南沙(英語名・スプラトリー)諸島など南シナ海の領有権をめぐり、中国への脅威認識を強めるフィリピンと米国は、同盟関係の再構築に動いている。アジア・太平洋地域における米軍のプレゼンス強化に伴う“再編”は、フィリピンにいかなる形で投影されるのかを探った。
マニラから北西へ約130キロのルソン島中西部サンバレス州オロンガポ市。かつてアジア最大の米海軍基地だったスービック湾一帯は、自由貿易港と経済特別区に生まれ変わっていた。スービック海軍基地が1992年11月に返還されてから9年余り。日本、台湾など外国からの投資と企業を誘致し、工業団地が建設された。リゾート開発も進んでいた。東西冷戦時代、スービック海軍基地はクラーク空軍基地とともに、米軍の重要な中継、補給基地だった。その意義は、ソ連が陣取ったベトナムのカムラン湾もにらみつつ、アジア・太平洋地域における米軍のプレゼンスを維持し、後方支援機能を確保することにあった。ソ連の脅威が消滅し、米軍撤退が主権回復の象徴だととらえるフィリピンの世論も、撤退を促した。そうした世論は今も変わらない。スービック湾の港で数人の住人に聞いた。異口同音に「米軍駐留と基地の再開には反対だ。投資や工場が増え発展しており、『基地の街』としての生き方に戻るべきではない」(40歳の男性)と答えた。だが、スービック湾には米軍艦船が寄港している。スービック湾首都圏庁のペルフェクト・パスカル部長は「米軍艦船は訓練などの際に港に入り、整備や補給をしている」と話す。
撤退に伴い基地協定は失効し、同盟関係とフィリピンの軍事力は弱体化した。
「同盟関係は約50年の歴史があるが、現状はアジアにおいて最も脆弱だ。中国の脅威という現実に対処できるように、本物の同盟にしなければならない」そう語るのは、フィリピン政治暴力テロ研究所のロンメル・バンロイ所長だ。「フィリピンは米国に軽視されている」とも言う。その表れとして、米国が2014年7月までに、インドネシアにF16戦闘機24機を供与することを挙げ「インドネシアは戦略パートナーにすぎず、同盟国のフィリピンになぜ、供与しないのか」と憤る。裏を返せば「フィリピンの軍事力は東南アジアにおいて最も弱く、一笑に付されるほどだ」という深刻な現状がある。軍の装備は年代物ばかりで、デラサール大学のレナト・カストロ教授の言葉を借りれば「サメを追い払う程度のもの」でしかない。ミサイルも潜水艦もない。なぜか。カストロ教授は「軍も装備も、もっぱら国内の治安対策のためにあり、国防予算のほとんどが陸軍に振り向けられてきた。しかも85%が人件費だ」と指摘する。そして「中国の脅威が増し、領海を防衛する戦闘能力をもたなければならない、という危機意識を真剣にもち始めたのは、今年に入ってからだ」と強調する。バンロイ氏は「装備の更新・近代化を促しているという意味で、中国の脅威を歓迎する」と皮肉った。
@国内に毛沢東主義を掲げる新人民軍(NPA)や、ミンダナオの独立を掲げるモロ民族解放戦線(MNLF)、そのMNLFから分離独立したモロ・イスラム解放戦線(MILF)そして、アルカイダと連帯するアブサヤフなど、未だに内戦状態が続くフィリピン。対米従属から脱却し自主独立を勝ち取ったかに見えたフィリピンだが、やはりその独立を阻む勢力が、核武装しポンコツであれ空母やステルス戦闘機で近代化されたシナである事は疑いのない事実である。