夜中のことでした。
「貴方に挨拶に来ました。電信柱になっておられるとか、聞きましたので」
綾野でした。羽根が生えていました。美しい天使になっていました。
「よかった。・・・願いが叶って」
「貴方のお陰です」
「私は、科が重なってこういう姿に・・・」
「私は、貴方以上に科がありました。・・・家を出たこと、嫌な男が出入りしたこと、貴方を道連れにしたこと。ええ、でも、こうして居られるのは貴方のお陰です」
「えっ、どいうこと ?」
「貴方が私に魂をくださったことです」
「タマシイ ?」
「そうです。貴方がお亡くなりになり、その魂が私に乗り移りました」
「どういうことだ !!」
「・・・」
「おい、しっかり言ってくれ !!」
「貴方の魂は清い、美しい魂でした」
「おい、そんなことはない。誤解だ」
「いえ、誤解ではありません。今まで黙っていましたが、私には子どもがお腹の中にいました。ほんとです。貴方の子どもです。主人のものでもないし、あの嫌な男のものでもありません。・・・これは、私だけが知っています」
「ええっ !!」
「ごめんなさい。その子どもがだけは生き続けさせたかった。そうです。その子どもが貴方の魂をいただきました」
「何、・・・」
「今、どこかで、生き続けています。私と貴方の子どもとは知らずに」
「会いたい、会いたい !!」
「ですから、私は心安らかに天上に召されていきました。それから、苦しい修行をいたしました。その結果がこういう姿・・・」
「分からない。混乱するだけだ」
「ですから、貴方は、私がお救いするにふさわしいお方です。男神となって、私と一緒に気の毒な魂を救済したいのです」
「・・・神になる ? ・・・ 綾野、いや、女神様、それだけは出来ません。私にはこの姿が好ましい。ここで、思いっきり仕事をしていたい」
「そうですか。分かりました。それでは、・・・いずれまた。貴方様がお助けになりましたお二人の女性もいずれ私のように神となられることと信じます。ほんとです。きっとその日が来ると信じます。そのときは、相助け合って、三柱の神となって、貴方を未来永劫お守りいたします。・・・では、その日まで・・・」
「綾野 !! もう行くのか」
「ええ、貴方のお姿を拝見して、安心いたしました。危ないときには私を呼んでください。では、これにて・・・」
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