せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

伝統的建物の被災調査と修復アドバイスを行ってきて 〜生き残る建築とは?〜

2017年01月27日 | 熊本便り


熊本地震後、行政や個人から依頼を受けた
「建物修復支援ネットワーク」の方に同行して、
あるいはご紹介いただきながら、
伝統的建築の被災状況の確認や、解体前の調査に携わってきました。

建築士としての職能ながらも、
すべてボランティアでの参加でした。

お住まいは数十棟、それに加えて蔵や長屋門、店など多数です。
熊本の民間の文化財とも呼べる素晴らしい建物ばかり。

↑柱脚が大きくずれた長屋門

↑柱は束石の上でずれて止まり、建物倒壊を免れる伝統構法

調査に入らせていただきながら、

熊本の底力を
先代達の知恵と技術と資産を
肌で感じ、鳥肌が立つほどでした。


↑瓦ではなく、左官での海鼠壁デザイン、
職人さんや住み手の遊び心が伺えます。



↑立派な軸組だが、継手の部分で破断

持ち主からの惜しむ気持ちや、思い出も聴きながら、、、
もっとお話を伺いたいと思いつつも
解体を前にした建物では、
寒い中の実測やスケッチに専念せねばなりません。

私としては、限られた時間の中での、
精一杯のボランティア活動でした。

いよいよ、公費解体申請が年度末までと
残る建物、残らない建物のラインが明確になりつつあります。

専門家集団は、残すべき価値ありと思いながらも
民間の場合、住み手の意思が第一優先。
強制するわけには行きません。

「うちよりもっと良い建築があるから」と近所を紹介してくださる方や
「お隣も見て欲しい」と依頼を受け、急遽お邪魔したり。

たくさんの建築と地域の方々との出会いがありました。

仲間と共に訪問しながら、いつも最後は虚しさが残ります。
何とかしてげたい。しかし、想いだけではどうにもならない。

以前、近代建築の保存活動をしている東京建築士会の方や
神奈川県での活動発表などの中で、

残る建築と残らない建築は何が違うのか?
という議論をしたことあります。

1番は、『地域に愛されている建築かどうか』でした。
そして、残った場合の『活用方法があるかどうか』でした。

ただ感傷的に残すのではなく、生かされてこその建築。

どれだけ、歴史的価値があっても、それを活かす人がなくては
建物は残らない
のです。

そして、個人の力だけではなく、専門家、地域住民、行政
これらが一体となって動かなければ、建築は残らない!

今回の被災状況を見ながら、つくづくと感じます。

先日訪問した先では、
地域ボランティアブループが立ち上がり
国や県から派遣された方が公費で
民間の蔵に入られて文化財資料を出される
現場に立ち会いました。

↑撮影は建物修復支援ネットワーク

私としては、ふるさと熊本の資産とも言える伝統的建物が
一つでも多く、公費解体を逃れ、
修復と保全で生かされていくことを願ってやみません。

そして、貴重な資料が、失われないよう
活動されておられる方に敬意を払います。

明日より、旧暦で新年。

本日を持って、
私の平成26年熊本地震のボランティア活動もひと切りとし、
伝統的建物の、実際の修復相談の設計実践に移って参ります。

依頼主さまより、許可を得た分に関しては
随時、ブログでも報告致します。

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