ブログ 「ごまめの歯軋り」

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牛乳と前立腺ガンリスク  何が本当? みんな嘘

2008年04月16日 | 時事問題
asahi.com 2008年04月16日11時50分
牛乳よく飲むと前立腺がん危険増? 厚労省調査
 牛乳やヨーグルトといった乳製品を多く摂取すると、前立腺がんになるリスクが上がる可能性があることが、厚生労働省研究班の調査でわかった。牛乳は大腸がんのリスクを下げるともいわれるため、適度な摂取量がどれくらいか、今後問題になりそうだ。
 乳製品に含まれる飽和脂肪酸が、前立腺がんにかかわる血中ホルモンの濃度を上げることなどが原因とみられる。世界がん研究基金と米がん研究所も昨年、乳製品などに含まれるカルシウムの大量摂取が前立腺がんリスクを「おそらく上げる」と報告した。
一方、牛乳は大腸がんリスクを「おそらく下げる」との報告があり、乳製品が血圧を下げるという研究もある。今回の調査をまとめた国立がんセンターの倉橋典絵・研究員は「乳製品を控えるべきかどうかを考えるには、さらに研究が必要」と話す。

疫学的研究ほどいい加減な物はない  母集団に何か別の因子が隠れているかもしれない 実験なしでデータだけをいじくるととんでもない結論がでてくる。 当面はどの説も信じないほうが賢明だと思う。

読書ノート 佐藤優著 「自壊する帝国」 新潮社

2008年04月16日 | 書評
元外務省情報分析官佐藤優がソ連邦崩壊の裏側を証言する  第6回


1990年12月シュワルナゼ外相が「独裁が近づいている」という警告をゴルバチョフに発して辞任した。共産党守旧派に押されゴルバチョフが独裁に走る事を警戒したものだった。1991年1月ついにリトアニアのビリニュスで「血の日曜日」事件が発生した。ソ連当局が市民数名を射殺したのである。この事件はソ連邦崩壊のプロセスにおける重要な転換点になった。たしかにヤナーエフ副大統領、クリュチコフKGB議長、ヤゾフ国防相は非常事態宣言を出してゴルバチョフ独裁を実現し体制の引き締めを目論んだようだが、当のゴルバチョフは動揺して1991年8月のゴルバチョフ監禁とクーデター未遂事件のような不徹底な動乱になった。1989年東欧ではベルリンの壁が崩壊し東西ドイツが統一され、チェコスロバキアではビロード革命が起きて反体制派作家のハベルが大統領になった。1990年代に入るとソ連ではもはや一党独裁では社会の活力を引き出せないことが分り、ロシアキリスト教民主運動や自由民主党、民主党など非共産主義政党の工作にKGBが関与した。これらの政党もビリニュスの「血の日曜日」事件以来共産党が求心力をなくしてゆく過程ですべて反共野党になった。これらの反共キリスト教や自由主義、保守主義を標榜する政党はじつは欧米から援助資金を貰うだけのインチキ政党に堕落してゆくのである。そこにボローシンという僧がエリツインに接近し、強い影響力を持ってゆく。

佐藤氏は怪僧ボローシンが権力に上り詰めてゆく姿を克明に描き出そうとする。ボローシンはロシア正教、中央アジアのアニミズム,日本の神道の自然崇拝的要素に関心を持ち、国家は国教を持たないと内側から崩れると考えていた。1989年のロシア人民代議員選挙に出て政治家の道に入った。1991年8月のクーデター未遂事件で権力を掌握したエリツイン大統領にたいしてボローシンは最高会議幹部会員になっていた。ボローシンは1992年ごろが権力の絶頂期であったが、1993年10月エリツイン大統領府と最高会議(ホワイトハウス)の対立は深刻化し、エリツインは憲法停止、議会解散をさけんで西欧諸国の支持を得、内乱の危機が発生した。大統領はホワイトハウスに大砲を打ち込み、ルッコイ副大統領、ハズブラートフ最高会議議長は降伏して内乱は回避された。これが「モスクワ騒擾事件」である。ボローシンも失脚し国家院宗教社会団体委員会事務局長となったが、その後政界から引退し、中央アジアのチェチェン分離派がイスラム教徒とテロに走るとなんとキリスト教からイスラム教に改宗した。変な怪僧ボローシンの顛末であるが、佐藤氏はエリツイン政権時代の裏側をこの怪僧ボローシンから情報を得ていた。

読書ノート 内山融著 「小泉政権」 中公新書

2008年04月16日 | 書評
小泉首相 改革の5年半 政権の功罪と歴史的意義 第13回

第四章 歴史的・理論的視座からの小泉政権 (1)

政治とは何かといえば、まず第一には「利益の政冶」であり、第二には「理念・アイデアの政冶」であろうか。物質的利益に最大にする複雑な連合(政党)や政策(企業の規制緩和)は前者であり一番分りやすいが、後者は直接的な物質的利益につながらなくとも中長期的に見ると制度の改革、属する勢力の拡大などによっても利益になる。結局はすべて利益につながる。戦後の対米外交関係から日本の政冶は四分する考えを永井陽之助が提出した。面白いので紹介する。対米同盟から自立を軸とし、もうひとつの軸は経済福祉を重視するか軍事を重視するかで分けると、日米同盟を重視し経済福祉を重視する戦後自民党の政治は「政治的リアリズム」と呼び、自立を重視し経済福祉を重視する立場は戦後野党の「非武装中立論」と呼び、日米同盟を重視し軍事を重視する最近の保守政治家や憲法改正を叫ぶ政治は「軍事的リアリズム」と呼び、自立と軍事を重視する北朝鮮並みの立場は極右ファシズムにつながる「日本的ゴーリズム」と呼ぶ。戦後の日本の政治は吉田首相以来、基本的には軍事は日米同盟で米国に依存し,その笠の下で経済的利益を最大にする道すなわち「政治的リアリズム」であった。経済成長期は日本型重商主義(護送船団方式)で、農業など脆弱なセクターを保護しつつ、ケインズ式財政出動で景気を調整する公共事業では利益共同体が形成された。1990年以降は日米構造協議で構造改革を要求され、グローバリゼーションの進展で国際的規格に日本社会が対応しなければならなくなった。又国際政治では米国の軍事覇権戦略に否応無く組み込まれ、逆にこれに便乗して自衛隊海外派遣などを積極化しようとする「軍事的リアリズム」が台頭した。小泉首相はこの新潮流の中でまずバブル崩壊後の金融企業再生を行い、金融関係では米国型グローバリゼーションの要求に押されて各種の規制緩和を行った。銀行金融界は最初かなりの痛みを伴った改革が行われ、財政再建では新自由主義的民営化を遂行した稀有な実行力の有る内閣であった。経済自由主義を掲げる小泉内閣に対して、格差是正などの中道左派的政策を掲げる民主党は(自民党の中にも存在する)基本的政治軸が一致している。

文芸散歩 「平家物語 」  佐藤謙三校註 角川古典文庫

2008年04月16日 | 書評

日本文学史上最大の叙事詩 勃興する武士、躍動する文章 第19回

無文沙汰

小松大臣は未来のことも悟る不思議な能力を持っていた。四月七日の夢に春日大明神の鳥居が入道相国の首を召し取ったり、その朝小松大臣は院へ参内する嫡男維盛に、大臣の葬儀に用いる無紋の太刀を授けた。これは小松の大臣が自分が死ぬことを悟って息子に葬儀用の太刀を渡したことになる。平家滅亡への通奏低音のように執拗にこのような話が繰り返されるのである。

燈籠
小松大臣重盛は滅罪善生の志深く、東山の麓に四十八間の精舎を建て、一間に一つの燈籠を掛けられた。毎月十四日十五日の両日一間に六人合計二百八十六人の尼衆に称名を唱えさせた。これよりこの大臣を燈籠の大臣という。

鐘渡
重盛大臣、この国に自分の後世を弔うだけでなく中国でも後世を弔って貰うための善根として、金三千五百両を用意して、妙典と云う船頭に五百両を渡して、「千両を育王山に、二千両を宗の帝にわたして、重盛の後世を弔ってくれるように」と依頼した。スケールの大きな善根を積んだと云う話で、とても真実ではない話が小松殿に捧げられているようだ。

自作漢詩 「梨 花」

2008年04月16日 | 漢詩・自由詩


東郊樹木雨餘     東郊の樹木 雨餘青く

煙渚春畦新草     煙渚の春畦 新草馨し

山郭梨園花淡淡     山郭の梨園 花は淡淡 

低昂燕子水冷      低昂す燕子 水は冷冷

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(赤い字は韻:九青  七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)