せきねりゅうしの誤字脱字展 (物語ブログ、ゆるいキャラクターを目指しています。お師匠さん、募集中です!)

せきねりゅうしの作品展および生活記録です。
面白いはずなので読んでください。効能には個人差があります。

第1話 婚活中学生「覚醒」

2017-05-25 13:18:57 | 婚活中学生
婚活中学生 1「覚醒」

速水莢(はやみさや)は自室で予備校から郵送された模擬試験の結果を眺めていた。

西日の差しこむ二段ベッドの下段で、セーラー服のまま、寝っころがるのは2学期を迎えた莢の日課となっている。

莢の第一志望校、都立京葉高校への合格可能性は80%以上、A判定だ。

え?こんなに早く?というのが莢の実感だった。

模擬試験は夏休み、8月上旬に行われた。1か月前。莢が受験勉強を始めたのは中学3年生になった、この4月だから、実質4か月くらいしか経っていない。

何事にも計画的な莢は受験勉強の予定を4月から12月までと決めて、毎日、それに没頭していた。部活動も習い事もやっていない莢にとって、時間は無限にある。

「急ぎ過ぎたかなあ」

莢はひとり、呟いた。

「2学期、もうやること、なくなった」

莢の立てた計画では2学期いっぱい、受験勉強に専念し、3学期になったら高校入学の準備、高校生になったら2年間、アルバイトをして、3年生になったらまた受験勉強して大学入学。大学では2年間、アルバイトをして、残りの2年間は就活。就職したら、5年間みっちりと働き、寿退社して主婦になり、一男一女の母となる。10年先まで予定が決まっているのだ。

いっそ、バイトするか。

とも思ったが、アルバイトの募集があるのは高校生以上だ、まだ早い。

じゃあ、大学の受験勉強を先にしておくか。

高校の授業も受けていないのに、いきなり受験勉強のやりようもない。

就活しようか?

いやいや、無理。

じゃあ、主婦になる?

そういえば。

莢は今年の4月2日、15歳の誕生日を思い出した。レストランでお祝いしてもらった時のことだ。

酒好きの父は、2杯の生ビールでご機嫌になっていた。「莢、来年の誕生日で16か、結婚できる年だな」

「え?そうなの?」莢は思わず、聞き返した。

「ああ、法律的にはそうだ」父は寂しげな目で莢を見た。「莢、お嫁に行っちゃうのか」

「行かないよ、やめてよ、お父さん」

そんな他愛のない会話が今になって俄然、現実味を帯びてきた。

どうせ、最後は主婦になるのが夢なんだから、16で結婚したって変わらないのでは?

莢は理屈っぽいところがある。そこは父親似だ。母はもっと、おっとりしている。

最後は主婦になるのに、なんで高校に行って、大学に行って、就職してから結婚するわけ?思い出作り?

莢は横になったまま、2段ベッドの境目の板を見つめた。

子持ちになると忙しくなるから、それまで10年かけて思い出作りするのが女の人生ってか?

莢の妄想がどんどん大きくなってきたところで、邪魔が入った。

「お姉ちゃん、お着替えしないで寝たらダメでしょ」

キンキン声で叫んだのはもうすぐ7歳になる、妹の楓(かえで)だった。
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