asahi.com 2007年06月22日15時50分
内部告発への対応を「検証」、と赤城農水相 ミンチ偽装
北海道苫小牧市の食品加工卸会社ミートホープ元役員からの偽牛ミンチ問題の内部告発情報が農林水産省と北海道庁との間で1年以上にわたり宙に浮いていた問題で、赤城農水相は22日の閣議後の会見で、改めて同省としては06年3月に道に関係文書を渡したとしたうえで、「適切な対応がなされていたかどうか、十分に検証して改善すべき点があれば必要な措置を講じるように指示した」と述べた。
同省によると、この問題を巡っては、北海道農政事務所に06年2月6日に元役員から内部告発があった。同省はミート社が道内だけで営業する業者で国の管轄ではないと判断、道庁に日本農林規格(JAS)法違反の疑義事案として文書を送ったと主張している。一方、道は「そのような事実はない」とし、見解が割れている。赤城農水相は「受けた情報についてJAS法、牛肉トレーサビリティー法に基づいて対処はした」と同省の対応に問題はなかったとの見方を示した。
赤城農相はJAS法とトレーサ法から北海道へ通報したとしている。道庁は知らないといっている。また官僚の窓口たらいまわしの責任回避が始まった。
官僚の言い逃れに付き合うと、「公益通報者保護法」の第10条と第11条の問題になる。ここで公益通報者保護法のあらましとおさらいをしておこう。
内部告発と公益通報
内部告発とは「内輪の人間が、外に向って、自らが属する組織の不正を告発する」ことである。それは次のようなプロセスからなる。
①組織の了解を得ないで ②そ組織ぐるみ、一部、或いはトップによる ③違法行為を中心とした不正行為に対する ④社員などの関係者による ⑤公共利益の擁護などの動機から ⑥情報提供によって ⑦行政機関やマスコミなどの外部へ不正を公表する
それに対して「公益通報者保護法」による「公益通報」と「内部告発」は何処が違うかというと、通報先が内部告発は直接外部へ持ち出すが、公益通報は内部通報、行政機関通報、マスコミなど外部通報の三段階に分け要件を厳しくしている。通報対象事実は内部告発は対象は何でもいいのだが、公益通報は413の法令違反にかぎる。脱税や政治資金は対象外である。通報者は内部告発は職員に限るわけではないが、公益通報が保護するのは労働者の通報のみである。通報者の保護は内部告発は一般法理で判断されてきたが、公益通報は通報労働者の解雇の無効、不利益な取り扱いの禁止となった。
公益通報制度によって、密告とか内部告発の暗いイメージを払拭し「公益通報」という明るい名称を与えた。会社の就業規則などによる不利益な取り扱いは禁止されたので、悪いことをする組織の内部規則を強要されることは無い。会社が「職場環境配慮義務」をはたさず、社会ルールとのコンプライアンスを欠くならば、公益を守るためやむなく行われる内部告発は公民としての義務の遂行であり、就業規則違反などの責任追及は許されない。
「公益通報者保護法」の内容
外国での内部告発保護法は、1998年イギリスの「公益公開法」、1989年アメリカの「内部通報者保護法」、2001年「サーベンス・オクススリー法」、2000年ニュージランドの「開示保護法」などに続いて日本では2006年4月「公益通報者保護法」が施行された。
第一条(目的):日本の法は内部告発の奨励や保護が目的というよりは、企業のコンプライアンス向上にあるといえる。これ以降企業では「企業行動綱領」などの作成が盛んになった。
第二条(定義):誰が保護されるのかは明確に労働者だけである(派遣労働も含む)。役員、下請事業者、取引先事業者は対象にならない。通報対象事実とは合計413の法律違反行為である。
第三条(解雇の無効):内部告発への報復行為である解雇権の乱用は裁判所でも無効判決であった。何処へ通報するのかに順位をつけ、労務提供先への内部通報、行政機関通報、マスコミなど外部通報の三段階に分け要件を厳しくしている。行政機関への通報には相当真実性が必要、マスコミへの通報には相当真実性に加えて解雇不利益を蒙るとか、証拠隠滅などの恐れ、告発をしないよう組織から要求されたとか、内部通報組織から20日を過ぎても返答がないとき、生命に危害が及ぶ恐れのときなどの用件が加わる。
第四条(労働者派遣契約の解除の無効):内部告発を契機に派遣労働者の契約を解除できない。
第五条(不利益取り扱いの禁止):降格、減給など、派遣労働者の交代要求
第六条(解釈規定)
第七条(一般職の国家公務員などの取り扱い)
第八条(他人の正当な利益の尊重):名誉毀損、陥れを目的とした通報は無効
第九条(是正措置などの通知)
第十条(行政機関が取るべき措置):必要な調査を行い、通報事実があるならば法令による措置をとる
第十一条(教示):監督権を有さない行政機関へ通報がなされたときは、正しい機関を教える
検証
もし農水省北海道農政事務所が日本農林規格(JAS)法違反の疑義事案として文書を北海道庁に送ったとするなら、一年間も何の対応も取られなかったのは摩訶不思議だ。道庁は受け取っていないとしている。おそらく農政事務所の言い逃れに過ぎない。まだ官僚の嘘つき体質は頑強に残っている。告発の届出先が適切でなければ行政機関は適切な機関を紹介しなければならないと第11条に書いてある。農水省がこの告発を受け取って農水省管轄でないと判断したなら、この告発者に道庁を紹介しなければ嘘である。道庁を紹介した事実はない。告発者は手間でも道庁へ赴かなければならないがその事実はない。農水省が受け取ったままである。つまり握りつぶしたのである。その間農政事務所がミートホープ社へ電話1本でも入れて事実を確認すれば、いくらミートホープ社がえげつない企業でもすばやく対応を取るはずである。ばれたら企業存続にかかわるからである。農政事務所は確認、調査を何もやっていないことは明白である。よって赤城農相の弁明は意味を成していない。官僚の嘘をオウム返したに過ぎない。
内部告発への対応を「検証」、と赤城農水相 ミンチ偽装
北海道苫小牧市の食品加工卸会社ミートホープ元役員からの偽牛ミンチ問題の内部告発情報が農林水産省と北海道庁との間で1年以上にわたり宙に浮いていた問題で、赤城農水相は22日の閣議後の会見で、改めて同省としては06年3月に道に関係文書を渡したとしたうえで、「適切な対応がなされていたかどうか、十分に検証して改善すべき点があれば必要な措置を講じるように指示した」と述べた。
同省によると、この問題を巡っては、北海道農政事務所に06年2月6日に元役員から内部告発があった。同省はミート社が道内だけで営業する業者で国の管轄ではないと判断、道庁に日本農林規格(JAS)法違反の疑義事案として文書を送ったと主張している。一方、道は「そのような事実はない」とし、見解が割れている。赤城農水相は「受けた情報についてJAS法、牛肉トレーサビリティー法に基づいて対処はした」と同省の対応に問題はなかったとの見方を示した。
赤城農相はJAS法とトレーサ法から北海道へ通報したとしている。道庁は知らないといっている。また官僚の窓口たらいまわしの責任回避が始まった。
官僚の言い逃れに付き合うと、「公益通報者保護法」の第10条と第11条の問題になる。ここで公益通報者保護法のあらましとおさらいをしておこう。
内部告発と公益通報
内部告発とは「内輪の人間が、外に向って、自らが属する組織の不正を告発する」ことである。それは次のようなプロセスからなる。
①組織の了解を得ないで ②そ組織ぐるみ、一部、或いはトップによる ③違法行為を中心とした不正行為に対する ④社員などの関係者による ⑤公共利益の擁護などの動機から ⑥情報提供によって ⑦行政機関やマスコミなどの外部へ不正を公表する
それに対して「公益通報者保護法」による「公益通報」と「内部告発」は何処が違うかというと、通報先が内部告発は直接外部へ持ち出すが、公益通報は内部通報、行政機関通報、マスコミなど外部通報の三段階に分け要件を厳しくしている。通報対象事実は内部告発は対象は何でもいいのだが、公益通報は413の法令違反にかぎる。脱税や政治資金は対象外である。通報者は内部告発は職員に限るわけではないが、公益通報が保護するのは労働者の通報のみである。通報者の保護は内部告発は一般法理で判断されてきたが、公益通報は通報労働者の解雇の無効、不利益な取り扱いの禁止となった。
公益通報制度によって、密告とか内部告発の暗いイメージを払拭し「公益通報」という明るい名称を与えた。会社の就業規則などによる不利益な取り扱いは禁止されたので、悪いことをする組織の内部規則を強要されることは無い。会社が「職場環境配慮義務」をはたさず、社会ルールとのコンプライアンスを欠くならば、公益を守るためやむなく行われる内部告発は公民としての義務の遂行であり、就業規則違反などの責任追及は許されない。
「公益通報者保護法」の内容
外国での内部告発保護法は、1998年イギリスの「公益公開法」、1989年アメリカの「内部通報者保護法」、2001年「サーベンス・オクススリー法」、2000年ニュージランドの「開示保護法」などに続いて日本では2006年4月「公益通報者保護法」が施行された。
第一条(目的):日本の法は内部告発の奨励や保護が目的というよりは、企業のコンプライアンス向上にあるといえる。これ以降企業では「企業行動綱領」などの作成が盛んになった。
第二条(定義):誰が保護されるのかは明確に労働者だけである(派遣労働も含む)。役員、下請事業者、取引先事業者は対象にならない。通報対象事実とは合計413の法律違反行為である。
第三条(解雇の無効):内部告発への報復行為である解雇権の乱用は裁判所でも無効判決であった。何処へ通報するのかに順位をつけ、労務提供先への内部通報、行政機関通報、マスコミなど外部通報の三段階に分け要件を厳しくしている。行政機関への通報には相当真実性が必要、マスコミへの通報には相当真実性に加えて解雇不利益を蒙るとか、証拠隠滅などの恐れ、告発をしないよう組織から要求されたとか、内部通報組織から20日を過ぎても返答がないとき、生命に危害が及ぶ恐れのときなどの用件が加わる。
第四条(労働者派遣契約の解除の無効):内部告発を契機に派遣労働者の契約を解除できない。
第五条(不利益取り扱いの禁止):降格、減給など、派遣労働者の交代要求
第六条(解釈規定)
第七条(一般職の国家公務員などの取り扱い)
第八条(他人の正当な利益の尊重):名誉毀損、陥れを目的とした通報は無効
第九条(是正措置などの通知)
第十条(行政機関が取るべき措置):必要な調査を行い、通報事実があるならば法令による措置をとる
第十一条(教示):監督権を有さない行政機関へ通報がなされたときは、正しい機関を教える
検証
もし農水省北海道農政事務所が日本農林規格(JAS)法違反の疑義事案として文書を北海道庁に送ったとするなら、一年間も何の対応も取られなかったのは摩訶不思議だ。道庁は受け取っていないとしている。おそらく農政事務所の言い逃れに過ぎない。まだ官僚の嘘つき体質は頑強に残っている。告発の届出先が適切でなければ行政機関は適切な機関を紹介しなければならないと第11条に書いてある。農水省がこの告発を受け取って農水省管轄でないと判断したなら、この告発者に道庁を紹介しなければ嘘である。道庁を紹介した事実はない。告発者は手間でも道庁へ赴かなければならないがその事実はない。農水省が受け取ったままである。つまり握りつぶしたのである。その間農政事務所がミートホープ社へ電話1本でも入れて事実を確認すれば、いくらミートホープ社がえげつない企業でもすばやく対応を取るはずである。ばれたら企業存続にかかわるからである。農政事務所は確認、調査を何もやっていないことは明白である。よって赤城農相の弁明は意味を成していない。官僚の嘘をオウム返したに過ぎない。