とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

ぺぺという犬

2011-03-10 22:52:00 | 日記
ぺぺという犬




 ぺぺという雌犬のことについて書きたい。・・・ぼつぼつこのブログの底に流れている物語の一つが見えてきたと思う。
 私は、この犬には土下座して謝りたい気持ちでいっぱいである。
 
 
 この犬は十年くらい前に死んだ。
 動物病院に通ったが、散歩のときに毒物を食べたため次第に体力が弱ってしまい、仕舞いには立つことさえできなくなった。
 ああ、申し訳ない。注意していれば避けられた事故である。ごめんなさい。

 お前は幼い頃私の車の後輪に飛び込んできて、接触して、ひどく鳴いたね。
 慌てて私は車に乗せて市内の動物病院に連れていった。
 「一晩様子を見ましょう」
 獣医はそういうと病院のケージの中にしまいこんだ。触診ではなんともないということだった。

 翌日帰りに迎えにいくと、「骨折ではありません。びっくりして大声で鳴いたんでしょう」
 医師はそういって、幼い犬を私に渡した。
 私は、元の場所にかえそうと思って車に乗せ、走り出したが、どうしてもそれができなかった。
 
 これも何かの縁だ。
 そう思って、家に連れてかえった。
 案の定、妻が反対した。犬、猫が大嫌いなのである。
 でも、事情を話してなんとか納得して貰った。

 それから十数年、我が家の一員にとして可愛がられた。
 小型犬に近い中型犬だったし、マメシバに似ているし、散歩していても、いつも注目されていた。

 それが、猫を飼いだしたころから次第に元気がなくなってきた。
 恐らく嫉妬していたのだろう。いつもクークー鳴いていた。

 散歩は妻が行うことが多くなった。
 私は猫に心を奪われていた。

 ペペの死。これは、自死だったも知れない。
 私は後でそう思うようになり、自分を責めだした。
 つらかった。

 許してくれ。

 そう呟いても、帰ってはこない。
 私はそれでも、引き続きそう言って謝っている。

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