とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

子どもたちと共に

2012-06-20 00:05:04 | 日記
子どもたちと共に




赤松麟(明治11年-昭和28年 岡山県生まれ)作『読書』(明治31年作 東京藝術大学大学美術館所蔵)

 子どもたちと一緒にいると楽しい。いや、何より生きる力を貰う。だから、私はささやかな教室が続けられるのである。未来は子どもたちの中にある。だから、望みを子どもたちに繋ぐ。この作品からもそういう思いを感じ取っている。


 お父さんの工作教室が始まりました。えっ、そうです。目が見えませんが、とにかく始まりました。冴子さんが付き添い兼工作のアシスタントです。その日集まった子どもたちは15名。私は小学校にチラシを持って行って頼みました。長柄さんは近所の子どもたちに働きかけました。参加費無料なので最初にしてはたくさん集まってくれて私たちは安堵しました。お父さんは歩けるのですが、出かけるときは冴子さんが押す車いすに頼っていました。その日も車いすに乗って来てくれました。私と妻はコーディネーターという感じの役割でした。


 今日はたくさん集まってくれてありがとう。これから毎月第1、第3日曜日にこの教室を開きますので楽しみにしていてくださいね。では、早速始めます。先生は目が不自由ですが、見ててください。素晴らしい腕前を発揮されます。それでは先生よろしくお願いします。

 こんにちは。私は目は見えませんが、みんなの顔はよく分かります。少し緊張しているみたいですね。では、起立して体操をしましょう。みんな立ってください。

 先ず手を前から上に挙げて深呼吸をしましょう。・・・そうそう、みんな元気だねえ。次は膝の屈伸をします。・・・そうそう、みんな上手だねえ。じゃ、椅子に座ってください。

 では、今日は竹でトンボを作ります。そうお父さんが言うと、子どもたちは急に笑顔を見せました。

 最初は胴体です。机の上の竹筒を先ず4つに割ります。それから1センチの幅のパーツを1つ作ります。それを削ってでこぼこを作り、胴体を仕上げます。それから2センチのパーツを4つ作り、それを平たく削って羽根にします。羽根は胴体に溝を掘っておいて差し込み、ボンドで固定します。各パーツはサンド・ペーハーでよく磨いてくださいね。組み立ててからは磨けませんよ。
・・・そう言ってお父さんは手探りで竹材を立てて、小刀で勢いよく割き、胴体にとりかかりました。子どもたちはその手際のよさに驚いた様子でじっと見守っていました。


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