とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

32 花娘

2015-06-15 15:28:56 | 日記





 「お父さん!! お父さん!!」

私は、ある朝、花りんの呼ぶ声に驚いて目を覚ましました。

 「ああ、花りん、どうしたの ?」

 「リス、リス、小さなリス」

 「ああ、リス。リスがどうかしたの ?」

 「私に、夜、よじ登ってきたの」

 「リスなら珍しくないけど・・・、しかし、夜行性だったかな・・・」

 「なにをそんなとぼけたことを言ってるの」

 「えっ、だから、どうしたの ?」

「いえね、一晩私のところで泊まって、・・・どうしてか、なにか居心地がよさそうで、それで、朝方なにか囁いたのよ」

 「どう言ったんだ ?」

「たしか、お姉さん、また、お邪魔してもいいですか、と・・・」

 「お姉さん ?」

「たしか、そう言ってた。・・・だからね、こんなところで良かったら、いつでもおいで、と言ったの。そしたら、急に下に飛んで降りて、・・・」

 「それで・・・」

 「女の子になってた。綺麗な花飾りを頭につけてた」

 「女の子 ? ・・・それ、もしかして・・・」

 「なによ。あの子、お父さん知っているの ?」

 「いや、し、しらない」

 「私は、・・・透視して見て、ぼやっと分かったような・・・」

 「なにが ?」

 「いえね。あの、さやかでは・・・、と」

 「さやか ?」

 「・・・みたいな。でも、よく分からない」

 「さやかは、だれかの生まれ変わりかも・・・」

 「だ、だれだ !!」

 「お父さんの子ども。・・・たしかにお姉さんと言ってた」

 「花飾りは・・・?」

 「そうねえ。あの森の姫神様にお仕えするしるし・・・」

 私は、そう聞いて、全身が感電したような気持ちになりました。そのころの私は、もう、全身に樹皮が出来ていて、ところどころ小さな木の芽が出ていましたが、それが、一瞬ブルッと震えたような気がしました。


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