ブログ 「ごまめの歯軋り」

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美術散歩 朽木ゆり子著 「フェルメール全点踏破の旅」 集英社新書ビジュアル版

2008年09月04日 | 書評
17世紀オランダの風俗画家フェルメールの全作品 第36回 最終回(フェルメール展は上野の都立美術館で11月までやっています)

フェルメール絵画33: 「信仰の寓意」  米国 ニューヨーク メトロポリタン美術館

「信仰の寓意」は、フェルメールの絵の中では一番奇妙な絵である。 「マルタとマリアの家のキリスト」という宗教画が描かれて15-18年後、つまり1670年以降ということになる。フェルメール晩年になって、彼としては珍しく露骨に宗教的な寓意だらけの歴史画を書いた。持ち主は転々として、1928年フリードサムが30万ドルで落札した。アメリカの財力は凄まじくフェルメールの絵の価格を吊り上げたものである。光は左の厚手のカーテンに沿って入り込んでいる。この絵の小道具がいた
る所に転がっているのでご注意のほどを。胸に手を当てるしぐさは信仰を意味し、胸に信仰が宿すということである。青と白の衣裳は誠実と純潔を意味する。床に転がる石に踏み潰された蛇とリンゴは原罪を意味する。女性は地球儀を踏みつけているのは信仰が世界を支配するいう意味らしい。女が見上げる天井のガラス玉は広大な宇宙を映し出す能力、画中画はキリストの磔の図である。この絵と「聖女プラクセデス」には共通した点がある。それは大げさな身振りと十字架の存在である。オランダのカルビン派は正式な教会を持つ事さえ禁じられた。いわば隠れキリシタンのように自宅にこのような絵を飾るという需要もあったのだろうか。フェルメールは出来るだけ寓意の世界から脱却し、構図と光、色彩という要素で女性の心のうちを描こうとした。なのにこの絵では完全に寓意の世界に逆戻りしている。


CD 今日の一枚 バッハ「2,3声のインヴェンション」

2008年09月04日 | 音楽
バッハ「2声,3声のインヴェンション」BWV772-BWV801
ピアノ:アンドラーシュ・シフ 
DDD 1983 LONDON

インヴェンションとは創意工夫、楽想、素材を意味する。バッハが子供の音楽教育用に作った練習曲集であるが、端に指の練習と云うより、作曲の楽想をも学ぶ事も目的であった。30曲の小曲(1-2分)集である。旧ソ連のシッフがピアノ演奏する。