とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

作品完売

2012-05-11 23:10:02 | 日記
作品完売



「ロジェ・ジュールダン夫人の肖像」アルベール・ベナール (1849年-1934年)

 アルベール・ベナールはパリ生まれ。父親も画家で、アングルの弟子であった。17歳でパリの国立美術学校に入学。1868年、19歳でサロン初入選。1874年、ローマ賞を受賞し、4年間のイタリア滞在を果たす。1879年以降、サロン出品は無審査の資格を持っていた。1914年、ローマのフランス・アカデミー院長、1922年、国立美術学校校長、1924年、アカデミー会員に選出された。レジオン・ドヌール勲章グラン=クロワ賞受章と、華々しい活躍をした画家である。
 この絵のモデルについて調べたが少しも分からなかった。全体に気品というか清々しい気負いを感じさせる名品である。顔を極端に小さく描き、ドレスをゆったり描いていて安定感を感じさせる構図である。ドレスの色彩も黄色と白の重なり具合がリアルで、目の前に佇んでいるような雰囲気を漂わせている。額に入れて飾れば部屋が急に明るくなるに違いない。とにかく輝いている女性像である。
 

 連休が明けて、新聞を手にした私は驚いた。二人の写真入りで二人展のことが大きく取り上げてあった。作品が完売したことも書いてあった。二人の経歴・作風の解説などは勿論だが、展示会を取り仕切った長洲画伯、そして陰で支えた冴子さんのことも紹介してあった。


 長柄さん、大成功でしたね。私は即座に電話した。

 ええっ、大成功でした。これで画壇デビューへの足掛かりが出来ました。

 次は独立展ですね。

 そうです。二人とも挑戦するでしょう。

 でも、気がかりなことが一つありますね。

 なんでしょう。

 家に帰ったお母さんのことです。

 どうして・・・。

 新聞ご覧になったでしょう。

 ええ、見ましたが・・・。

 冴子さんのことを大きく取り上げていましたね。

 ああ、そう言えば。

 そのことですよ。お母さん心配していらっしゃるんではと・・・。

 どうしてですか。

 いえね。これから画家として進んでいくと、長洲さんと冴子さんにどんどん近づいていくことになる訳でしょ。

 まあ、そうですが、母親はそんなことは割り切っていると思いますよ。力を借りることはいい気持ちではないと思いますが、娘との生活を取り戻した喜びの方がずっと大きいですよ。

 そうですかね。

 そうに決まってます。冴子さん、これからは京子の家からどんどん離れて行きます。それにいつまでも頼って描いていたらだめになることは京子も知っている筈です。

 そうですね。これからが真の実力を試される正念場ですね。

 そうです、そうです。・・・私は長柄さんの話を聞いていて大きな力が湧いてくるのを感じました。

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