡の原因 第2回

 本書は厳密な意味で歴史を書こうとしたのではない。モンテスキューの問題意識はフランス王朝時代に対する啓蒙思想の課題と堅く結びついている。「ヨーロッパにおける普遍的王国についての省察」においてモンテスキューが問題としたのは、同時代のヨーロッパにおける帝国形成の不可能性である。モンテスキューは、ローマが都市的共和制から軍事的拡大により版図を広げて帝国的支配を確立してゆくにつれ、政治的自由を失い専制と隷属に陥ってゆく過程をあぶりだそうとするのである。そして「権力欲を増し、一切を欲する」人間精神一般のありかたが考察の対象となる。ローマの帝政において皇帝を直接に決定する力を持っていたのは軍団であった。共和制以来絶えざる戦争によって拡大してきたローマはまさに軍人政治であった。帝国は4世紀に分裂して、西ローマ帝国は4百年、東ローマ帝国は1千年以上も続いた。帝国は膨張し、数多くの異民族を取り込み、東から、北からの異民族と対決しなければならなくなったことによって帝国は遠心力によって拡散消滅したようである。本書においてモンテスキューは18世紀当時ヨーロッパの帝国形成の危険性をプロイセンに見ている。しかしヨーロッパにおける商業と地球的航海圏の拡大により、諸国家間に平和的な関係構築の機運も期待している。ローマは本質的に商業国家ではなく、戦争と征服の精神に溢れた軍人国家である。それはモンテスキューの後にでたナポレオン的軍事的簒奪と征服国家である。モンテスキューが期待するところは、戦争と征服から商業的国家への移行のうちに新しい世界秩序の可能性を見たいというのが、フランス啓蒙思想の一側面であった。本書におけるキリスト教にたいするモンテスキューの取り扱いはいかにもおざなりで、ローマにとって周辺的事柄として軽く扱われている。ヨーロッパの中世の暗黒はキリスト教による俗世界の支配からきており、ここからの脱出が欧州近代化の中心的事項であったはずなのでちょっと不満が残るところである。
(つづく)

文藝散歩 江藤 淳著 「荷風散策ー紅茶のあとさき」 新潮文庫

2011年02月03日 | 書評
永井荷風の小説世界を時空間より読み解く 第12回

「浮沈」ー中産階級没落の時空間

 「女中のはなし」から昭和16年小説「浮沈」を書くまでの4年間、荷風は全く小説を書いていない。もっともその間オペラ台本「葛飾情話」、映画筋書き「浅草交響曲」というように浅草オペラ座の座付き作者然としていた。褥中小説「浮沈」は日米開戦の当日に起草された。「断腸亭日乗」昭和16年9月6日の「無題録」に荷風散人はこう記している。「今日わが国において革命の成立したことにより、定業なき愛国暴徒と栄達の道なかりし不平軍人が権力を掌握した。大正成金との闘争において勝利を収めた。荷風散人は「彼ら勝利者の陋劣なること、幕末西南雄藩の志士命じの権臣となり忽ち堕落した如き前例もあることなり」と軍部ファッシズムの低俗腐敗堕落を罵倒している。その根は2.26事変にあり、日々古風な風俗を破り、庶民と中流資産階級の生活を圧迫し、明治大正時代の西欧模倣文化すら弊履のごとく棄て去ったと荷風散人は批難した。小説「浮沈」の時代は昭和12年から昭和16年頃に置いた。小説の脱稿が昭和17年3月であるから当然の配慮である。時代はあの中産階級が徐々に没落していった一時期の東京の姿をとどめようとしたのである。荷風散人が父の権威としていくら反抗しても一歩もでなかった、あの住みやすい安楽な中産階級の生活は音もなく日1日と崩壊しつつあった時期である。

 「浮沈」において荷風はいつもの娼婦ではない、新しいタイプの女主人公さだ子を登場させている。栃木出身のさだ子は18の時に東京に出て、銀座の女給になったが、偶然幸運に恵まれ小日向水道町にある中流階級の良家の正妻になったが、4年足らずの生活で夫が病死し、夫の1周忌で離籍して栃木の実家に帰った。さだ子の姑の母はキリスト教の人道主義者でそこで彼女からかなりの教養を習得した。そこからさだ子の没落の人生が始まるのである。小説の舞台は浅草淡島神社、上野池の端である。向島の芸者屋の待合の帳簿つけから始まったが、すぐに向島の淫風になじめず、上野の喫茶店に勤める。上野駅でばったり出会った越智の市ヶ谷の屋敷に住むことになった。さだ子が上野に勤めるようになったのも、上野で喫茶店を営む蝶子に出会った浅草東武鉄道花川戸駅であった。このように駅が偶然の出会いを演出する小道具として使われた。そして風俗を象徴するのが「アパート」である。当時アパートは手軽な売春の場として使われていた。山の手のたたずまいからアパートへの変遷など中産階級は没落の度を早めるのであった。「中産階級没落して戦争始まる」とは今の政治についてあまりに当たっている言葉である。健全な中産階級があって安定していた社会が、分解して貧困化するときが政治的には戦争の時期に一致することは教訓として覚えておかなければなるまい。21世紀から支配階級(治者)はブッシュ・小泉政権よりむき出しの格差社会へ舵を切った。貧困化によって均一化された社会は鬱憤はらしから哀れにも独裁者の演出を必要とした。危険な戦争の匂いがする。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「節 分」

2011年02月03日 | 漢詩・自由詩
梅蕾和風動暗香     梅蕾和風 暗香を動し

節分暖日入新陽     節分暖日 新陽に入る

釣舟野渡波逾碧     釣舟の野渡 波逾々碧に
 
飛絮堤塘柳未黄     飛絮の堤塘 柳未だ黄ならず


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(韻:七陽 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

CD 今日の一枚 「ア・パガニーニ」ーパガニー二風に

2011年02月03日 | 音楽
「ア・パガニーニ」ーパガニー二風に
①ミルシテイン「パガニ二アーナ」 ②シュ二トケ「ア・パガニーニ」 
③エルンスト「練習曲第6番」 ④ロックバーグ「カプリース変奏曲」
ヴァイオリン:ギドン・クレメール 
DDD 1984 ドイチェ・グラモホン

パガニーニ(1782-1840)は音楽史上の評価は高くはないが、ヴァイオリンの魔神といわれた。本アルバムはパガニーニ風に(あるいはパガニーニを偲んでという意味)、エルンストを除いて現代作曲家が12音階系で作曲した。ミルシテイン(1904ロシア)、シュ二トケ(1934ロシア)、ロックバーグ(1918 アメリカ)らの曲を、これまたヴァイオリンの鬼才といわれるギドン・クレメールが演奏するプロフェッショナルな限界を探るアルバムとなった。