「お父さん!! お父さん!!」
私は、ある朝、花りんの呼ぶ声に驚いて目を覚ましました。
「ああ、花りん、どうしたの ?」
「リス、リス、小さなリス」
「ああ、リス。リスがどうかしたの ?」
「私に、夜、よじ登ってきたの」
「リスなら珍しくないけど・・・、しかし、夜行性だったかな・・・」
「なにをそんなとぼけたことを言ってるの」
「えっ、だから、どうしたの ?」
「いえね、一晩私のところで泊まって、・・・どうしてか、なにか居心地がよさそうで、それで、朝方なにか囁いたのよ」
「どう言ったんだ ?」
「たしか、お姉さん、また、お邪魔してもいいですか、と・・・」
「お姉さん ?」
「たしか、そう言ってた。・・・だからね、こんなところで良かったら、いつでもおいで、と言ったの。そしたら、急に下に飛んで降りて、・・・」
「それで・・・」
「女の子になってた。綺麗な花飾りを頭につけてた」
「女の子 ? ・・・それ、もしかして・・・」
「なによ。あの子、お父さん知っているの ?」
「いや、し、しらない」
「私は、・・・透視して見て、ぼやっと分かったような・・・」
「なにが ?」
「いえね。あの、さやかでは・・・、と」
「さやか ?」
「・・・みたいな。でも、よく分からない」
「さやかは、だれかの生まれ変わりかも・・・」
「だ、だれだ !!」
「お父さんの子ども。・・・たしかにお姉さんと言ってた」
「花飾りは・・・?」
「そうねえ。あの森の姫神様にお仕えするしるし・・・」
私は、そう聞いて、全身が感電したような気持ちになりました。そのころの私は、もう、全身に樹皮が出来ていて、ところどころ小さな木の芽が出ていましたが、それが、一瞬ブルッと震えたような気がしました。
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