パロディ短歌『石泥集』

百人一首や近現代の名歌を本歌どりしながら、パロディ短歌を披露する。

2016年事件簿19 トランプ大統領出現

2016-11-10 15:52:37 | パロディ短歌(2016年)
(今回の大統領選挙の州別結果。赤がトランプ、青がヒラリー) 
          トランプ大統領出現の意味

 アメリカの次期大統領にドナルド・トランプが決まった。予想を外したマスメディアは、「世論調査にあらわれない、隠れトランプがいた」ことを理由に挙げたが、呆れたものである。直接の原因はそれにせよ、「世界の大きな潮流を見誤った」と反省しているメディアはない。マスメディアの劣化も著しいのだ。もっとも、筆者もマスコミの報じる世論調査の数字に惑わされたくちである。これからは気をつけよう。
 いくらテレビを見ても、新聞を読んでも、誰も言っていないが、トランプ勝利の理由はただ一つ。現在の資本主義をもってしても、「難民」という名の労働力を抱えきれなくなったからである。

 思えば1989年の共産主義国(ソ連および東ヨーロッパ)の崩壊で、何が生じたかといえば、行き場を失った安い労働力であった。共産圏の国に労働力を吸収する産業なんぞない。だからこそ、国は破産したのだ。
 労働者の流れたのは西ヨーロッパとアメリカだった。流入した労働者は俗に3K(きつい・汚い・危険)と呼ばれる職場でも、安い賃金で喜んで働いた。破産した故国に比べたら、夢のような賃金だったからだ。受け入れた欧米の国々では、若者が過酷な労働を嫌っていたから、この段階では、お互いにメリットがあった。安い労働力を得て、経済は活況を呈した。
 百年に一度の大不況…といわれた2008年のリーマンショックは、そもそもが「ヒスパニックにも持ち家を」という動機で組んだサブプライムローンの破綻である。逆に考えると、2008年まではヒスパニックの移民でも家を持てるかもしれない、という夢があったということになる。

 2008年以降、先進国が減速したら、中国や資源国が世界経済をひっぱった。百年に一度の大不況にしては、(日本を除き)回復の度合いは早かったといってよい。ただ、共産圏の難民に加えて、「アラブの春」以降、イスラム諸国の内戦に歯止めがかからなくなり、イスラム難民まで発生した。
 EU諸国やアメリカは黙って受け入れてきたが、もう世界のどこを見ても、労働力を受け入れる余地がなくなってきたのだ。それどころか、難民のために自国の労働者が職を追われている。限界がついに沸騰点に達した…それがイギリスのEU離脱であり、今回のトランプ圧勝の理由である。
 資本主義が新しい産業を創生するまで、労働力が余ってしまうという情勢に変わりはないだろう。とすれば、世界はこれまでの枠組みではやっていけなくなる。トランプが変革を掲げ、既成のエスタブリッシュメントを攻撃してきたのは、世界をリセットせよ―というシグナルである。

 トランプの政策が分からない、といっている馬鹿がいる。トランプ次期大統領が誕生してもう3日にもなるのに、先行き不安をあおっている輩がいる。簡単なことなのに。彼は繰り返し「アメリカ第一」の政策をとる、と明言している。外交も経済もすべてである。
 つまり中東は中東で解決してくれ、アジアはアジアで解決してくれ―というメッセージだ。もっとも、IS(イスラム国)はテロ組織だから、ロシアと共同してつぶす。そのあとは、シリアとイラクで、政府軍・反政府軍・クルド族など、それぞれの支配地域を基に国境を引き直すだろう。もちろん裏では画策するだろうが、それが政治というものである。イギリスのメイ首相はよく理解している。一緒に新しい経済・外交を作る喜びを感じる、とコメントしている。

 アジアも同じである。自分たちでケリをつけてくれ。安倍首相が17日にトランプと会うようだが、「日本はしっかりアジアをリードしてくれ」と発破をかけられるのではないか。日本にとっては有難い話だ。評論家の中でトランプを評価する人は少ないが、その少数の人たちは、やっと日本が自立できるチャンスが巡ってきたという点では一致している。
 
 サンフランシスコ平和条約で、(形の上では)日本が独立したことになっている。しかし、この独立では、日本は再軍備を制限され、アメリカ軍に基地を提供して駐留していただき、侵略を受けても防衛にのみ専念し、あとはアメリカ軍が来てくれると期待して待つ(実際に来るかどうかは不明)ことが許されるだけだった。

 トランプはこの体制がアメリカにとって割に合わない、と言っている。日米安全保障条約は再検討の対象になったのである。日本にとっては有難い話である。半独立の状態からやっと日本が抜け出す糸口が見つかったのだ。本当に独立するなら、国際的な義務と権利を行使しなければならないし、その前に、自分の国を自分の力で守り抜くという覚悟と体制が必要だ。ありていにいえば、憲法を改正し、国防軍を充実させること。その上で、アメリカとは対等の安全保障条約を結べばよい。NATOのようにやる。わが国とアメリカが相互に利益を得られる条約を結べばよろしい。

 ロシアと仲良くなることにも、トランプは鷹揚だろう。北朝鮮とも話をすると言っているのだから、何かと注文のうるさい韓国に代わって、北朝鮮と交渉することも夢ではない。もっとも、トランプは日本と中国を天秤にかけるようなことも平気でやってくるはずである。中国も本気でトランプと交渉するだろう。そこのところは、しっかりと踏まえてもらいたい。アメリカ第一というのは、過去のような力の政策をとりたい…という願望でもある。腰抜け野郎はアメリカ人が最も軽蔑する人間である。だから習近平も力にはやりすぎると、トランプの反撃をくらう。この点を見落とさないようにしないとね。

 進化の止まったサヨク勢力や霞が関は、現状を守ろうとして(ヒラリーのように)、変革に罵声を浴びせるだろう。しかし、悪罵からは何も生まれない。それどころか、新しい世界情勢に後れをとる公算大である。主張の一貫している共産党を除いて、他のサヨクは消滅するのが本来の姿である。同時にヘイトスピーチを平気でする阿呆ども、ネトウヨといわれる付和雷同の輩からは一線を引いて、健全な保守勢力を汚染から守ることも必要である。それでこそ、世界は新しくなるのだ。

 ひとつ気になることがある。ヒラリー勝利を見越して、早々に払い戻しを始めたアイルランドのブックメーカーは今どうしているのだろう? 潰れていないかどうか、心配である。ヒラリーの敗因は、やはり嫌われ度が尋常でないことと、逃げ切れるという油断があったせいだろう。私も個人的には、ビルとヒラリーの厚かましい仮面夫婦には辟易(へきえき)するような感情がある。

予想が外れた言い訳に(マスメディア)
●めぐりあひて見しやそれとも分かぬまに雲がくれにし隠れトランプ
(本歌 めぐりあひて見しやそれとも分かぬまに雲がくれにし夜半の月影  紫式部)
(蛇足)トランプには本当の支持者がいたんだけれど、世論調査には嘘をついていたんだ―これがマスメディアの苦しい言い訳。新聞社の8割は民主党支持だというから、単に欲目で見ていたんじゃないの。

黙ってトランプに投票し(隠れ信者)
●忍ぶれど票にいでにけりわが信者ものや思ふと人の問ふまで
(本歌 忍ぶれど色にいでにけりわが恋はものや思ふと人の問ふまで  平兼盛)
(蛇足)トランプさんたら、あんな恥ずかしいテープを流されたりするんだもん。正面切って「支持」なんて言えないわ。でも、ヒラリーは嫌い!

トランプのアジ演説に聴きほれ
●トランプの暴言なつかし演説の人ごみの中にそを聴きにゆく
(本歌 ふるさとの訛なつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく  石川啄木)
(蛇足)オバマの8年間、俺たちは我慢してきたんだ。もう、我慢ならねえ! 暴言? あれは本当のことだよ。

トランプ旋風に敗れ(ヒラリー)
●全米に票をふみわけ鳴くトランプの声きくときぞ秋はかなしき
(本歌 奥山に紅葉ふみわけ鳴く鹿の声きくときぞ秋はかなしき  猿丸大夫)
(蛇足)民主党の地盤を次々に奪われるショックはかなりのものだと思う。

前回はオバマに民主党内で敗れ、また大統領になり損ねて(ヒラリー)
●わすらるる身をば思はず誓ひてし政治のいのちの惜しくもあるかな
(本歌 わすらるる身をば思はず誓ひてし人のいのちの惜しくもあるかな  右近)
(蛇足)夫のビル・クリントンの時代から、ヒラリーは「影の大統領」といわれていた。オバマ大統領の時代にも国務長官を務めたりして、ずっと政治の第一線で活躍してきた。これで引退だが、健康のためにはいいんじゃないだろうか。

大統領のトランプ氏には自重を
●憂かりける人をののしるトランプよはげしかれとは祈らぬものを
(本歌 憂かりける人をはつ瀬の山おろしよはげしかれとは祈らぬものを  源俊頼朝臣)
(蛇足)大統領になったら、あれこれ言わないでね。
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