とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

発光の仕組み

2012-08-18 23:18:04 | 日記
発光の仕組み




 発光するバラ


 古賀画伯が佐山医師のところへ来られたとき、なぜか私が同席するように古賀画伯に言われました。私は何にもわからないまま佐山医院に行きました。なんだかいい雰囲気ではなさそうで、私は帰りたくなりました。


 佐山先生、こう言ってはいけませんが、少し芸術の道を外れていませんか、と古賀画伯。

 もっと具体的に仰ってください、と佐山医師。

 イベント性が強いのでは、と思っています。

 どこがですか。

 まあ、壁画はいいにしても、観音像がニケに変わるなんて・・・。

 ああ、あの点ですか。

 そうです。地元の人が見たらどうしても違和感を持つと思いますが。

 違和感ですか。

 そうです。

 新しい芸術は違和感から立ち上がっていくと思いますが・・・。

 その点は分かっていますが、仏教とギリシャ神話と引っ付けるのはどうかと・・・。

 仏像と神像には共通性があると思いますが・・・。

 そこまで仰るのなら私はもう何も言えません。

 いや、遠慮なさらなくてもいいですよ。

 仏像に翼は要りません。

 ああそうでした。でも、地元の願いと言いますか、大きく言いますと日本の願いは現実から脱出することにあると信じています。だから、その気持ちを象徴的に表したかったのです。

 今の閉塞感からの脱出ですか。

 そうです。その願いは西洋の翼でしか表せないと思っていますが・・・。いや、わたしは西洋にウエイトを置いているつもりはありません。

 貴方のお考えは分かりかねます。しかし、私はもうこれ以上言いません。

 そうですか。残念です。しかし、実物をご覧いただければ、すべて解決すると思います。

 ええ、分かりました。拝見したいと思います。

 ありがとうございます。

 ところで、その変身の仕組みというのは・・・。

 蓄光パウダーです。

 へえー、初めて聞きました。

 そうですか。陶芸家の間では随分知られていますが。

 具体的に説明していただけませんか。

 ブルー、グリーン、オレンジ、スーパーブルーなどの色があります。 日光や蛍光灯などで光りを蓄え、夜間や暗闇で長時間発光する無機体の顔料です。ブラックライトでも発光し、蓄光します。微粉末ですので樹脂や塗料と混合して使用できます。熱に強く900℃まで耐えます。だから、ガラス工芸、七宝焼、陶芸釉薬などに応用出来ます。

 へえー。

 観音像の光背にその発光材を使用します。翼の模様に焼きこんでおくわけです。

 光背に・・・。

 そうです。

 古賀画伯の顔色が心持明るくなるのを私は感じ取りました。

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