つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

完全な新シリーズ……だけど

2012-02-18 15:41:58 | 小説全般
さて、あ、茅田さん続いたなの第984回は、

タイトル:祝もものき事務所
著者:茅田砂胡
出版社:中央公論新社 C.NOVELS(初版:'10)

であります。

「デルフィニア戦記シリーズ」「スカーレット・ウィザードシリーズ」のキャラと世界観を長らく引っ張ってきた茅田さんですが、中央公論新社からの新刊ではようやくの新シリーズです。(後は角川スニーカーの「レディ・ガンナーシリーズ」、再販の「桐原家の人々シリーズ」くらいしかありません)
舞台は日本、ジャンルは……何なんでしょうね(^^;
分類するのがとても難しい作品です。

そのストーリーは、

『椿江利は、弁護士の雉名に紹介された事務所を訪れていた。
所長の百乃喜太朗(もものき たろう)と秘書の花祥院凰華(かしょういん おうか)のふたりだけの事務所で、探偵でもない何やらよくわからない事務所だった。
だが、江利はここに一縷の望みを託して来ていた。
弟の無実を証明してもらうために。

しかし、それは難しい注文だった。
弟である黄瀬隆は殺人の罪で捕まっており、なおかつアリバイはない、凶器はある、目撃者もいる、ついでに(強要されたと隆は言うが)自白供述調書にまでサインしている。
普通の弁護士なら無実を主張するのは到底無理、減刑を焦点に裁判で争うのが賢明と考えるしかないほどの状況であった。

もともとは警察職員で、探偵でもない百乃喜は、ついでに親の遺産で食っていけるだけの財産があることもあってか、仕事に対してやる気は皆無、刑事ですらなかったため調査能力なども皆無、弱気で根性すらもなしというダメ人間。
面倒くさい仕事と断ろうと思っていたのだが、秘書の凰華に押し切られる形で江利の依頼を受けることになった。

だが、何の能力もないダメ人間の百乃喜には何から取り掛かっていいのかすらわからない。
そこで江利に百乃喜を紹介した弁護士の雉名を始め、幼馴染の舞台役者の芳猿、女顔だけどそこそこ名の知れた格闘家の犬槇、ハッカーの才能のある鬼光に協力を依頼する。
一方の百乃喜は、凰華の最大の武器である人脈をもとに、黄瀬隆が勤めていた会社の社員から隆と被害者との関係について聞き込みをする。

聞き込みである程度の事情を知った百乃喜は、寄りたいところがあるという凰華と別れ、ひとり事務所へ帰ろうとしたのだが……。
ここでも百乃喜のダメっぷりが発揮される。
百乃喜は、重度の方向音痴だったのだ。

だが、それこそが百乃喜のはた迷惑ではあるが重要な特殊能力(?)でもあった。
方向音痴を遺憾なく発揮してたどり着いた場所は、西多摩郡嶽井町。辛うじて東京都内にある田舎町だが、この場所とそこに住む人々と江利たち姉弟にとって浅からぬ縁があった。
百乃喜の特殊能力を身をもって知っている雉名たち幼馴染は、嶽井町という地名を手がかりに、隆の無実を証明するために動き出す。』

犬も歩けば棒にあたる。
百乃喜が歩けば手がかり、または証拠に当たる。

そういう小説です。(どういう小説やねん!(笑))

それはさておき、一見覆りそうにない有罪確定の被告を無罪にするために奔走する「凰華や雉名たちのお話」と言ったところでしょうか。
百乃喜ははっきり言って活躍しません。
手がかりや証拠に「偶然」ぶち当たってしまうという特殊能力(?)を除けば、本当に役立たずなのでこいつが本当に主人公なのかと疑ってしまいたくなるくらいです(笑)
実際、出番は弁護士の雉名のほうが多いので、こっちのほうが主人公なんじゃないのかというくらいです。

ストーリーは江利の依頼を発端とする古い因習に囚われた人々とそれを打破しようとする江利たちのお話の部分、隆の無実を証明するための部分のふたつに分けられるでしょう。
それらが絡み合ってストーリーが進むわけですが……。

正直、説明がだらだら続くのに辟易しました。
まぁ、無実を証明するための調査なのですから、何がどうなっているのかの説明は必要不可欠なのですが、新たに判明した事実を説明していくのをただ単に積み上げていって、ストーリーが完結してしまった、という印象が強い。
事件はすでに起きているものなので、新たに発生するわけでもなく、そのため盛り上がりに欠けるし、地道な事実の積み重ねなので派手さもないし、著者自身あとがきで書いているとおり、地味~に話が流れていきます。

非常識を書かせたら天下一品の茅田さんなので、そういった部分は相変わらずおもしろく読ませてもらいましたが、逆に言えばそういう部分以外に見るべきところがなかったり……。
茅田さんのファンならば、らしい作品とは言えるので買いでしょうが、客観的にオススメできるかどうかと言えば疑問。

と言うわけで、総評としては及第と言ったところが妥当かな。


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