つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

骨董趣味はないけれど

2005-04-02 17:05:22 | マンガ(少女漫画)
さて、困ったときのマンガ頼みとは言わないけどの第123回は、

タイトル:雨柳堂夢咄 其ノ一~其ノ十
著者:波津彬子
出版社:朝日ソノラマ

であります。

店の入り口に大きな柳の木がある骨董屋「雨柳堂」
その店の孫である蓮、そして骨董を中心にして織りなす短編集。

と言えば聞こえはいいけど、主人公の蓮、いまふうに言うとサイコメトリストのような能力者。

骨董にまつわる精霊や幽霊、物の怪の類を見ることが出来る。
ついでに、その骨董にまつわる過去まで見ることが出来てしまう。
そうした骨董を介して、人間模様を描いていくわけだけど、1話1話はけっこう短い。

特に1巻からしばらくは、1話読み切りで、次へつながる話と言うのがない。
でもどちらかと言うとこういう作りのほうが好き。

途中、贋作師と焼き物などのつくろいをしている男装の少女との絡みで続き物っぽい話を作ってはいるけれど、やはり1話で完結している作品のほうがいいなぁ。

では、巻数も多いので、お気に入りの話をいくつか……。

雨柳堂夢咄其ノ一 「朝顔写し」
朝顔を育てるのが得意な兄を事故で亡くした妹の話。妹のほうもその事故に巻き込まれ下半身不随。
ここで出てくるのは骨董、ではなく、妹が持っていた兄の朝顔の鉢植え。

最初に妹のほうがまだ生前の兄に「しぼまない朝顔にしておくれ」という。
それが蓮を通じて着物の柄になる。
それと夢で出会った兄の言葉をようやく理解するラストがいい。最後の連の「とてもきれいですよ」というセリフに対して「そう、だって兄さんの朝顔だもの」のセリフもまたよし。

雨柳堂夢咄其ノ三 「京助氏の災難」
この話ではこの後、ちょくちょく出てくる医者見習いで、蓮とも顔なじみの書生の京助氏。
蓮が風邪を引いて寝ていると言うので薬を届けに来たはいいけど、うるさい監視人が寝込んだからと、見舞いと称してからかいに出てくる物の怪たち。
そんな物の怪に囲まれて寝ている蓮の部屋を見てしまってから起きる不可思議な出来事。

……と言うか、この京助氏、雨柳堂にある古硯に縁があって、物の怪たちが「もらってくれろ」と迫るわけだけど、何故かそのときの姿が蓮(笑)
泣き落としだの、色仕掛けだのと迫るんだけど、波津さんの絵だと、妙に似合ってしまう。

どちらかと言うとせつない話が多い中でほっと笑える話。
と言うか、この京助氏が絡むと笑える話になるので、其ノ六「月夜の恋人」や其ノ九「紫煙の夢」など、けっこう好きな話が多い。

雨柳堂夢咄其ノ五 「春の寺」
続き物のヒロインの男装の少女釉月が主人公の話で、あるお寺の話。
見覚えのある廃寺で出会った子供たちと尼僧との物語で、成仏できない子供たちを哀れみ、仏像の通力を借りて尼僧として子供たちの世話をしていたのが、蛙と言うのがよい。

雨柳堂夢咄其ノ八 「お嬢さまのお好み」
骨董収集を風流人の趣味だから女にはできないと言う兄を見返したい妹の話。

……うーむ、いくつか、なんて言っても、いくらでも出てくるからキリがない。

さて、では最後にひとつ。
各巻の最後にある「日々平安 波頭濤子先生の日常」
これだけの本があっても笑えていいのに(笑)



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